自分に嘘をつかない人は、最高の人生を創れる人。
苦しいとき「大変だから」と逃げ出すのは誰にでもできること。でも、落ち着いて考えてれば、解決策は必ず導き出される。それを繰り返すなかで、自分にとって最高のパートナーである「自分」を大切にして、最高の人生を創っていけるのだ。自分に嘘をついてはいけない。
「ここで諦めたら、一生後悔するよ」
前職で会社経営が、精神的に一番苦しかったとき、サイバーエージェントの社長 藤田さんから言われた言葉だ。そのとき、ふと正気に返ったことを今でもよく思い出す。
会社としてそれほどダメだったかというと、そうでもなかった。黒字ではあったので、「気軽に経営しよう」と考えることもできた。それでも、多くの人を巻き込んで掲げた「上場」という目標には踏ん張り足りないというところだった。そのもうひとつの大きな壁を乗り越えるには、自分の心の電池はもうカラカラだと感じた。
エネルギーがすっかり消耗してしまい、諦めたい自分、逃げたい自分がそこにはいた。「私は、ここまでがんばったんだから」「こんなに大変な思いもしてきたんだ」。心がそう叫んでいた。
誰も認めてくれない。でも、きっと優しい藤田さんなら共感してくれるだろう。癒される言葉をかけてくれるのではないか。そう考え、「相談」と称して、期待して会いにいったんだと思う。
でも、その目論見は外れた、その代わり、優しい目線をもって、彼が私に伝えたのはこの言葉だった。
「やめるのは簡単だけど、ここで諦めたら、一生後悔するよ」
その言葉を投げかけられたとき、正気に戻り、あらゆるものが見えてきた。
■自分に嘘をつかない
当時の私は、自分の辛さにしか目が向いてなかった。何度も資本政策をやり直しながら巻き込んできた株主、期待を抱いて入ってくれた社員のこと……。子どもを亡くしてしまったときも諦めなかった「自らの手で一流の会社を創るんだ」という夢。
だからこそ、そのぶん命を会社に吹き込むことができたのに。そして、自分の人生のビジョンを考えたときも「上場」というのは経験しておくべきに間違いない通過点だった。
逃げるのは簡単だった。逃げれば自分はその瞬間に安全地帯に行けただろう。でも、逃げたらどうなるのだろう。
周囲との約束を果たせないという気持ちや、ビジネスの世界で信用を失うかもしれない、そんなことがあるかもしれない。ただ、会社にキャッシュは潤沢にあったし、よりよい会社に売却するのをはじめ、他の手段で表面的には上手く解決することもできたと思う。
でも、それよりももっと大事なこと、どう転んでも解決できないことは「自分に嘘をついて逃げること」なのかもしれない。「大変だから逃げた」とすると、自分の心に一生の後悔を刻んでしまう。うわべを取り繕うことはできても、関わった人にもメリットを分け合ってそれぞれの人生を歩んでいくことができたとしても、自分の最大のパートナーである自分を、自ら裏切ることになるのだ。
自分をごまかし、 挑戦に向き合わずに生きていくことは、一度きりの人生を創り上げたいという私の想いに反する。
楽天時代に三木谷社長が頻繁に言っていた。「最大のリスクは人生を後悔すること」だから、限りある一度きりの自分の人生を、精一杯やったんだと思う生き方をしたい、と。
苦しくなったとき、落ち着いて考えれば解決策は絶対にある。困難に苛(さいな)まれたとき、私は目の前のやるべきことに10分だけ集中する。
・メールの処理を一気にする。
・支払い処理を機械的に済ませる。
・「TO DOリスト」を上からどんどん片づける。
苦しみを逃す方法なんて世の中にいくらでもある。
人生は一本の道に似ている。自分の人生のビジョンに照らし合わせたとき、絶対に通らなければいけない道がある。私はこれからも一度きりの人生を最高のものにしたいから、まっすぐ、そして、軽やかに歩んでいきたい。
経沢香保子(つねざわ かほこ)さんのプロフィール
桜蔭高校・慶應大学卒業。リクルート、楽天を経て26歳のときに自宅でトレンダーズを設立し、2012年、当時女性最年少で東証マザーズ上場。 2014年に再びカラーズを創業し、「日本にベビーシッターの文化」を広め、女性が輝く社会を実現するべく、1時間1000円~即日手配可能な 安全・安心のオンラインベビーシッターサービス
「キッズライン」を運営中。オンラインサロン「女性起業家サロン」も人気。
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コラム集「経沢香保子の本音の裏側」
Podcast「経沢香保子の起業も人生も味わい尽くす」
経沢香保子 ダイヤモンド社 2016年04月22日
※こちらは2017年3月30日に公開した記事内のリンク切れなどを修正したうえで再掲載したものです。
桜蔭高校・慶應大学卒業。リクルート、楽天を経て26歳のときに自宅でトレンダーズを設立し、2012年、当時女性最年少で東証マザーズ上場。 2014年に再びキッズラインを創業し、「日本にベビーシッターの文化」を広め、女性が輝く社...