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『隣の家族は青く見える』リアルな不妊治療と偏見、だけどハートフル!

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深田恭子さん、松山ケンイチさん主演の木曜ドラマ『隣の家族は青く見える』。テーマはズバリ、“妊活”。さらに、ゲイカップルや子育て家族、子どもはいらないと主張する家族などが入り乱れる、ハートフルなヒューマンドラマです。どこかコメディっぽくもありますが、はたしてどんなドラマなのでしょうか?

『隣の家族は青く見える』リアルな不妊治療と偏見、だけどハートフル!

深田恭子、松山ケンイチ主演のドラマ『隣の家族は青く見える』がスタートした。フカキョンと松ケンは妊活に励む若い夫婦役を演じる。

妊活をテーマにしたドラマが始まると聞いたとき、反射的に「難しいドラマだな……」と思った。

筆者もかつて妊活を経験している。妊活というか、ひらたく言えば不妊治療だ。
夫婦の妊活をテーマにしたドラマを作るとき、妊娠の成功(出産)をゴールにすると、登場人物たちはハッピーエンドで終わるが、同時に観ている多くの妊娠・出産がかなわなかった人たちが傷ついてしまうおそれがある。

妊娠できなかった、というゴールになると、それはそれで悲しい。それだけデリケートなテーマなのだ。そのあたりをどうするんだろう……と思いながら第1話を視聴してみた。

■いろいろな事情のある4組のカップル

登場人物は、主に4組の夫婦(カップル)。

まず、スキューバダイビングインストラクターの五十嵐菜々(深田恭子)と玩具メーカー勤務の大器(松山ケンイチ)の夫婦。結婚5年目。お互いに子どもが欲しいと思っているが、子宝には恵まれていない。

次に、バツイチのスタイリスト、川村亮司(平山浩行)とネイリストの杉崎ちひろ(高橋メアリージュン)。彼らはまだ結婚していない。そして、ちひろは一生子どもを持つ気がない。

三組目が一級建築士の広瀬渉(眞島秀和)と渉の恋人のバーテンダー、青木朔(北村匠海)。彼らはゲイカップルだ。広瀬は自分がゲイであることを周囲に頑なに隠している。

そして最後が、商社マンの小宮山真一郎(野間口徹)と専業主婦の深雪(真飛聖)夫婦。彼らにはふたりの娘がいるが、真一郎は失業してしまう。

この4組のカップルがお話の舞台となるコーポラティブハウスを作ろうとするところから物語が始まる。このドラマは、彼ら4組がそれぞれのカップルが抱える問題や、お互いの価値観の違いに直面するシーンを通して、それぞれの幸せをつかむ様子を描く。
妊活だけのドラマではなかったのだ。筆者の勘違いだった。

コーポラティブハウスとは、さまざまな家族が自分たちの意見を出し合いながらデザイナーとともに作り上げる集合住宅のこと。共有スペースもあり、第1話のサブタイトルでは「ひとつ屋根の下」と表現が使われていた。それだけ密接な関係になるというわけだ。

どうでもいい話だが、コーポラティブハウスはオシャレさを追求するあまり、外付けの急な階段がついている建物が多く、この前みたいな雪の日はすごく危なかったりする。

■「女は子どもを産んでこそ一人前」!?

「みなさんもいずれはお子さん作られるでしょうし! ね!」

「お仕事お忙しいのはわかるけど、子どもは絶対作ったほうがいいわよ!」

「あら、いろいろな考え方があっても、子ども欲しい、っていうのは女性共通の願いよ」

「女は子どもを産んでこそ一人前だもの。ねぇ~?」

「少しでも少子化に歯止め、かけなきゃね!」

目を剥いてマシンガンのようにまくしたてる深雪。夫・真一郎の制止も聞かずに話し続ける。この発言のヤバさはDRESSを読んでいるみなさんならよくおわかりだと思う。サクラ先生なら「それは違うと思います」と言うだろうし、四宮先生なら「何言ってんだ、お前」と突っ込んでくれるだろう。

