誰もが一度はしたことがある「嫉妬」
「嫉妬」は誰もが持つ一般的な感情です。もし、嫉妬という感情との向き合い方がわからないときは、真言宗の開祖、空海の考え方を参考にしてみてください。
いつの時代も、いくつになっても「嫉妬」という感情は生まれるもの。
恋愛、仕事、同姓、異性、あるいは若さ。自分が知らないパートナーの異性の友人、もしくは不倫相手の本妻、同僚の奇抜なアイデア。
まさかと思っていた人の昇進、ふと横目に見た、輝いている女性と自分を比べたときなど。
あなたはこれまで、どうやってこの感情を乗り越えてきましたか。
誤魔化す。
その状況から逃げる。
カミングアウトして吐き出す。
向き合う。
もし、嫉妬という感情を自身で対処する方法がわからない、消化不良な状態になっている方がいたら、空海の考え方を参考にしてみてはいかがでしょうか。
■空海とは
空海というお坊さんのことは、学生時代の歴史の勉強で出てきたかと思います。
しかし、仏教のひとつくらいの認識で、クローズアップされることは一般的には少ないのではないでしょうか。
「弘法にも筆の誤り」ということわざがありますが、ここにある「弘法」は弘法大師、つまり空海のことです。
空海は世界遺産である高野山で、金剛峰寺を建立した真言宗の開祖でもあります。
■空海の考える「嫉妬」とは
義浄という唐の時代の僧が訳した「能断金剛般若経」という経があります。
元々は、大乗仏教の般若経典のひとつです。
空海は、漢訳された義浄の「能断金剛般若経」を読み取り、中国・長安で学んできた密教をと自身の考えを織り交ぜて解釈しています。
密教とは、インドから中国に伝わったばかりで、当時最新の仏教の教えでした。
それを草書体(漢字の書体のひとつ)で書かれたものがあります。
大正大震災の折に焼失してしまい全部は残っていませんが、今でも一部残っています。
「嫉妬の心は彼岸(ひが)より生ず 平等を得ればすなわち嫉妬を離る」
「嫉妬は、自分とそれ以外とは別々の存在だと思う心から生じる。もし、自分と自分以外の人を別ではなくなり、公平な心になり、全ての人の善行を心から賞賛できる」
空海がなぜ嫉妬について記したのかは定かではありませんが、その時代から、既に嫉妬はあり、その感情をどのようにコントロールするかを記していたくらい、よくある感情だったのでしょう。
その感情をなくすのは難しいかもしれません。
しかし、もし空海の考え方が心に響き、新たな一歩を踏み出すきっかけになれば、次につながる何かがあるのではないでしょうか。
TEXT / 冨田 英理子