既婚男性が不倫する理由は性欲だけじゃない。既婚者が抱く飢餓感とは 2/2
■「男性として必要とされたい寂しさ」が不倫の理由に
そんな男性の不倫相手は、仕事で取引のある会社の女性。長年顔を合わせてきたので気心も知れていて、普段から気軽に缶コーヒーを差し入れし合うような間柄でした。
ですが、個人的な連絡先を交換する距離感ではなく、あくまで仕事としての付き合いを続けてきたと男性は言います。食事に誘いたくなるような男女の雰囲気は皆無で、だからこそ「どうしてこうなったのかわからない」のも、彼の悩みです。
関係が動いたきっかけは、彼女の方から「元気ないね? どうかした?」と言葉をかけてくれたから。妻のことで憔悴していた彼は、つい「気が緩んでしまって」彼女に事情を打ち明けたそうです。
そんな話なら、仕事が終わってからゆっくり聞きたい、と彼女が提案してくれて、初めてふたりは食事に行く時間を持ちます。「後ろめたくなかった?」と尋ねると、「それより誰かに聞いてほしかった」と疲れた顔で男性は答えました。
初めて、他人に家庭の事情を話したとき、男性は誰かに相談することを思いつかなかった自分に気づいたと言います。家庭で抱えるストレスをどう表現すれば良いか考えるうちに、寂しかった自分を自覚し、妻をなじる言葉も、これからどうすれば良いかわからない苦しみも、どんどん口にしていました。
彼女の方は、「大変だったね」と言う以外は、黙って聞いてくれていたそうです。特にアドバイスをするようなこともなく、それがかえって男性の気持ちを楽にしました。
この時間が、男性の心を解放する引き金になったのではないかと思います。「こうすればいいんじゃない?」とか「離婚しちゃえば」など、安易なことを言わない彼女への信頼感が、彼の「男として必要とされたい」欲望を刺激しました。
「話を聞いてくれたお礼に」彼女を次の食事に誘い、またふたりで過ごし、気がつけば週に一度は約束を交わすような関心を彼は彼女に寄せていました。
彼が抱えていた飢餓感を満たしてくれる相手が、たまたま彼女だった。それが、男性の言う不倫のきっかけです。
■いつか決断を迫られる日まで
ホテルに行くまで2カ月の間、男性は彼女とそういう関係にはならないように自制していたそうです。
抱きたいと感じる瞬間があっても、それは彼女に失礼だからと、必死に目をそらしてきた。でも、彼女も同じ気持ちだとわかったときは、もう止められなかった。自分が既婚者であることは十分わかっていたけど、彼女に甘えてしまった。飢餓感は、彼女を抱くことで満たされた。
一度肉体関係を結んでしまえば、あとはとどまる術を知らずに、彼女との時間にどんどんはまり込んでしまう。妻への苦しみもそのときは紛れるし、それより彼女への愛しさを感じることで幸せな気持ちになる。忘れていた恋愛感情が、男性の衝動を突き動かしていました。
ですが「これからどうするの? 彼女と続けるの?」と尋ねると、男性は首を振って「彼女は独身だし、いつまでも不倫なんかできない」ときっぱり答えました。
どれだけ一緒にいても、自分が離婚しない限り、彼女と本当の意味で幸せになれないことは、自分自身が一番よくわかっています。その決断ができない自分のずるさが、今度は男性にとって新しい悩みとなりました。
いつか決断を迫られる日まで、彼女と過ごしていたい。家庭では満たされない飢餓感をまた目の当たりにすることへの恐怖が、彼女との別れをためらわせています。
■関係の放置は無責任であると気づくこと
不倫のきっかけは人それぞれですが、家庭では満たされない寂しさを抱える既婚男性の場合、相手との別れは簡単ではありません。再び家庭に、妻のもとに戻る決意は、それが正しい道だとわかっていても、また苦しみをひとりで背負うことになるからです。
男性の場合も、彼女のために別れなければいけないとわかっていながら、妻との関係をどうすれば良いか考えるのが嫌で逃げている状態。本当は、まず男性がしなければいけないのは、「今後の結婚生活をどうするか、彼女の実家に乗り込んでいってでも妻と話し合う」ことです。
時間が経てば経つほど、別れの痛みは彼女を傷つけるでしょう。自分の都合だけで関係を続けてしまうのは、彼女にとって無責任であることに気がつかなければいけません。男性が、結婚生活にも、不倫相手の彼女との関係にも、きちんと向き合う勇気を持てるように願ってやみません。