いい男は落ち着かない 【DRESS WEB編集長コラム 今月のDRESSな男女#1】
こんにちは、今年からDRESS Webの編集長を務める池田園子と申します。月に一度、私が出会った「DRESS世代のいい女、いい男」をテーマにコラムをお届けします。どうぞよろしくお願いいたします。
いい男は蕎麦を愛する――。
久々に再会する男友達に指定された店は、銀座六丁目にある蕎麦屋でした。年末だったから。1日早いけれど、年越し蕎麦を食べたかったから。本当に蕎麦が好きだから。……意図は聞いていません。
外資系経営コンサルファームに勤める彼は上海の拠点に駐在して早3年。上海と日本、アジア各国を行き来しながら、企業の経営や戦略作りに関わっています。
もう上海には飽きた、次は南米で働きたい、最近は帰国できても慌ただしく、趣味で関わっているものづくりの集まりに顔を出せていない……相変わらず忙しなく頭を回転させ、常に好奇心旺盛で、新たな刺激を探し求める、子どもみたいでロマンチストな男。
普段より人通りが少ないせいか、なんとなく寂しげに輝く銀座の街に目をやりながら、帰りのタクシーでふと思いました。そう、いい男は飽きっぽい、と。
これまで最も長く関わった男の発した言葉が脳裏に浮かびます。「僕は飽きっぽいんだ。だから今のまま（君と）ずっと過ごしていくのは無理」だと。
もちろん少しずつ成長してゆきたい。でも、ベースでは一度確立した心地よい関係性を保ちたいと安定を求める私、安定を面白味のないものと解釈する彼は、まったく別方向に進んでいて、振り返ると後戻りできない距離が生まれていたのでしょう。
それからふたりの関係にゆっくりとヒビが入っていったのは言わずもがな。現在彼は親友です。私に蕎麦の美味しさに加え、板わさという粋な一品を教えてくれたのは、そういえば彼でした。
さて、上海の男友達とは、家族制度についても話をしました。家族とは何か。結婚とは何か。既存の枠組みにとらわれる必要はあるのか。自立するふたりが一緒になるなら、国の制度にのっかる必要性はないのでは、などなど。
やや先鋭的な意見が飛び交い、個室を押さえてくれたのは大正解でした。やっぱり、いい男は飽きっぽくて、落ち着かない――もちろん、いい意味で。
