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東京で生きるのが疲れた日に読みたい「はあちゅう」本

都会で楽しく、ときにハードに戦いながら生きる女性たちへ。『疲れた日は頑張って生きた日 うつ姫のつぶやき日記』は、戦闘でクタクタになった日、くすっと笑わせてくれて、背中をふわんと押してくれる、枕元に置いておきたい本になりそうです。

東京で生きるのが疲れた日に読みたい「はあちゅう」本

「鬱」と漢字で書くのと「うつ」と平仮名で書くのとでは印象ががらりと変わる。さらに「鬱病の人」と記すのと「うつ姫」と記すのとでは大きな差がある。文字をひらいて「姫」と付け加えるだけで、なんだかかわいらしく聞こえるから、言葉とはなんとも不思議な存在だと思う。

「うつ姫」という造語を生み出したのは作家・ブロガーのはあちゅうさん。やはりセンスがさすがだ。ネット上でどんなに妬みやそねみ、悪口をぶつけられようと、すべて自分の理想とする人生を送るための“燃料”に変えてきたはあちゅうさんは、強靭な精神を持った努力の人。非凡な才能を持っている。

それでも「私の中にも鬱はある。時には逃げたくなる」「全部投げ出して、めちゃくちゃにして消えたら、楽になるかもとか思う」とまえがきで弱さを見せつつ、こう続ける。「毎日の中にちらっと『うつ』が湧いてくることがあって私はそういう時の自分を『うつ姫』と名付けてみたりしている」。

そんな「うつ姫」がTwitter(@ha_chu)と「月刊はあちゅう」に綴った言葉を抜粋し、描き下ろしを加えて生まれたのが『疲れた日は頑張って生きた日 うつ姫のつぶやき日記』だ。帯には「消耗しがちな都会暮らしを応援する365の極私的考察、もしくは女子的ライフハック」とある。

29歳1ヶ月目は、365とナンバリングされたつぶやき「26歳くらいで結婚したいな〜、とふわふわ考えてたんだけど、よく考えたら今29歳だった。すごく疲れてるのかもしれない」で幕を開ける。どうやら結婚時期に限っては、昔の計画通りにいかなかった、と気づいて疲れを自覚したようである。まぁ、大概そんなもの。はあちゅうさんでも、そうなのかと受け止めて、読み進めていこう。

「強くなる方法は強くあるしかない」は、29歳2ヶ月目半ばころのはあちゅうさんがつぶやいた言葉。彼女は強くあろうと決めて、その軸をブラさずに生きてきた人だと思う。強くあろうとする状態を続けるにつれ、強さという筋肉が鍛えられるのだ。だから、強くあろうとする佇まいが、“型”のように美しくキマっている。その姿は武道に通じた人のよう。実に名言ではないか。

さて、29歳3ヶ月目。再び結婚話に戻る。「相手がいなくても『結婚したい』っていうのは『私の人生を誰か変えてください』ってことだな〜」とつぶやくはあちゅうさん。的を射た発言。耳が痛くなった人もいるかもしれない。「彼と共に生きたいから結婚したい」ではなくて、ただ闇雲に「結婚したい」という言葉は、「とにかく」「とりあえず」といった副詞がセットでつくような気がする。それに、結婚したからといって人生はたいして変わらない。離婚経験者の筆者(池田)が頷きつつ読んだから真実だと思ってほしい。

わかるかも……と共感したのはコレ。「私の中で、エロい人のほうが清潔感のある部屋に住んでいるという結論が出たので、みんなエロくなったほうがいいと思う」。29歳4ヶ月目終盤でのつぶやきだ。くすくす笑いながら意味を咀嚼した後、そうかもなぁと納得しつつ、考えてみた。やはり“欲”が強く、それを自覚的に持っている人は、他の欲も大事にしているのだと思う。そのひとつは環境を整える欲だし、自分の体をベストコンディションに保とうとする欲。言い換えると病気や体調不良に悩まされない欲、かもしれない。究極は「元気な状態で、そのときしたいことをして、心地よく生きる欲」だと思うけれど。そういった欲に忠実に生きる人たちは、生命力であふれていて、長生きしそうな気がする。

吹き出したり、鋭すぎると感心したり、我が身を振り返り反省したり、励まされたり……女の人生のあらゆるシーンで効いてくる一冊だ。

池田 園子

DRESS編集長(2016年1月〜2020年1月)。

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