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モータースポーツってスポーツなの? 知られざるレースの裏側を知ったら面白い

あまり馴染みがなかったり、難しそうだったりするイメージがあるモータースポーツですが、ここ最近のモータースポーツは、女性にとってとっつきやすい分野になりつつあります。【モータースポーツの世界#2】では知られざるレースの裏側、日々の運転に役立つ豆知識をちょっとだけご紹介します。

モータースポーツってスポーツなの? 知られざるレースの裏側を知ったら面白い

モータースポーツで、プロとアマチュアの違いとは

まず、モータースポーツを知らない方々からよく聞かれるのが、「どこからプロなのか」ということ。

これについては、正直、僕たちのように実際にモータースポーツに関わっている人間も、はっきりとは答えられません。野球やサッカーのようにプロリーグがあるわけではなく、同じく個人競技であるゴルフやボクシングのようにプロテストがあるわけでもない。モータースポーツはそれほどにプロとアマチュアの境界がとても曖昧な競技なのです。

とはいえ、一般的な「プロ」の定義で言えば、「その道で生計を立てている人」なので、僕も人に聞かれたときにはそうお答えしています。

モータースポーツって、意外とキツい競技です

こちらもよく聞かれる質問です。「車に乗ってコースをグルグル回っているだけなんて、すごく楽そうだよね。なんで『スポーツ』なの?」

いやいや、そうじゃないんです。体力も頭も使う、れっきとした「スポーツ」です!

実際にやってみてもらわないとわからないのが悲しいところですが、その過酷さを文章で説明していきましょう。

まずは「G(=重力加速度)」について。普段、皆さんが街中で乗用車を運転しているときに、体にかかる負荷は最大でも約0.8G、つまり自分の体重の8割程度の力です。Gは数値が大きくなるほど「大きな力がかかる」ということになります。

では、レース中にかかる負荷はどれくらいかというと、前回ご紹介したS-FJで最大約2Gです。僕は体重60kgなので、60kg×2=120kgもの力が、ブレーキをかけたときには後ろから前の方向に、カーブを曲がるときには横方向にかかるわけです。世界最高峰のF1に至っては最大で約5Gにもなります。

S-FJのコクピット。特殊な樹脂素材でピッタリ身体に合わせて作られたシートに、両肩・腰・両脚の合計6点を締めるシートベルトで、文字通り「縛り付けられた状態」でレースを戦います。

次に、コクピット内の過酷な環境。

フォーミュラカーはマシンの開口部にコクピットが設けられています。雨風が直撃するので、雨の日に走行すると、コクピット内は水浸しになります。

花粉が飛散する時期の走行もなかなかハードです。花粉症持ちの人はそれはそれは大変な環境下に置かれます(ちなみに僕も花粉症持ちです……)。

ツーリングカーやGTマシンの場合、基本的には普通の車を改造したマシンなので、当然ながらドアも窓も屋根もついています。冬の走行は風を完全にシャットアウトできて暖かくて良いですが、夏の暑い日はまるで地獄のような環境に様変わりします。

大部分のマシンは軽量化のためにエアコンを外しているので、車内の温度は40〜50℃になります。サウナに入りながらレースを戦うようなものですから、ちょっとでも気を抜いてしまうとボーッとして、危ない状態に。そうならないためにも、レーシングドライバーはトレーニングを積んでおかねばなりません。

オーバーオール型のレーシングスーツの下に、上下長袖のアンダーウェアも着ています。どちらも安全性を確保するために難燃素材でできているので、夏に着ていると非常に暑い!

