【海外で、産む】緊急帝王切開で産み、4泊で退院した私の経験談
マレーシアで第一子を出産しました。無痛分娩で出産するつもりでしたが、諸事情で緊急帝王切開となりました。入院期間はたったの4泊。薬を飲む際は水ではなくてミロ(Milo)。そんな海外出産体験をご紹介します。
■陣痛か破水を待っていたら、「明日出産しましょう」となった
出産予定日の2日前から産休を取り、入院用の荷造りも済ませ、いつ陣痛が来ても、または破水してもすぐ病院に駆けつけられるように準備を整えていました。
マレーシアには、星座や数字へのこだわり、もしくは宗教上の理由などで、出産日を決める人が少なからずいるそうです。実際に、妊娠後期の妊婦健診の際に「ご希望の出産日時はありますか?」と聞かれて驚きました。自然の流れに任せたいと思い、計画分娩にはしませんでした。
そして出産予定日。陣痛も破水もまだありません。妊婦検診で病院に行き、CTGを行ったところ、先生の表情がやや曇りました。
※CTGとはCardioTocoGramの略で、胎児の心拍と子宮収縮の様子を測るものです。日本ではNST、Non-Stress Testと呼ばれています。
先生:胎動はどうですか?
私:うーん、前より少し動きが鈍いというか、頻度が減っているような……?
先生:そうですか。
私:(なんでこんなこと聞かれるんだろう……)
先生:ほんのちょっとなんですが、CTGの結果がよくないんですね。もう出産予定日ですし、陣痛誘発剤を使って出産しましょう。明日の金曜日と来週の月曜日、どっちがいいですか?
私:えっ!? 週末挟むのはちょっと不安なんで明日ですかね……
先生:OK。明日出産しましょう。朝9時に来てください。
私:はい(こんなあっさり子どもの誕生日が決まっちゃっていいのー!?)
陣痛か破水が来て、慌てて病院に行くことになるんだろうと脳内で散々シミュレーションしていたのですが、翌日に入院して出産することになりました。
このときはまだ、無痛分娩で産むつもりでした。
■子の心拍が不安定!? 緊急帝王切開で産むことになった
翌朝、仕事を休んでくれた夫とふたりで病院へ。案内されたのはLDRという部屋です。
※LDRとはLabor、Delivery、Recoveryの略で、陣痛から分娩、回復までを過ごせる部屋という意味です。
ここで産むんだと思うと、ドキドキとワクワクが入り混じった不思議な緊張感に包まれます。
「まずはCTG、そのあと陣痛誘発剤を入れて、そのうち陣痛が来て、硬膜外注射を打って……」と、ざっくりの流れを説明してもらいました。
CTGの数値を見た先生が看護師に、「今日も胎児の心拍が不安定で、このまま誘発剤を使うと胎児に負担がかかるから、緊急帝王切開にしよう。日本語通訳を呼んで、Suniに説明してもらって」と言ってるのが聞こえました。
日本語通訳の方が来るまでもなく、夫婦で状況を理解しました。
それまでは無痛分娩でスポーンと産むつもりだったのでまさかの展開ですが、そんなことよりも子どもの命の方が大事。
数週間前に逆子と診断されたときには、「このままだと帝王切開かも」と言われてかなり不安になりましたが、ここまで来ると悟りの境地、帝王切開だろうがなんだろうが、無事産まれてくれればなんでもいいです。
3時間ほどの絶飲食ののちにLDRから手術室に運ばれ、夫の立会いのもと、帝王切開手術の開始です。麻酔を打たれたら下半身の感覚があっという間になくなりました。
お腹が見えないように視界を遮られたので、手術の様子はまったくわかりません。途中、お腹をぐいぐい押されているのだけはわかり、続いて「おぎゃー、おぎゃー」という泣き声が聞こえてきました。
予想以上の大きな泣き声に安堵したのと、無事産まれるかわからない緊張感が続いた妊娠生活の終わりを迎えた安堵とで、涙腺が崩壊です。
麻酔でお腹に力が入らないからか、かすれ声で夫に「やっと産まれたね……」と伝えるのが精一杯でした。
■薬をミロで飲む!? マレーシアでの入院生活
手術から2時間後には寝たまま初の授乳、その数時間後には飲食解禁、翌日には尿管を抜かれ、自力で歩いてトイレとシャワー、そして4泊して退院となりました。
入院期間が短いのは覚悟の上でしたが、それ以上にびっくりしたのは……。
朝昼晩の3食と3回の間食そして薬のお供に、なんとミロがついてくるんです!
