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今日という日をもっと幸せに生きるヒント

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昨日の失敗にへこんだり、今日をやり直したいと思ったり、明日が来るのが怖かったり……。季節が大きく変わる秋の夜長、考えなくてもよいことまで、あれこれ考えてしまうことはありませんか。そんなときに観ていただきたい、素敵な映画をご紹介します。

今日という日をもっと幸せに生きるヒント

朝の冷え込みが厳しくなってきました。ただでさえベッドから出るのが億劫なこの季節。

特に、不安や悩みを引きずったまま憂鬱な気持ちで迎えた朝は、外へ踏み出すのに勇気がいることもあります。

でも、なんとか昨日を受け入れ、気分を切り替えて、今日を始めるしかありません、過去に戻ることも過去を変えることもできないのだから。

■でも、もし過去をやり直すことができるなら?

大好きな映画『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』をご紹介します。

公開は2013年。映画館で二度観て、それでも足りずにDVDを購入しました。

気持ちが後ろ向きになったときにふとこの映画を観たくなります。フリーズした心をリセットするために。

始まりは21歳の誕生日

主人公のティムは、真面目が取り柄の冴えないイギリス人青年。そんな彼は成人を迎えたとき、父親から、「うちの一族の男性にはタイムトラベルの能力が備わっている」と告げられます。

タイムトラベルといっても、自分の過去と現在を行ったり来たりできるだけで、未来に行くことはできません。その設定も中途半端なら、タイムトラベルの方法もかなりアナログです。

暗くて狭い場所に入って、両こぶしを握り締め目を閉じて、自分が戻りたい時間と場所を思い浮かべると、その時点に移動している――なんて、なんだか突っ込みどころが満載ですが、そこはご愛嬌です。

タイムトラベルで時を味方につける

父の突然の告白に戸惑いながらも、ティムはその特殊能力を使ってみます。おっかなびっくり小さなタイムトラベルに挑戦するものの、あちらがうまくいけば、こちらがうまくいかず。

でも、ティムは自分や家族、友人が窮地に陥るたびに、めげずにタイムトラベルを試みます。肩をすくめてこそこそと押し入れに入っていくその姿が情けなくもあり、微笑ましくもあり。

やがて、タイミングを外してばかりだったティムの人生は少しずつ好転し始めます。

主人公役は『ハリー・ポッター』で、赤毛のウィズリー家のイケメン長男を演じたドーナル・グリーソン。内気で気弱で、でも誰よりも誠実で思いやり深い主人公を繊細に演じています。

時は流れ、イギリスの片田舎で家族とひっそり暮らしていた地味な青年は、ロンドンに出て弁護士を目指します。

地道な努力が実を結び、ティムは希望の職を手に入れて、やがて、素晴らしい女性と巡り合います。いつもはにかみ顔のティムとは対照的に、常に前向きで明るくて弾ける笑顔が印象的なメアリー。

ちなみに、この最高に魅力的な女性を演じるのはレイチェル・アクアダムス。笑顔もキュートなら心もキュート。比較的小柄で、日本人体形の彼女の大人かわいいファッションにも注目です。

Will you marry me?

ふたりは互いに惹かれ合い、生涯の伴侶となります。ティムの実家で開かれたふたりの結婚式。

ところが、せっかくのガーデン・パーティは突然の豪雨で台無し。びしょ濡れのまま自宅の居間で開かれた披露宴は司会も来賓のスピーチもハチャメチャ。新郎の父親までタイムトラベルでスピーチをやり直す始末。

でも、この結婚式の場面、ちょっと目を覆いたくなるぐらいのドタバタなのに、なぜか心が温かくなる最高に素敵なシーンなのです。特にティムの父親のスピーチは心に染みます。

この心優しい息子の父親になれたことが僕の誇り

ティムの父親役は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』でジャック・スパロウの宿敵、ディヴィー・ジョーンズを演じたビル・ナイ。

優し気な切れ長の目と渋いハスキーボイス。知的でニヒルでユーモアのセンスも兼ね備えている。

この父親の存在がこのストーリーに深みと厚みを与えています。あれが、顎からタコ足がもじゃもじゃ生えた幽霊船の船長と同一人物だなんて……。とても信じられない。

とにかく、この映画のキャスティングは秀逸です。

過去をやり直して、人生をリセットする

ふたりの子どもにも恵まれ、穏やかで幸せな日々を送りながら、堅実に人生を歩む自信を得たティムの生活から、タイムトラベルの出番は次第になくなっていきます。

そんな矢先、ティムの最愛の妹ケイティが悲劇に見舞われます。純粋なゆえに不器用で、男運にも仕事運にも恵まれず、自暴自棄な日々を送っていた妹をかねてから心配していたティム。

妹の人生をリセットしようと、大胆なタイムトラベルを試みます。

結局、その作戦は失敗に終わります。そして、ティムは思い知るのです。過去を変えることはできても、どうしても変えられないものがあるということを。

たまたまタイムトラベルという特殊な能力を授かったばかりに、却ってジレンマに陥るティム。

昨日をもう一度繰り返す

そんなとき、父が病に冒されていることが判明します。死期を悟った父は、自分の生き方に迷う息子に言葉をかけます。「昨日に遡って、もう一度同じ1日を同じように生きてみなさい」。

それは、同じくタイムトラベルの能力を持つ父親が、人生をかけて体得した幸せに生きるための秘訣でした。

同僚のミスに苛立ち、雑務に追われて食事もろくに取る時間がなく、駆け足で仕事現場に駆けつけなんとか仕事をこなして、通勤電車に揺られて疲れ果てて家に帰り、ベッドにもぐりこんで死んだように眠る。

いいことなんてひとつも見当たらなかった日、ティムは父親の言葉に従って、タイムトラベルでもう一度同じ日をまったく同じように繰り返してみます。そこで、彼は気づきます。まったく同じ日が二度目はまるで違って見えることを。

■心をリセットする

「タイムトラベル」と聞くと、急にファンタジー感が漂いますが、この映画が描く世界は、平凡な人々の何気ない日常。ただ、「何気ない日常」は「何もない日常」とは違います。

悲しんだり、はしゃいだり、失敗したり、素敵な出会いがあったり、失恋をしたり、思いがけない幸運が舞い込んだり、何をやってもうまくいかなかったり。

平凡に見える毎日は、実は大小さまざまな思いがけない出来事でできている。そんな非凡な日常を、人は平凡な人生だと嘆く。

ティムは、ようやく、幸せに生きるための自分なりの秘訣を見つけます。それは、タイムトラベルなどできなくても、いますぐ誰にでもできる、とてもシンプルなことでした。

昨日の失敗に悩んだり、今日の自分が嫌いになったり、明日が来なければいいのにと思ったり。生きることに疲れてしまったときは、この映画を観てみてください。

心をリセットするヒントを教えてくれます。

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桜井 真砂美

早稲田大学卒業後、高校教師を経て翻訳家の道へ。主な訳書:『ファッション・アイコン・インタヴューズ』、『ヴィヴィアン・ウエストウッド自伝』、『ブルックリン・ストリート・スタイル:ファッションにルールなんていらない』、『メンズウ...

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