チーム『カメ止め!』感染者 KADOKAWA 2018年12月05日
社会人になってからのコミュニティ作りとは? 熱狂人生を歩む、レタスクラブ編集長の巻き込み力
会社では編集長という責任のある職に就きながら、同時にママとしての一面も持つ松田紀子さん。一見順調にキャリアアップしたように見える彼女にも、迷うことがあった。そんな時、一歩前に踏み出せたのは背中を押してくれる人との出会いがあったから。今回は、会社という世界の外に、信頼できる人間関係を作ってきた彼女の想いに迫る。
◼新しい出会いとコミュニティから生まれた化学反応
――これまでのお仕事のご経歴を教えてください。
リクルート九州で『じゃらん九州発』の編集に3年間携わり、メディアファクトリーに入社。コ ミックエッセイを立ち上げ、編集長になりました。2013年にメディアファクトリーがカドカワと合併し、2016年6月からコミックエッセイとレタスクラブの編集長に就いています。
――子育てと同時に会社員、中でも管理職として活躍し続けている松田さん。社外の方とも積極的に交流をされているイメージがありますが、会社以外ではどんな活動をされているのですか?
よく活動的に見られるのですが実はもともとはそんなことはなくて……。
仕事と育児とホットヨガに通う日々を過ごしていました。ただなんとなく、編集者としてもうひとつ成長したいな、学びが必要だなと感じていたときに、クリエイターやコンテンツ業界最前線 のビジネスパーソンの話を聞くワークショップに参加する機会がありました。
そこで刺激を受けたことで学習意欲に火が付いたというか、もっと仕事に活かせる実践的な学び を求めるようになりました。そんなときにコミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之さんが 主宰する「さとなおオープンラボ」(※)に出会います。
※社会人を対象としマーケティングを全 10回の実践的カリキュラムで学ぶワークショップ。人気 のコミュニティで、36名の定員に対し毎回参加倍率は6倍。
そこで学んでことが今の私のビジネス環境でもヒントになり活かされています。またそこに集まる一人ひとりがそれぞれに価値観をもった個性豊かな方ばかりで、そのコミュニティの繋 がりに、もともと持っていたアクティブさが重なり、みなさんが持つ活動的な印象になっている のだと思います。出会いの化学反応が私にとってとてもプラスに働いています。
◼応援したい気持ちは全力で表現する
――松田さんは大人気映画「カメラを止めるな」のファンブックを、この映画が好き!という ことをきっかけに、自ら提案して仲間を集めて制作されたそうですね。このファンブックの制作 には、社外のコミュニティに参加したことが役立ったとか? 経緯を教えてください。
この映画を観た瞬間、夢中になってしまって、どうにか上田監督のインタビューを出したいと思 い、スタッフの方に直接メッセージを送ってみたんです。
そうしたら、監督に会わせていただけることになり……。幸運にも無事インタビューをさせていただくことができました。
実際にお会いして話をお伺いしたらどんどん熱量が高まり、気づいたらお会いしたその場でファ ンブックのオファーをしていました。快くお引き受け下さり、制作活動を始めることになりまし た。
――誰よりもいち早く行動し圧倒的な情熱を上田監督ご本人に届けられたからこその実現ですね。制作活動はどのように進めていったのですか?
前段でお話した社外のコミュニティのメンバーに声をかけてみました。そうすると、私と同じように「カメラを止めるな」という映画に熱狂した人が多くいたんです。
それだけでなく映画に詳しいライター、編集者、デザイナーなど才能ある人がたくさんいて…… 必然的な繋がりでプロジェクトメンバーが作られました。
本業の業務内容と並行しながら3カ月間で作り上げるのにはとてもパワーが必要でした。正直、しんどいこともありましたが、とにかくいいものを作りたいという想いが勝りとても楽しかったですね。もちろん会社のメンバーにも理解をしてもらい、いろいろな方の協力があって作り上げることができました。止まらずに動いたことでとてもいいファンブックができたと思っています。
■ お互いが応援しあえるメンターが集まる場所作り
――やりたいことをどんどん実現されているイメージですが、これから先やってみたいことは ありますか?
