自信がないから恋に臆病になる。女性との縁をみずから逃した男性の本音
「どうせ俺なんて」と自分に自信を持てない男性は、好きな女性ができても積極的に気持ちをアピールすることができません。間違えたり勘違いしたり、傷つくくらいなら何もしないほうがマシ、と思う男性もいます。そんな自分に甘んじて、女性との縁をみずから逃した男性についてお話しします。
■「相手の気持ちがわからない」から、恋愛を諦めた
ある40代の男性は、女性とお付き合いしたことがなく、いわゆる「彼女いない歴=年齢」でそれまで過ごしてきました。決して恋愛感情がわからないわけではなく、好きな女性はできるのだけど、うまくコミュニケーションがとれずに交際まで至らなかったと言います。
「よくあちらから挨拶してくれるし笑顔で話してくれるから、俺に好意があるのだろうな」と思い、思い切って告白してもいつも「ごめんなさい」「そんなつもりはなくて」。自分に対する女性の態度から「好かれている」と決めつけてしまい、それを確認するような行動は取らずに早とちりばかりしていたのです。
好きになっても実らない恋を繰り返して、男性は「女性の気持ちがわからない」「相手が本当はどう思っているのか想像ができない」と悩むようになりました。好意を勘違いしないためには、自分からコミュニケーションをとって相手の反応を見る姿勢が欠かせないのですが、行動しても期待するような反応が得られずかえって傷つくことから、それもできなくなりました。
「好意を受け止めてもらえたことがない」「愛情のやりとりをしたことがない」
男性は、40代半ばになるまで誰とも付き合えない自分を省みて、恋愛を諦めます。「頑張ったって、どうせ報われない」が彼の実感であり、それなら独身でいいと早々に終活を始めるなど「愛されない自分」を受け入れたのです。
本当は誰かと幸せになりたい。彼女がほしい。でも、「相手の気持ちがわからない」。自分から関わって傷つくことの恐怖から、彼は自分に自信を持てないまま、恋愛そのものから遠ざかっていきました。
■ふたりの関係をどう進展させればいいかわからない
そんな中、彼は趣味で通っているサークルで同じ40代の独身女性と親しくなります。気さくで明るい性格で、誰とでも楽しそうに話している姿が印象的なその女性は、彼にも気軽に声をかけてくれました。サークル内では親しく過ごす人がいなかった彼にとって、その笑顔はとてもまぶしく、また新鮮なぬくもりが彼の心を刺激しました。
サークルに行けば顔を合わせるので、彼は以前より頻繁に足を向けるようになります。会えば彼女のほうから挨拶してくれて、会話ができて、少しずつ個人的なことも話題に出るようになり、彼は彼女を目で追う時間が増えました。ひとりでいる彼を見れば彼女が寄ってきてくれて、「今日は仕事の帰りですか?」と笑顔で話しかけてくれることが、いつの間にか彼にとっては心が潤う時間になっていたのです。
そんなある日、彼女の顔が普段より翳っていることに彼は気が付きます。ほかの人と話しているときも何となく無理をして笑っている感じがあり、彼は思わず「何かあったの?」と話しかけました。彼女はびっくりしたように彼を見て、それから「実は、飼っているペットが病気になって」と打ち明けてくれます。彼女が落ち込んでいる理由を知った彼は、少しでも元気になってくれるようにと彼なりに耳を傾け、励ましの言葉をかけます。
「聞いてくれて、ありがとう」と彼女が顔を上げたとき、その表情にはいつもの明るさが戻っていました。それを見た瞬間、彼は「この人が好きだ」と自覚したといいます。元気になってくれた、役に立てたことがうれしくて、彼は思わず「LINEを交換しませんか」と口にします。彼女も笑って「お願いします」と言ってくれて、ふたりの距離は一歩前進しました。
LINEを交換できたことが彼を勇気づけ、それから毎日彼女と連絡を取り合うようになります。今まではサークルの中でしか話せなかったけど、会っていないときでも会話ができる幸せに、彼の心はぽかぽかとあたたかい波で満たされていました。
ですが、問題はこれから。
彼女との距離が縮まったのはいいけれど、「これから先、ふたりの関係をどう進めればいいのか」が彼にはわかりませんでした。LINEは会っているときと変わらず彼女のほうが積極的に送ってきてくれて、会話をリードするのも新しい話題を振ってくれるのも彼女。やっとふたりで食事に行く約束ができたときも、「今度、ご飯でも行きませんか?」と彼女が訊いてくれたのがきっかけ。
