『隣の家族は青く見える』2話。ラブラブ夫婦でも不妊治療には男女の意識の差が歴然!
深田恭子さん、松山ケンイチさん主演の木曜ドラマ『隣の家族は青く見える』。テーマはズバリ、“妊活”。さらに、ゲイカップルや子育て家族、子どもはいらないと主張する家族などが入り乱れる、ハートフルなヒューマンドラマです。2話から大きな展開があったようですが……。
深田恭子、松山ケンイチ主演の木曜ドラマ『隣の家族は青く見える』。
深田、松山の夫婦をはじめとした、コーポラティブハウスに集う4つの世帯のそれぞれの悩みや価値観の相違を描く。
まっすぐなストーリーがあるわけではなく、深田、松山の夫婦の不妊治療を中心に、それぞれのお話がクロスする群像劇だ。だから気軽に見られる反面、ネットやSNSでの議論をそのまま聞かされている気分にもなる。
■「他人の生活に踏み込むなっつーの」
まず、明らかになっている4つのカップル(家族)がそれぞれ抱えている問題(秘密)を整理してみよう。
五十嵐奈々(深田恭子)と五十嵐大器(松山ケンイチ)はラブラブ(死語)の夫婦だが、子どもができないため、不妊治療を開始したばかり。
川村亮司(平山浩行)と杉崎ちひろ(高橋メアリージュン)は入籍していないカップル。
ちひろは子ども嫌いを公言している(でも、結婚はしたい)。一方、亮司はちひろに内緒で前妻との子・亮太(和田庵)に会いに行っている。
広瀬渉(眞島秀和)と青木朔(北村匠海)は男性同士のカップル。
渉は自分がゲイだということをひた隠しにしており、奔放な朔に頭を痛めている。
小宮山真一郎(野間口徹)と小宮山深雪(真飛聖)はふたりの娘を持つ幸せな家族。
しかし、多忙すぎる会社を早期退職してしまった真一郎は、深雪から冷たい目で見られている。
誰だって、人に知られたくない悩みをひとつやふたつぐらい持っているもの。
しかし、彼らが住んでいるコーポラティブハウスは境界線が非常に薄く、それぞれが関わりながらコミュニティを形成していくことになる。
「隣の芝生は青く見えるっていうけど、ホントそれ。他人の生活に踏み込むなっつーの」
とは、コラボCMに登場するちひろのセリフだが、そうはいかないのがコーポラティブハウスなのだ。そして、それは視聴者にとっても他人事ではない。
■「次はできるよ。大丈夫」の罪
「今日、夜もタイミングとりたいです」
「え~~」
不妊治療を始めたものの、奈々と大器の意識にはかなり差がある。
タイミングとは、不妊治療の一種である「タイミング法」のこと。排卵日、あるいは排卵日の前後に性交を行うことで妊娠の確率を上げる、多くの妊活カップルが最初に行う方法だ。
しかし、それでも奈々は妊娠しない。
「次はできるよ。大丈夫、大丈夫」と気楽な大器。
しかし、この言葉、妻にとっては嬉しくないらしい。むしろプレッシャーになる。そういえば、1話で精液検査を行って問題なかったと判明したときにガッツポーズをしていたが、あれも妻にプレッシャーをかける仕草だと思う。もちろん、喜んでしまう気持ちもわからないわけではないのだが。
また、大器は日にちを指定されて性交することに、あからさまに嫌気がさしている模様。
1話では精液検査について先進的な考えを披露していた部下の矢野(須賀健太)も、大器に理解を示しているようだ。
「男はそういうところ、繊細ですからね。でも、奥さんも難しく考えすぎずに、今までどおり楽しんだらいいと思いますけど」
「そうそれ! 子作り意識しはじめてから、ぜんぜん楽しくなくなったんだよなぁ」
楽しみながらできるほど、不妊治療は生易しいものではない。実際、奈々は体に負担がかかる子宮卵管造影検査をこなしている。不妊治療に関する男女の意識の溝は深い。
■このドラマは『スカッとジャパン』ではない
亮司が息子の亮太に会いに行っていたのは、別れた妻が急死したからだ。
