受動喫煙防止、どう考える?【佐藤あつこ】
受動喫煙防止に関する議論が盛り上がっている昨今。佐藤あつこ議員の連載では今回受動喫煙防止をテーマに取り上げます。老若男女さまざまな人から佐藤議員のもとへ寄せられた意見も見ながら、受動喫煙防止を推進すべきか、慎重になるべきか、私たちも自分ごととして考えてみませんか?
受動喫煙の定義は、「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」。
この受動喫煙について定めた法律が2002年に制定された「健康増進法」。
第25条には「多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」と努力義務が規定されています。
今年、「健康増進法」の受動喫煙に関する規定が、「努力義務」から「原則として全面禁煙であるべき」との改正案が国会に提出される見込みでしたが、報道されたように今国会での提出は見送られました。
今後に、受動喫煙防止を推進すべきか、慎重になるべきか、私のもとにもたくさんのお声が寄せられています。
■受動喫煙防止について寄せられた声
「受動喫煙を避けたい人も、タバコを吸いたい人も共存できるように、飲食店に喫煙可能か完全禁煙か、分煙か、などを詳しく記載したマップなりアプリなどが普及しないかと願っている」(30代男性)
「ビル毎に屋内一律禁煙とするのは、オーナーの自由ですが、国や自治体が法の下に強制するとなると、国民や企業の選択権を不当に簒奪すると考えられないか、懸念しています」(50代男性)
「受動喫煙が健康被害につながるのならば、アイコスのような、煙の出ないタバコを普及させればいいのではないか?」(60代男性)
「乳幼児がいますので、分煙であっても煙が気になる飲食店が多いのが残念です。煙がない快適なお店が少なく、家族で外食する機会が減ってしまいました」(30代女性)
「受動喫煙によって深刻な健康被害があるならば、受動喫煙したくない人の権利も守らなくてはなりませんが、健康被害があることを知った上で、それでもタバコを吸いたいという方は、その方たちの自由も担保して差し上げるべきだと思います」(40代女性)
このように、実に様々な考え方の方がいらっしゃいます。
日本以外の状況、妊婦さんや赤ちゃんに受動喫煙が与える影響を見てみましょう。
■世界の喫煙規制状況
図出典:村松弘康「オリンピックと受動喫煙防止法」(2017年1月)
欧米諸国およびタイ、ベトナム、カンボジア、シンガポール、マレーシア、台湾、インドなど、約50カ国において、飲食店やバーも含め「屋内の公共の場所」が全面禁煙。
(参考:「オリンピック開催都市の受動喫煙防止に関する法律等」)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kensui/kitsuen/judoukitsuenboushitaisaku_kentoukai/1st/pdf/sankou4olympic.pdf
また、国立がん研究センターによると、受動喫煙が健康に与えるリスクが非常に大きいとされています。
受動喫煙をした人は、しなかった人と比べて、肺ガンのリスクが1.3倍に増加するという調査結果もあるそうです(国立がん研究センター 2016年)。
同センターは、受動喫煙における日本人を対象とした科学的根拠に基づく肺ガンのリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」に、同センターによるガイドライン「日本人のためのガン予防法」でも、受動喫煙は「できるだけ避ける」から、「避ける」に修正しました(2016年8月)。
■ママと子どもの受動喫煙リスク
ちなみに、妊婦さんが受動喫煙をすると、流産のリスクは約2倍、早産は約1.5倍になるそうです。
受動喫煙による子どもの健康被害は、乳幼児突然死症候群、呼吸器症状、気管支炎、肺炎、中耳炎など。
なかでも乳幼児突然死症候群は、父親と母親が喫煙者である場合は、リスクが10倍にもなるといわれています。
成人になっても胎児の頃の受動喫煙の影響が続き、肥満、糖尿病、メタボリックシンドロームの因子になり得ると考えられています。
(参考:ファイザー製薬「すぐ禁煙JP. 受動喫煙が子どもに及ぼす健康被害」)
■受動喫煙から追加的に発生した医療費は3000億円超
今年5月、受動喫煙で病気になったことで追加的にかかった医療費が年3000億円を超える、という推計を厚生労働省研究班がまとめました。
肺ガン・約340億円、虚血性心疾患・約960億円、脳卒中・約1900億円、合計すると約3200億円に上り、患者数はそれぞれ約1万1000人、約10万1000人、約13万人です。
受動喫煙は、2020東京オリンピックパラリンピックに向かって、国の方向性が問われる重要な政策です。
前出の方々のご意見をご紹介しましたが、皆様のお考えはいかがですか。
たばこを吸う自由と、受動喫煙の防止の関係性について考える機会になることを願います。
※図は許可を取って掲載させていただいています。