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婚活に焦る女は魅力が半減。だから休憩したっていい【『ぬるま湯女子会、38度』レビュー】

4人のアラサー、アラフォー女子の婚活模様を描いた小説『ぬるま湯女子会、38度』。婚活をしたことのある人、恋愛経験のある人なら「こういう男いるいるッ!」と頷いてしまうはず。笑いあり、涙あり、ムカッ(?)ありの婚活小説から私たちが学ぶことは。

婚活に焦る女は魅力が半減。だから休憩したっていい【『ぬるま湯女子会、38度』レビュー】

婚活は疲れる。なぜ、よく知らない異性と連絡を取り合い、デートに行かねばならないのだろう。心から恋している相手ならば、ドキドキしつつやり取りができるが、どうでもいい人と接する時間があるほど、私だって暇ではないのだ。

でも、みんな恋人がいるし、学生時代の友人のほとんどは結婚した。自分はここまで苦痛を強いられなければ、恋人ができないとは、人格が破綻している欠陥人間なのかもしれない。それに、私は何事も強制されることが大嫌いだ。そんなこんなで、私は過去に婚活を放り出した。リーマンショックによる大打撃を受けた大学3年生の頃、就活を投げ出したときと同じように。

■男女関係は食事から始まる

『ぬるま湯女子会、38度』(著:南綾子、双葉社)は、とある婚活パーティーで出会って意気投合した4人のアラサー・アラフォー女子の関係性や婚活模様を描いた、おもしろおかしくも、ちょっと切ない物語だ。

目次は「1、ちくわの磯辺揚げ同好会」「2、つぶ貝が好きなんだ、じゃねーよ。」「3、思い出のガムは生ゴミ味(非売品)」「4、怒りのカニチャーハン嫉妬仕立て」「5、花よりすき焼き」「6、ちくわの磯辺揚げ同好会深夜Ver.」「7、ハッピーハッピー・フォアグラ」といった、食べ物を組み合わせたユニークな世界観が繰り広げられており、これだけ読むと一体どんな章なのか見当がつかないのも魅力。

ここから察するかもしれないが、食事のシーンが非常に多い。まだお互いのことをよく知らない男女が会ってゆっくり話をするとなると、映画デートや水族館デートよりは食事が手っ取り早いし、女子会でもたいていは食事をしながら男の悪口を言い合う。「人の悪口を言ってはいけません」だなんて、保育園児でもわかることだが、男の悪口を言っていると、なぜかお酒も食事も進み、ストレス発散になるのだ。

■愚痴まみれな女子会をしているから彼氏ができない、は正論……

ただ、こうやって女子会で自分のことを棚に上げて愚痴ばかり言うモテない人とつるむから、いつまでたっても彼氏ができないのではないかと他人に言われるとぐぅの音も出ない。食事には人の気持ちを穏やかに、ときには大胆に、潤滑油の役目を果たしてくれるのだ。

女性は男性と比べ、何かを決める際に口コミサイトで調べたり、友人に相談したりと、やたら情報を大量に収集したがる傾向がある。たとえ、自分の中で答えが出ていたとしても、だ。そして、他の女子が今どんな状況にいるのかといった情報も女子会で仕入れ、他人と比べて安心したり、焦ったりするのだ。自分の立ち位置を把握していないと落ち着かない性分なのかもしれない。

■濃厚すぎるキャラ、でもどこかで会ったことあるかも?

この作品には、恋愛経験がなくジャッキーチェーンオタクで処女のサモさん、全身ブランドで固めて男への要求も高いバリキャリ女子の成田屋、押しに弱くいつも変な男と付き合う派遣OLのメーコ、ハイスペ男子を求めてはすぐに肉体関係を持ってしまう元劇団女優のカワイという、4人の女子が登場する。

4人のキャラはそれぞれ違うが、きっと、どんな女子もこの4人のキャラを少しずつ持ち合わせているのではなかろうか。自分に自信満々な女性は少ない。だから、サモさんが顔を出したり、カワイが顔を出したり、時と場合によっていろんなキャラが悩みと共に顔を出すのだ。

ちなみに、登場する男子キャラも相当濃い面々ばかり。噴き出してしまうこと間違いない。それゆえ、電車の中で読むのは危険である。だって、メーコと付き合うことになった男性は、背が低くて姿勢が良く、剃り込みがあることを理由に、通称「フリーザ様」である。

名前からしてすぐに容貌を想像できるこのネーミングセンスの破壊力たるや、並じゃない。他にも登場する男性キャラは、過去一度や二度は出会ったことがあり得る微妙な男や、どうしようもない軽い男ばかり。「あ〜、こういう男いるわ!」と、首が痛くなるほど頷いてしまいそうだ。

■結婚するか、しないかにも悩むのはあたりまえ

この4人の女子たちは結婚をしたり、恋人と別れたり、かたや新たな夢のために海外へ旅立つことを決意する者もいる。結婚しなきゃいけない、結婚しないと幸せになれない。この思い込みを捨てれば、女子は楽になるはずなのである。しかし、その境地に至れる女子は少ないし、プライドが邪魔をして自己分析する気にもならないだろう。

そしてこのご時世、「結婚なんてコスパが悪い」と、結婚に消極的になっている男性は多い。そんななか結婚できたとしても、家事と仕事の両立はどうする? 旦那は手伝ってくれるの? 子どもは生む? 生んだら仕事を辞める? 子どもの手がかからなくなったら職場復帰する?

えっ? メイクやファッションが手抜きになってきたからもっと女らしくしろって? 「女にいろんなものを求めすぎ問題」勃発である。結婚できるかできないかだけでなく、するかしないかにおいても、悩まない方がおかしい。

■婚活を投げ出しても大丈夫

かつて、婚活を投げ出してしまった私。でも、投げ出したっていいじゃないか。女性は生き方の選択肢が多いぶん、幸せの形も人それぞれだから。それに、焦っている女は魅力が半減しがちだ。

サモさん、成田屋、メーコ、カワイ、それぞれの生き方を見ていると、「女ってうっとうしい面もあるけど、なんだかんだでおもしろいじゃん」と思え、自分なりの婚活スタイルを模索できそうだ。途中で投げ出したって、また早いうちに取りに行くか、それがどうしても嫌ならば、別の生き方を拾っていけばいいのだから。

Text=姫野ケイ

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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