電通過労死事件から考える「人間が生きる意味」
電通女性社員の過労自殺は、世間に大きな衝撃を与えた。幸せな働き方、生き方とは何か、考えさせられる出来事だったと思う。パスカルの有名な言葉「すべての人間は幸福を求めている〜」から、人間が生きる意味と幸せの関係について考えてみたい。
広告大手代理店「電通」に勤めていた高橋まつりさんの過労自殺。同じ広告業界でもある僕は、周囲からいろいろな意見を聞く機会があった。
職場環境が悪いのか、人間関係が悪いのか、私生活が悪いのか、様々な憶測が飛び交い、真意はわからないが、とても辛かったんだろうし、同じ業界の人間として残念に思う。
彼女の残したメールには、「死んだほうが幸福なのではないか」という一節もあったという。
彼女は、「女手ひとつで彼女を育てた母親のために、一流企業に入って母親に楽をさせたい」という夢をもって電通に入社したということだ。
責任感も高く、明確な志もあった若者を亡くしたことは、惜しいとしかいえない。
■幸福を求めることは、人が生きる理由のひとつ
この記事を読んで、ぼくはフランスの哲学者、パスカルの言葉を思い出した。
「すべての人間は幸福を求めている。これには例外がない。その手段がいかに異なっていようとも、みなこの目的に向かっている。意志は、この目的に向かってでなければ、一歩も前へ進まない。これはあらゆる人間の、みずから首をくくろうとする人に致るまでの、あらゆる行為の動機である」
幸福を求めることが、人間の摂理であり、生きる理由にも当たるのだと。
義務教育の中で、僕たちは「生きる意味」を習うわけではない。
先生全員が教えてくれないかといえば、そうではないと思うが、少なくとも僕は自分が出会った先生たちから、教科書に書いてある以外の「生きる意味」を教えてもらったことはない。
そもそも先生も生徒から「生きる意味って何ですか?」と問われれば回答に困るだろうけど。
国連の幸福度調査によると、2016年の日本の幸福度ランキングは、世界で53位ということだ。
パラグアイの大統領ホセ・ムヒカ氏が演説で、「幸せに生きるのに、最低限の経済力で十分」と話したことは話題になった。
欲を出せばキリがない。
発展が人生の幸福の妨げになってはいけないと話した演説は、世界中で共感を産んだ。
資本主義の限界を思わせるスピーチであり、考えさせられる。
生き方も、働く意味も、見直さなければいけないように感じた。
■一人ひとりの夢や目標を、愛をもって受け止められる企業を目指したい
過去の常識は、今の非常識ともいえる。
実際に、世の中も猛烈なスピードで進化を続けている。
立派な経営者は皆、大きな夢を描きなさいと言う。
昭和の偉大な経営者の哲学を受け継ぎ、仕事が人生をよくするのだと、日々成長することを促す。
「ありがとう」を世界一集めるという大志を抱く企業もブラック企業と呼ばれる中で、企業のあるべき姿とはどんなものだろう。
僕たちは変わり続ける世の中で、人生感や仕事感もより高い次元で、幸福を求めている。
幸せに生きる手段が仕事であり、家族であり、仲間であり、夢の大小で幸福度は変わらない。
隣で困っている人がいれば、助けたい。
家族や友達には、笑顔でいてほしい。
育ててくれたお母さんを楽にしてあげたい。
小さなことかもしれないが、個々がそれぞれの幸せを感じることが重要なのだと思う。
大企業になろうとも、一人ひとりのそんな志や夢をしっかり受け止められる、愛のある企業でありたい。