しかもご丁寧に、砂糖とクリーマー付きで。普通の人の一生分のミロを、入院中に飲んだ気がします。
念のため補足しておくと、常温の水(ペットボトル)とお湯(魔法瓶)も常に用意してくれました。
入院中の食事は、あっさりした味付けの料理でした。ハラル対応の病院なので豚肉は当然出ません。鶏肉か魚料理ばかりでした。
豚肉はともかく、薄味で食べがいのない料理にすぐ飽きた私は、夫にお願いしてお菓子やケーキを買ってきてもらって食欲を満たしていました。
子どもは基本的に新生児室で預かってもらい、お腹が空いて泣いたら看護師が私の病室に連れてきて授乳、というスタイルでした。
子どもは私の食事スケジュールなんて、おまかいなしに泣くので、私の食事中に子どもが運ばれてくることもしょっちゅう。
こういうときは私の食事を優先するようで、「泣いてるからおっぱいあげなきゃ」と胸を出そうとすると、看護師に「お母さんが先に食べて」と言われ、私の食事が終わるまで子どもをあやしてくれました。
子どもが寝静まったら看護師は退散してしまうので、写真のように寝ている我が子を眺めながら食事を取ることも何度かありました。
今思うと、自分でやることと言ったらトイレとシャワー、食事と睡眠、そして授乳くらいですね。まるで女王様にでもなったかのような入院生活でした。
なお、この入院期間中に、子どもは黄疸のチェックとBCG、B型肝炎の予防接種を受けています。臨月の妊婦健診で説明を受けて知ったのですが、マレーシアが推奨する予防接種の種類とスケジュールは日本のものとは違うため、駐在員家庭など本帰国の予定がある場合はこのタイミングでBCGとB型肝炎は打たず、日本が推奨するスケジュールに則って予防接種を進めるケースが多いそうです。
私たち家族は現時点で本帰国の予定がないため、マレーシア推奨のスケジュールで予防接種を受けることにしました。
もちろんマレーシアと日本それぞれのリストを突き合わせて、日本で必須扱いになっている予防接種が漏れないように進める予定です。
■親子3人プラス産褥アマさんとの生活がスタート
親子3人でも新生活……ではなく、産褥アマさんを含めた4人での新生活が始まりました。産褥アマさんについてはこちらでご紹介した通りです。
・【海外で、産む】産後ママの最優先タスクは「体力回復」
たった4泊の入院だったことで、術後の経過に少し不安がありましたが、私の産後の体力回復と、夫婦二人が授乳やおむつ交換、沐浴などの子育てにまつわるイベントに慣れるためには、産褥アマさんの存在は不可欠でした。
またこの記事は、産褥アマさんに子どもの面倒を見てもらっている間に書いています。
次回は、産褥アマさんとの生活スケジュールや毎食作ってもらった産褥食など、実際にどういう生活を送っていたのか詳しくご紹介します。
■オマケ:出産にまつわる諸経費の合計額
産前産後の合計18回に渡る妊婦検診の合計額が29.6万円、3回に渡る親子教室の合計額が6200円、帝王切開による出産と入院費用が54万円、産褥アマさん28日分の費用が19.9万円。合計で約104万円となりました。
出産費用は事前にだいたいの金額を聞いていたので覚悟はできていましたが、その他諸経費を合計したらかなりの金額ですね。計算してみてびっくりしました。
海外出産は国によって費用はまちまちでしょうし、また同じ国の中でも、場所や病院・医師によって事情はかなり違うと思いますが、私の体験談がこの先どなたかの参考になりますように。