実はコミュニティに所属するだけではなく、今度は友人と協同主催のコミュニティの運営にチャ レンジしてみようかと企んでいます。私自身、自分に合ったコミュニティに出会ったことが大きな成長機会のひとつになりました。
何かアイデアがあって実現したいと思っても、自分ひとりだったら躊躇して迷ってしまうことも あると思います。そんな時に同じ温度感で語ることができ、背中を押してくれる人がいてくれる ……、それがかけがえのない勇気となりエネルギーになることを実感しました。今後は私も自分が応援したい人たちの背中を押せるような、コミュニティの場にしたいと思います。
――具体的にはどんなコミュニティを目指されているのですか?
まだ漠然としているのですが、私のような管理職の女性を中心としたコミュニティをイメージし ています。ただ管理職ということだけにこだわらず、社会人として一定の経験をもち同じような課題や悩みをもっている女性たちが利害関係なくゆるやかに繋がれるようにしたいと思っています。
お互いに応援し合えるメンターの集まりのような場所を作れたらうれしいですね。 自信を無くした時にお互いが声を掛け合い解決し合うコミュニティがあれば、ライフイベントに 左右されやすい女性でも仕事を辞めずに定年まで楽しく仕事ができるのではないかと思っていま す。
◼「できるかできないか」じゃなくて、やってみること
――これからの社会人に必要とされる能力はなんだと思いますか?
これはあくまでも私個人が思っていることですが、できるかできないかで考えずに、流れに乗ってまずはやってみるということでしょうか。
私自身まさか入社した会社が合併してレタスクラブの編集長になるなんて、夢にも思っていませんでした。第三者が起こしてくれたレタスクラブ編集長というチャンスの波に乗ってみたこと で、結果今はとても楽しく充実しています。
特に30代は仕事もそれ以外のライフイベントもてんこ盛りで、いろいろなシーンで試される時期 だと思っていて、だからこれまでの経験やポジションに執着しすぎずに、捨てるものは捨てて、 必要なものを吸収できる余白を残しておくことが大事だと思います。
もちろん、選択する力も必要ですが信頼できる波に乗って動き出してみると、意外と新しい自分の才能が開花したり、好きなものの幅も広がったりするものだと思います。
――チャンスの波にのるためにしていらっしゃること、またアドバイスがあれば教えてください。
私も数年前に糸井重里さんの『インターネット的』という本を読んで、SNSの使い方を見直したことがありますが、発信することは大切だと思います。何ができるのかといったキャリアやスキ ルだけでなく、何をしたいのかという想いや信念も言葉にしていると思いがけないオファーがやってくることもあります。自分自身のライフプロフィールを整理することで新しい発見もあるのではないでしょうか。
<編集後記>
自分に合うコミュニティを見つけたことで、やりたいことや大切にしたいことを積極的に発信できるようになったという松田さん。そこでの実践的なインプットが仕事現場での良質なアウトプットを生み、周囲からの信頼やオファーにつながっている。松田さんが描く、働く女性のためのコミュニティは、きっとたくさんの志を持つ女性の心地良い居場所になるだろう。今から楽しみでならない。
取材協力:レタスクラブ編集長 松田紀子
1973年長崎県生まれ。リクルートを経て、出版社メディアファクトリーにて『ダーリンは外国人』などシリーズ300万部を創出。以降コミックエッセイの編集に携わり、多くの作家のデビューを手がける。2013年よりKADOKAWA在籍、現在は生活情報誌『レタスクラブ』編集長に就任。またコミックエッセイ編集部編集長および『東京Walker』編集部長を兼任する。2018年に『レタスクラブ』実売部数を昨対比143パーセント伸長させ、話題に。同年「WEB人賞」受賞。 Twitter:@koriko_m
Text/Mediajo(取材:ZENKUMI/ライター:NAHOMI)
ミーハーと私(ME)彼女(SHE・HER)を掛け合わせた造語で
ミーハーな女子ゴコロ=“女性の情報源”という意味を込めています