映画『セザンヌと過ごした時間』感想。芸術の秋におすすめ! 画家セザンヌと小説家ゾラの友情と創造の軌跡
『DRESS』シネマの時間第14回は、芸術の秋にぴったりの映画『セザンヌと過ごした時間』をお送りします。近代画家の父、ポール・セザンヌ没後110年製作。日本の美術好きには馴染みのあるセザンヌですが、その波乱に満ちた生涯をご存知でしょうか? 今回も、アートディレクターの諸戸佑美さんにご紹介いただきます。
こんにちは、アートディレクターの諸戸佑美です。秋の気配を感じる季節になりましたね。
『DRESS』読者の方々は、芸術・美術・アート・美しいものに関心を寄せる人が多いと思います。今回は、芸術の秋特集と銘打って映画『セザンヌと過ごした時間』をPICK UP!
ピカソに「我々の父」、マティスに「絵の神様」と崇拝された近代画家の父ポール・セザンヌ。
りんごを描いた静物画や風景画は、日本でも広く愛されていますが、セザンヌが現在の不動の評価を得たのは亡くなった後のことでした。
太陽の日差しが降り注ぐ南仏プロヴァンス、芸術の都パリを舞台に、不遇の天才画家と不朽の名作「居酒屋」「ナナ」で有名な小説家ゾラとの人生を導く出会いと友情、創造の軌跡。
美術コレクターでもあるダニエル・トンプソン監督が、本物のゾラ邸やセザンヌ邸でも撮影を行い、ドラマチックな史実をもとについに映画化。
ぜひ、お楽しみいただければ幸いです!
■映画『セザンヌと過ごした時間』あらすじ――南仏プロヴァンス〜芸術の都パリ。画家セザンヌと小説家ゾラ、友情と創造の実話!
少年時代に出会ったセザンヌとゾラの絆は、境遇こそ違いますが共に成長し、芸術家になる夢で結ばれていました。
初めての出会いは、1852年南仏エクス・アン・プロヴァンスでの中学校時代。
貧しいよそ者として学校でいじめられていたゾラをセザンヌが助け、ゾラがお礼にとひと籠のりんごを贈ったのがきっかけでした。
セザンヌは裕福な銀行家の息子、パリ生まれのゾラは、イタリア人技術者だった父を幼い頃に亡くし、母とふたり暮らしという境遇でした。
その後、セザンヌはりんごの画家とも言われるほど生涯で多くの静物画を制作。「りんごひとつでパリを驚かせたい」としばしば口にしていたのは有名で、男同士の友情に心温まります。
仲良くなった彼らが南仏の陽光の中で野山を戯れる光景は、その後の波乱に満ちた人生への忘れ得ぬ懐かしい思い出として印象的です。
詩人を目指してひと足先にパリに出たゾラは、小説家としてのデビューを果たします。
一方、セザンヌも画家を志しパリで絵を描き始め、アカデミーのサロンに応募するのですが、落選ばかりの創作の日々。
巨匠にもこんな時期があったのかと興味深いです。
その頃、セザンヌはゾラとともに、ピサロやモネ、ルノワールなどの新世代の画家たちと交流するようになり、その様子が見事に再現され、美術ファンにとっては見どころのひとつでしょう。
やがてゾラは、1877年に出版した「居酒屋」が大ベストセラーとなり栄光の階段を上り、セザンヌは父親からの仕送りも断たれ、転落していきます。
何もかもが正反対の状況になってしまったふたり。
当然のようにギクシャクした関係となるのですが、ひたすら孤独に描き続けるセザンヌを支えたのは、ゾラの心のこもった手紙や援助でした。
しかし、1886年ある画家の悲劇を描いたゾラの新作小説「制作」が発表され、セザンヌとゾラの友情に大きな変化をもたらすことに……。
晩年、いかにセザンヌが近代画家の父と呼ばれるようになっていくのか、最後まで見逃せません!
■フランス実力派俳優ギヨーム・ガリエンヌとギヨーム・カネの熱き競演!
