退職後の経験はすべて武器になる――女性の再就職のリアル(前編)

退職後の経験はすべて武器になる――女性の再就職のリアル(前編)

再就職をするにあたり、必要なスキルは何か、企業の求める人材は、そしてどういう企業をターゲットにしたらいいのか――。今回は、日本女子大学教授で現代女性キャリア研究所所長の大沢真知子先生に、「女性の再就職のリアル」についてお話を伺いました。


出産や夫の転勤、親の介護など、女性がやむを得ず退職せざるを得ない場面はいくつかあります。そして、それらが一段落したところで再就職を望む女性は少なくありません。

しかし、一般的にアラフォー以上の世代は再就職が難しいといわれています。

実情はどうなのでしょうか。

■「現代女性キャリア研究所」の取り組みとリカレント教育課程とは?

──大沢先生は、女性の社会進出をテーマに研究されていると伺いました。

「当研究所は、女性のキャリア形成を『女性の生き方』としてとらえ、生き方の選択とさまざまな制約の諸問題をテーマに調査研究しています。私は長年、女性の社会進出をテーマに研究しており、『セカンドチャンス社会の形成』を研究のゴールと考えています」

──「セカンドキャリア」というキーワードはよく耳にしますが「セカンドチャンス社会」とはどのようなことですか。

「誰もが自分のポテンシャルを開花させ、人生経験を生かし、もう一度社会に出てチャンスをつかむ! これらの挑戦が実現する社会です。

もともと女性の就労率は、結婚してから育児を行う期間にかけて下がり、子育てが一段落ついたところで再上昇する、いわゆる“就労のM字カーブ”を描いてきました」

──近年、M字の底は上がっていると言われていますが、再就職率が上がったとみていいのでしょうか。

「一般的には、晩婚化が進んでいる傾向があり、結婚や出産の時期がずれていることがM字の底を上げていると言われています」

──M字カーブにはまだ大きな変化は見られないものの、セカンドチャンスを目指す女性は増えていると思います。そこで、リカレント教育プログラムを設けられたと。

「はい。当大学では、仕事復帰を希望する女性のための教育プログラム『リカレント教育課程(※)』を2007年に開校しました。ここには“再就職”を共通キーワードに持つ女性たちが集まってきます。

学ぶことで復帰する自信をつけ、次のステップを目指すための教育プログラムです。履修期間は1年間。

すべての女性が希望通りに就職できているわけではありませんが、リカレント教育課程修了生たちの就職率は予想していたより高いです。

本課程立ち上げ当初は、外資系が再就職先の主なターゲットになると予想していました。実力主義で年齢や性別にとらわれない企業風土があるからです。

しかし、実際には、日本の一般企業も興味関心を寄せていました。再就職率の高さにはこうした背景があるようです」

■女性の再就職組が「宝の山」であることに気づいた企業たち

女性のキャリア

──再就職に成功する女性が増えている要因として、人口減少による人材不足も背景にありますが、企業側が再就職を望む女性たちのポテンシャルに注目し始めたことが大きいのでしょうか。

「女性の再就職希望者の多くは、もともとある程度のキャリアがあり、仕事に対する基本的な姿勢やマナーがきちんと身についているというアドバンテージがあります。

また、家事や育児、PTA活動などを通じ、自ら計画を立てて実行する力や高いコミュニケーション能力を持っている女性が多いことも事実。

そこで求人企業側は、こうした女性たちが強い戦力になるのではないかと期待するようになったのではないかと考えます。

大切なことは、再就職をする女性たちがこれまでの経験を投資としてとらえ、実生活で積んだ経験を自分のCAN(提供可能な仕事能力)として認識できるかどうか。それを広げていけるパワーがある方に、セカンドチャンスの扉が開くのではないかと思います」

■再就職は中小企業やベンチャー企業の方がチャレンジしやすい?

──では実際に、どのような企業をターゲットにすれば良いでしょうか。

「これまでの実績が生かしやすいことや、個々の働き方について柔軟に相談しやすいと思われる、中小企業やベンチャー企業がおすすめです。

創業理念に共感できるのであれば、企業の一歯車として働くのではなく、幅広い事業に関われる可能性が高いからです。

また、大企業とは違い、できあがった組織への入りにくさや定年について悩まなくてもよいケースもあります。

ある中小企業では、中国での新ビジネス立ち上げのために再就職女性を採用した例もありました。中小企業だからこそ巡り合えた、ビッグチャンスといえましょう。

中小企業やベンチャー企業の魅力は、企業の成長とともに自分も成長できることではないでしょうか」

子育ても一段落し、何か物足りなさがあってモヤモヤしている、それが一体何なのか。やりがいを持って何かに取り組みたいけれど、それは何なのか。そんな自問自答を経た結果、再就職を決意する女性は少なくありません。

しかし、活動を始めるにあたり、自分の何を強みにアプローチすれば良いか悩む方も多いでしょう。

次回は、セカンドチャンスを得るための、自身のスキルやポテンシャルの見つけ方についてお話を伺います。

(※1)リカレント教育課程:http://www5.jwu.ac.jp/gp/recurrent/

大学卒業後に就職しても育児や進路変更などで離職した女性に1年間(2学期)のキャリア教育を通して、高い技能・知識と働く自信・責任感を養い、再就職を支援する日本女子大学のプログラム。

大沢眞知子さんのプロフィール

女性のキャリアチェンジ

日本女子大学 人間社会学部 現代社会学科教授
現代女性キャリア研究所 所長

研究テーマ:ワークライフバランス、少子化、女性の社会進出


現代女性キャリア研究所
http://riwac.jp/

日本女子大学リカレント教育課程
http://www5.jwu.ac.jp/gp/recurrent/

この記事のライター

1男1女を育てながら、マーケットリサーチャ、コンテンツプランナーとして仕事を続けてきた。昨年、夫の海外赴任を機会に一休み。現在は、これからのセカンドステージをどう輝かせるか? を模索中。 大学で専攻した「女子労働」が、...

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