まるでどこかの田舎のおっさんのような発言と価値観だが、これがこれからコーポラティブハウスに入ろうとするアーバンな40代女性によるものだったりする。こういうことを悪意なくカジュアルに言ってしまう人は、どこにでもいるということなのだろう。もちろん「悪意なく」というところもヤバイ。

離れた場所で放たれる「あーっ、ムカつくーっ!」というちひろの怒りはよくわかる。パートナーの亮司はちひろの怒りを「見かけによらず常識的なところ、好きだよ」と鷹揚に受け止めて、話を重くしない。だが、しっかりと「常識的」と言っている。深雪の発言が非常識なことぐらい、誰だって承知なのだ。

似たようなことを言う人が、もうひとりいる。
大器の母・聡子(高畑淳子)だ。聡子はうれしそうにこう話しかける。

「あっちのほうも、そろそろ、ねぇ?」
「子作りに決まってるでしょ!」

聡子に釘を刺すのは、大器の妹・琴音(伊藤沙莉)だ。

「言っとくけど、それ、セクハラだからね!」
「女の人に結婚してるの? とか、子どもいるの? って聞くのですら、デリカシーがないって思われちゃう時代なんだから、気をつけたほうがいいよ」

ときっちり言ってくれる。

「何がセクハラよ! 息子夫婦に孫が見たいって言って何が悪いのよ?」と抵抗する聡子には、こうトドメを刺す。

「それ、お兄たちにセックスしろ、って言ってるのと同じだから!」

脚本の中谷まゆみは、近年では『ラスト・シンデレラ』『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』などでヒットを飛ばした人。『校閲ガール』などを見ると、戯画化されたキャラクターを使ってわかりやすくメッセージを伝える人という印象がある。ハートフルなエンターテイメント作品が得意で、深刻なシーンの後には小さな笑いを挿入する。デリケートなテーマをどう料理するか、注目だ。

■リアルな不妊治療の描写

さて、子作りを始めて1年経った菜々と大器の夫婦だが、妊娠の兆候は見られなかった。菜々は病院で診てもらおうとするが、大器は「子どもは授かりもの」と否定的だ。菜々は35歳、大器は32歳。菜々は妊娠の年齢的なリミットを感じていた。

一緒に検査を受けるよう誘う菜々に、あからさまに嫌な顔で応える大器。
それでも精液検査を受けることに同意した大器に、会社の部下・矢野朋也(須賀健太)はサラッと自分も受けたことを告げる。

「主任、もしかして原因の大半は女性にあると思ってないですよね?」

丁寧に不妊のシステムを説明する朋也。

「不妊治療だっていまだに根強い偏見とかありますからね。あ、僕はそれを無知から来ていると思ってます。無知こそいらぬ偏見や差別を生むんですよ」

うーん、偉いぞ、朋也。このドラマ、安心して観ていられる。まぁ、安心してばかりもいられないのだが。

菜々と大器が訪れた不妊治療のクリニックの描写はリアルだ。クリニックに来ているのは、ほとんど女性だけで男性はほとんどいない。そしてものすごく混んでいる。クリニックによっては朝7時から行列ができる。採精室も筆者が入った部屋そのまんま(もうちょっと広かった)。

診察の結果、「その気になればいつでもできるなんて考えは、ものすごく甘い考えだったんじゃないかって」と落ち込む菜々。だけど、思い出話に花を咲かせ、一緒に料理を作ることで気分を取り戻す。

それぞれのカップルが抱える問題がテンポ良く描かれたが、それぞれにちゃんと救いとなる幸せな部分も描いている。シリアスな問題を扱うからといって、シリアスなムード一辺倒になることもない。むしろ、明るく、楽しく、問題点を見つめて、それぞれの幸せを探そうよ、と呼びかけているようだ。第2話は今夜10時から。

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大山 くまお

ライター。文春オンラインその他で連載中。ドラマレビュー、インタビュー、名言・珍言、中日ドラゴンズなどが守備範囲。著書に『「がんばれ!」でがんばれない人のための“意外”な名言集』『野原ひろしの名言集 「クレヨンしんちゃん」から...

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