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テレワーク時代のマネジャーは「機嫌のいい人」が向いている。在宅ワークで生産性を上げる人物像とコツ

在宅ワークの普及によって進む徹底した成果主義。オフィスで社員を威嚇する恐怖のマネジメントはもはや通用しない。テレワーク時代に適したコミュニケーションのとり方とは。蜷川聡子さんのコラムです。

テレワーク時代のマネジャーは「機嫌のいい人」が向いている。在宅ワークで生産性を上げる人物像とコツ

先日、以前私の会社にいて今は転職した男性が、「来月から僕の席がなくなることに決まりました」とフェイスブックに投稿していました。コロナ不況のリストラ? と思ったら、在宅勤務でも生産性の上がる“出勤不要社員”に指名されたのだとか。

確かにもう出勤しないのなら、椅子も机も要らなくなります。それでその人の席は、誰もが使えるフリーアドレスの席か、打ち合わせスペースになる予定なのだそうです。

■「育成」や「企画会議」を除いて出社不要に

一等地にあるオフィスビルに重厚なデスク、革張りチェア――。一昔前の会社員にとってオフィスに自分の席があることは、モチベーションの源泉であり、一種のアイデンティティだったのかもしれません。

しかしその元同僚はケロリとしたもので「入社前(6年前)から社長と“全国に分散しているスタッフがテレワークでつながる時代が来るといいですね”と話してたんです」と笑っていました。

とはいえ、オフィスをすぐになくすわけではなく、育成が必要なジュニアクラスのエンジニアと指導者は出社することになっています。細かな指示や質問のやりとりができて、表情を見ながら理解度を測るような場面ではリアルの方がよいと判断したようです。

ゼロから1を生み出す企画会議も、オフィスに集まっておこなう方が効率的なんだそう。テレビ会議でもできないことはないのですが、この会社(マザーズ上場)は2月半ばからテレワークに切り替えていて、丸4ヶ月かけていろんな業務をやってみた上でどんな問題が生じるのか実験を重ねてきたといいます。

このほか、細かな進捗状況を確認しながら進めないと大事故になる大規模請負案件も、当面はオフィスでおこなうそうです。しかしいつまでも出社させるのではなく「人を見ながら」徐々にリモートで働く社員を増やしていくと言っていました。

■過去の栄光が役に立たない「徹底した成果主義」に

元同僚に、テレワークは能力主義になりますか、と聞いたところ、「正確には成果主義ですね」と訂正されてしまいました。編集者の彼はこう言います。

「ライターの採用面接だけウェブ会議で、あとはチャットでのやりとり。原稿に赤字を入れて戻すOJTを繰り返し、ついてこれない人は脱落です。そうなると残るのは“いま何ができるのか”だけなんです。ピカピカの学歴も職歴も過去の栄光も何の役にも立たないので、徹底した成果主義になっていくんです」


彼(50代)の上司は15歳年下の30代。それでも全然気にならないそうです。

「成果の鍵を握るのは、実行部隊を動かす私たち。マネジャーはそれを支え、仕事の環境を整えるのが役割というだけです。自分が下とか卑屈に思ったことはありません」


テレワーク時代のマネジャーに最も大事な要件は、と聞いたところ、いつも機嫌がいいことが何より重要といいます。

「機嫌の悪いマネジャーはこっちに気を使わせてモチベーションを下げるので、テレワーク時代には邪魔なだけです。遠隔だからこそ、相手の感情を読み取り、自分の感情をきちんとコントロールできなきゃダメですね」


オフィスで社員を怖がらせながらマネジメントしていた上司は、テレワークで威厳を保てなくなるという話も興味深かったです。確かにテレワークなら、ゴミ箱を蹴っても相手に届かないし、怒鳴り散らしてもスピーカーをミュートにしてしまえばおしまいですから。

■在宅ワークでむしろ生産性がアップ

ほかにテレワークのコツを聞いたところ、「会社員はフリーランスではないので、組織として働くためのコミュニケーションを上手にとること」とのことです。

「ウェブ会議の定例会がプロジェクトごとに週1ずつくらいあるんですが、積極的に同僚たちの仕事の進捗状況を聞いて、いい成果が出たら褒めるようにしています。そうやってお互いの仕事が意味のあるものだと認め合うことが、孤独感や無力感を高めないために必要かなと思います」


雑談をしながらお互いの緊張感を緩めることも大事。それでも非協力的でムスッとした人がいても、同僚同士で揉めるのではなく、それとなくマネジャーにクレームや要望を入れること。そのように仕事を徹底的に「成果」にフォーカスするのだそうです。

朝8時から仕事を始めて自分でランチを作り、午後5時にはいったん仕事を終わらせて、通勤する奥さんや家族の分も買い物に行き、掃除も洗濯も食器洗いも引き受ける元同僚。それでコロナ以前より生産性が上がっているというから驚きです。いまどきの共働き家庭の夫としては理想的かもしれません。

彼にとっての通勤時間は、もっと有効な時間に変わったのです。彼は、ゆくゆくは「地方に引っ越したい」と言っています。豊かな自然のなかでおいしいものを食べながら、都市部に住んでいたときと同じ収入を得る。人手不足の時代ですが、ああいう人なら年齢関係なくどこでもいつまでも働いていける気がします。

蜷川 聡子

株式会社ジェイ・キャスト 執行役員。 インターネットメディア協会 理事 1972年生まれ。商社系マーケティング会社を経て、2002年入社。2006年の「J-CASTニュース」創刊時には営業部長として、創成期のウェブメディ...

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