妻の老母は体調が不安定で小学生の息子の面倒みきれない。亮司はいつか亮太を引き取りたいと考えていた。しかし、子ども嫌いのちひろが、亮司が亮太と一緒にいるところを目撃してしまう。
ショックを受けたちひろがコーポラティブハウスに帰ってくると、各ファミリーが揃ってバーベキューの真っ最中。ここで深雪のデリカシーレスな発言が火を噴く。
「おふたりとも、そろそろ真剣に子作りしたほうがいいと思うのよねぇ。どんなに見た目年齢が若くても、子宮や卵巣は若作りできないじゃない?」
かつてアーティストの倖田來未はラジオで「35歳を過ぎると羊水が腐る」と発言して大バッシングを受けたことがある。深雪の言っていることは、それほど変わらない。カッチーンと来たちひろは、真正面から反論する。
「子ども作んないと、なんかマズいんですか? 小宮山さんの言うことを聞いてると、子どもを作らない女は価値がないみたいだから」
「そんなこと言ってないわよ。女性はその存在だけで十分に価値があると思ってる。だけど、その価値を最大限に使って社会に貢献しないと、もったいないじゃない」
言ってたよ! 先週「女は子どもを産んでこそ一人前だもの」「子ども欲しい、っていうのは女性共通の願いよ」って言ってたよ!
深雪の発言に怒りが爆発するちひろ。
しかし、彼女の攻撃の矛先は、深雪の娘たちにも向く。「私は子どもなんか嫌いだし、母親になんか絶対なりたくない!」。子どもは大人の怒鳴り合いには敏感に反応する。おまけにその矛先が向けられるなんて、本当に可哀想だ。
「自分のものさしだけで、他人を測るなっつってんだよ!」
というちひろの啖呵は正論だが、視聴者はスッキリしない。
このドラマは『スカッとジャパン』にはなってくれない。
その場を収めようとしたのは、奈々だ。
「子どもがいる人もいない人も、働いている人も働いていない人も、いろんな人がいていいじゃないですか。どうしてみんな同じじゃないといけないんですか? みんな違ってていいじゃないですか」
彼らの様子を面白がっているのは朔だ。
さまざまな価値観を隠してお互いが穏便に生きるのではなく、ぶつかり合ったほうが新しい何かが生まれる可能性がある。ゲイの朔は、そのことを察知しているのだろう。
そして、渉と朔がキスしているところを奈々が目撃してしまう! コーポラティブハウスって、本当に秘密が守れないんだね……。
■お互いに何も干渉しないのがベストなの?
『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』も手がけた中谷まゆみの脚本は、とてもわかりやすい反面、ちょっとストレートすぎる部分がある。議論の材料になるドラマだが、ちょっと視聴者は疲れるかもしれない。
朔はこんなことを言っていた。
「きれいなものをきれいって言うのは、すごくいいことだと思いますけど。でも今って、いいことも悪いことも、言っちゃいけないって風潮があって。息苦しくないですか?」
お互いの生き方や価値観を大切にするには、お互いに何も干渉せずに黙っているのがベストなんだろうか? そうではないんじゃないかというのが、朔の考え方だ。自分の思ったことを正直に言い、それが相手を傷つけたなら素直に謝る。摩擦が起こったら、なぜ摩擦が起こったかを考え、解決に導く。
このドラマは、そんなことをさりげなく訴えているような気がする。
また、物語の途中には、大器が開発したおもちゃで子どもが怪我をするというエピソードが挿入される。幸いなことにたいした怪我ではなかったが、孫におもちゃを買い与えた祖母は辛い気持ちになっているだろうと想像して落ち込む大器。
このエピソードが示しているのは、「よかれと思って」やったことが裏目に出てしまうという悲しさと、それでも「よかれと思って」という気持ちは悪いものではない、ということなんじゃないだろうか。深雪がお節介でちひろたちに配ったマフィンはたいそう美味しかったという。