セザンヌには、自伝的な舞台を脚色・監督し2役で主演した『不機嫌なママにメルシィ!』がセザール賞作品賞を含む主要5部門に輝き、今やフランスで絶大な人気を誇る俳優ギヨーム・ガリエンヌが抜擢。
ゾラには、『君のいないサマー・デイズ』『戦場のアリア』のギヨーム・カネが、落ち着いた小説家ゾラの人物像を深みをもって繊細に演じ、フランス実力派俳優の熱き競演に心躍ります。
芸術家の喜びや苦悩をくっきりと浮かび上がらせ、セザンヌの絵画にも多く登場するサント・ヴィクトワール山などの南仏プロヴァンスの美しい風景、そしてパリに集う印象派の画家たちを見事に映像に再現して素晴しいです!
観ているだけで、印象派の絵の中に惹き込まれるような感覚になれる、アート映画の決定版ともいえる作品です。
嗚呼、フランス旅行に行きたくなりますね!
■近代画家の父、ポール・セザンヌ(1839-1906)について
セザンヌは、モネ、ルノワールら同世代の画家から評価されただけでなく、20世紀を代表するピカソやマティスらに多大な影響を与えた画家として近代絵画の父と呼ばれています。
セザンヌが影響を与えた芸術運動で最も有名なものがキュビスムでしょう。
セザンヌの「自然を円筒、球、円錐によって扱う」「多視点」と呼ばれる表現方法は、ピカソがキュビスムのような斬新な表現に取り組むきっかけとなりました。
ピカソは、セザンヌのことを「彼は私たち皆の父親のようなものでした」と語っています。
セザンヌは、1895年、50歳代に入ってから開催した個展でようやく評価されるようになり、次世代の画家たちからも支持を得るようになりました。
美術批評家のタデ・ナタンソンに「りんごの画家」と称賛され、セザンヌが描くりんごは心を奪われるようなかたちと色彩を持った美しいりんごだと評されました。
彼の芸術が、多くの画家の着想の源となり、新たな絵画の表現の出発点となったことから、セザンヌは「近代絵画の父」と呼ばれるようになったのです。
■ユーラシア旅行社にて映画公開記念ツアーも企画されています!
2018年4月4日(水)発 「フランス周遊、珠玉の世界遺産とプロヴァンスの村々へ 13日間」
ユーラシア旅行社にて2018年春出発!映画公開記念ツアーの企画もございます!
セザンヌの生まれ故郷エクス=アン=プロヴァンスやパリへ。
セザンヌの終の住処となったエクサンのアトリエも見学します。
南仏から大西洋岸、北部、首都パリ、地方の村々までフランスの魅力を堪能する旅、素敵ですね。
最小催行人員 13名(最大20名)
詳細は下記のサイトから資料をご請求ください。
(国名のところに「WFY3希望(セザンヌの映画のサイトを見て)」とご記入頂ければ幸いです)
映画公開記念ツアー案内 ホームページ
http://www.eurasia.co.jp/travel/tour/WFY3
【旅行のお問い合わせ】
株式会社ユーラシア旅行社
ヨーロッパ担当
03-3265-1640(平日10時~18時)
http://www.eurasia.co.jp/
■映画『セザンヌと過ごした時間』作品紹介
9月2日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
近代絵画の父ポール・セザンヌ没後110年製作
公式ホームページ http://www.cetera.co.jp/cezanne/
©2016 – G FILMS –PATHE – ORANGE STUDIO – FRANCE 2 CINEMA – UMEDIA – ALTER FILMS
原題:Cezanne et moi
監督:ダニエル・トンプソン
製作:アルベール・コスキ
脚本:ダニエル・トンプソン
撮影:ジャン=マリー・ドリュージュ
編集:シルビ・ランドラ
衣装:カトリーヌ。ルテリエ
音楽:エリック・ヌブー
製作国:フランス
製作年:2016年
映倫区分:G
配給:フランス
上映時間:114分
■映画『セザンヌと過ごした時間』キャスト
ギョーム・ガリエンヌ=ポール・セザンヌ
ギョーム・カネ=エミール・ゾラ
アリス・ポル=アレクサンドリーヌ・ゾラ
テポラ・フランソワ=オルタンス・セザンヌ
フレイア・メーバー=ジャンヌ
セピーヌ・アゼマ=アンヌ・エリザベート・セザンヌ
イザベル・カンディエ=エミリー・ゾラ
ローラン・ストーケル=アンブロワーズ・ヴォラール
【シネマの時間】
アートディレクション・編集・絵・文=諸戸佑美
©︎YUMIMOROTO
本や広告のアートディレクション/デザイン/編集/取材執筆/イラストレーションなど多方面に活躍。