ちなみに、上位クラスのマシンには簡易的なエアコンが装備されていたりしますが、エアコンのついていないマシン向けには以下のような装備もあります(Wikipediaより引用)。

クールスーツというもので、普段着るようなTシャツに水の通るチューブが張り巡らされています。それをレーシングスーツと呼ばれるオーバーオールの下に着るのです。

車内には氷水や保冷剤を入れるクーラーボックスを搭載し、ドライバー交代で乗り込む際に人間側のチューブとクーラーボックス側のチューブを繋げて準備完了。

あとは使いたいときにボタンを押すだけで、冷水がチューブの中を流れます。合計2~24時間、ひとり当たりでも1時間、場合によってはそれ以上走らなければならない耐久レースには必要不可欠な装備です。

ただし、あまり使いすぎると”ぬるく”なってくるので、逆効果になりますが……。

モータースポーツは観ても楽しい!

ここまでご紹介した内容を知った上で観ると、十分楽しめると思います。レースはドライバーの運転技量だけでなく、マシンの調整(セッティング)やチームの戦略などにも結果が左右されるため、そのあたりを考えながら観てみるとさらに楽しいですよ!

例えば長時間のレースの場合、カテゴリーによっては燃料を積む量、タイヤ交換の有無や種類をある程度自由に選択できます。

理論的には、燃料はなるべく積まずに軽い状態で走った方がペースが上がるので、「最初は燃料を多めに積んだ状態でそこそこのペースで周回数を多めに稼いでおいて、後半のピット作業では少なめの給油で軽い状態でペースを上げる」などの作戦をとることが可能。

さらにタイヤについてもどのタイミングで換えるか、レースによってはどの種類にするか、など選択肢が多数あるため、レース中の戦略は何パターンも生まれます。

また、テレビで観るのも楽しいですが、モータースポーツはやはり現地で観戦した方が何倍も面白いです! 上記のような戦略云々を難しく考える前に、サーキット現地に着くとまず「音」や「匂い」、「迫力」に圧倒されることでしょう。ピット作業も実際に見ると結構格好良いものですよ!

「理屈」ではなく「感覚」でも大いに楽しめるのがモータースポーツなのです。レースによってはレースマシンを整備したりドライバーが待機する「パドックエリア」に入れたりもするので、ぜひ一度足を運んでみてほしいと思います!

モータースポーツは、女性が活躍する世界

「男だらけ」なイメージのあるモータースポーツですが、実はドライバーやマネージャー、メカニックなどレースをする側だけでなく、レース運営側にも女性が幅広く関わるスポーツでもあるのです。

さらに、近年は女性も体験・参加しやすい環境が整いつつあります!

次回は「意外と身近な」モータースポーツの体験方法についてご紹介します。

おまけ:日々の運転がちょっと楽になるアイデア

最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございます。ご自分でお車を運転される方々向けに、最後に少しおまけを。

以下のポイントに意識を向けて車に乗ってみると、きっと運転が楽になることでしょう。実はモータースポーツでのドライビングに通ずる部分もあるんです。簡単にできることなので、お試しいただけたら幸いです。

・運転姿勢を見直す

「ハンドルは時計の『10時10分』の位置を持つ」「シートの位置はひじ、ひざが軽く曲がる程度に調整する」「ハンドル位置が調整できる車であれば、ハンドルをどこに回しても肩甲骨がしっかりとシートにつくところに合わせる」。

教習所に通われてから免許を取得された方は、習ったこともあるかと思いますが、もう一度この3点を見直してみましょう。次のポイントへの大切な準備でもあります。

・「先を見る(=先を読む)」

近くばかり見ていると危ないし、疲れるしで良いことなしです! 前の車だけでなく、約100メートル先以上を”幅広く”見て運転する意識を持つだけで、危険も疲労も減ります。運転に恐怖心のある方はこれだけでだいぶ楽になると思います。

交差点を曲がるときや車線変更をするときなどは、遠くだけでなく近くの車・人の巻き込み確認も忘れずにお願いします!

山田 遼

レーシングドライバー/アドバイザー。22歳。「世界で通用するプロレーシングドライバー」を目指し奮闘中。近年はスーパー耐久やフォーミュラなど様々なカテゴリーのレースを戦う傍ら、アマチュアレーシングドライバーやジュニアカートドラ...

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