「俺から誘わなければ」と彼は思っていましたが、いざ文章を打とうとすると、「断られたらどうしよう」「俺だけが望んでいたらどうしよう」と、これまでの「相手の気持ちがわからない自分」を思い出して指が止まってしまう。いい雰囲気で会話が続き、彼女もその気があるのかなと思いはするけれど、勘違いだったら怖いから自分からは何も言い出せない。
距離が縮まっても、自分からアクションを起こして関係を進展させる勇気を、彼は持てないままでした。
■「何もしない自分」を受け入れる気楽さ
「それって、彼女のほうから誘ってくれるのを待っていたってことでしょう」と筆者が言うと、彼は「そんなことはない。俺から誘う気はあるのだけど、タイミングがわからなかっただけ」と即座に答えました。
「タイミング? 会話の流れで『今なら大丈夫』ってときがあるって、あなた自分で言ったじゃない」と呆れながら返すと、今度は「そうだけど、迷惑かもしれないから……」と、さっきとは逆のことを口ごもって下を向きます。
彼の中には、「彼女のほうから誘ってくれないかな」という甘えがありました。普段の彼女の関わり方を見ていて、「俺から言わなくても彼女が誘ってくれるだろう」という想像ができていて、実際にその通りになり、彼は大きな安堵を覚えます。
「とにかく、行けるようになったからそれでいい。」彼にとって、大事なのは「自分が努力して叶えたこと」ではなく、「どんな流れであれ彼女と過ごす時間を手に入れたこと」。彼女がどんな気持ちで、どんな勇気を出して誘ってくれたのかは考えず、それよりも流れに乗って約束ができたことに気持ちが向いていたのですね。
女性と連れ立っていくお店など知らない彼は、「私が探しておくから」と言う彼女の言葉を真に受けて自分は何もせず、当日もお店への案内から彼女に任せ、食事中も彼女が話をリードするのに応えるだけでした。
「彼女のほうから誘ってくれたのだから、俺に好意があるのだろう」といつの間にか思い込んでいた彼は、そこに安心し、彼女を楽しませることを忘れていたのです。
■「相手の気持ちがわからない」本当の理由
筆者が忘れられないのは、「そのときは俺がおごってあげたよ。高かったけどね」という彼の言葉。その口ぶりは、「おごることで甲斐性がある自分」をあからさまにする気持ちが見えて(そんな自分を「すごいね」と言ってもらいたい様子が見えて)、そのとき女性にどんな態度をとったのか、想像すると頭が痛くなりそうでした。
そして、これも筆者の想像通り、この食事の後で彼女の様子は一変します。「ごちそうさまでした」とお礼のメッセージは来たものの、次の約束の話は出ず、やりとりも少しずつ減り、彼が気づいたときには既読がついたまま次の日も返事がない、なんてことが普通になりました。
「諦めたほうがいいのかな?」とこの男性に相談されたとき、筆者は「あなたは、彼女の気持ちを考えたことがあるの?」とまず尋ねました。男性は答えません。考えたことがないからです。
「相手の気持ちがわからない」のは、想像するつもりがないから。確かめないから。相手の気持ちを聞くことを放棄したままで関係を相手任せにするのは、女性にとって大きな負担になることが、この男性にはわかりません。
彼が「俺は間違えていないと思っているのに、どうしてうまくいかないのだろう」と苦しんでいるのはわかります。ですが、そもそも「待つことの気楽さ」を受け入れている時点でコミュニケーションを間違えています。彼女の立場になれない思考の狭さが彼女が離れていった原因なのだと、彼は気がつくべきでしょう。
自分に自信がないために、相手のアクションを待ってから動くことを選ぶ男性は多くいます。それが傷つかないやり方であり、「それでうまくいくならいいだろう」という甘えを持っていますが、その姿勢こそ幸せを遠ざけるのだと、もう一度考えてみる必要があります。
こんな男性をもし好きになったら、甘えられるのを当然としないことです。「自分から求めなければ何も手に入らない」のが現実であり、女性任せで関係を進めてほしいと思うのは男性の逃げでしかありません。
自信のなさは相手に埋めてもらうのではなく、自分から行動を起こすことでポジティブな心に変えていかなければなりません。それを忘れず、男性の甘えを安易に受け入れないような女性でありたいですね。