全国の消費生活センター等には、エステティックサロン(以下、「エステサロン」とする。) 等でHIFU ハイフ という「高密度焦点式超音波」や、それに類する超音波技術を応用したという機器(以 下、「HIFU機器」とする。)で施術を受けたところ、「顔面が急に熱くなり痛みが走った」や「熱 傷になり、治るまでに半年かかると言われた」、「神経の一部を損傷した」等で治療に数カ月を 要する危害を負ったといった相談が寄せられています。
HIFU機器は、人体の表面を傷つけずに、 超音波を体内の特定部位に集中させることで加熱し、熱変性を生じさせることができることから、 医療で前立腺の治療等に用いられているものですが、エステサロン等でもホームページや施術前 の説明でHIFU機器を用いて「脂肪細胞を溶解させる」、「肌の土台である筋膜に直接ダメージを 与える」等、皮下組織に直接影響を与えることで小顔、痩身や美顔等の施術ができるとうたって います。
その一方で、リスクについては説明がなく、「脂肪細胞を安全に破壊できる」等、消費 者に安全な施術であると誤認させているエステサロン等もみられます。このような行為を医師資 格のないエステティシャン等が行うことは禁じられています。 そこで、エステサロン等でのHIFU機器を用いた施術(以下、「HIFU施術」とする。)に関する トラブルについて調査、分析を行い、消費者被害の未然防止と拡大防止のために消費者に注意を 呼び掛けるとともに、関係機関・団体へ要望及び情報提供を行います。
広告でわかる! 信頼できるエステやクリニックの選び方
フリーペーパーなどで、エステやリラクゼーションサロン、美容クリニック、美容外科などの広告を見かけることがあるかと思います。規制の多いこれらの広告を詳しく見ていくと、良心的かどうかがわかります。安易に選んでしまうと後で「大変なことになる」という、背筋が凍るような事例とともにご紹介します。
■医療における強い広告規制
美容クリニックの広告は、エステほど
「○○が××に」とか「これを飲めば痩せます」
ということが書かれていません。
それは、医療には非常に厳しい広告の規制があるからです。
*ここでいう「広告」とは、新聞やチラシ、フリーペーパー、テレビCMなど不特定多数の人の目に、一方的に触れる情報のことを指します。
広告は、内容が少ないほど良心的
他のクリニックより優れているように感じられる内容は、広告では表記してはいけないという決まりがあります。例えば、
「○○の実績で日本一番」
「●●の治療を得意にしています。是非当院にお任せください」
このような表現を広告に書くことはNGとされています。一般的に誰でもわかるような
・院長名
・診療科・専門医
・診療時間
・電話番号
・ホームページのアドレス
くらいのことしか書くことができません。また、クリニックの電話番号を、覚えやすいように語呂合わせで振り仮名を振ることもNGとされています。
例)○○○○ー1112(いいひふ)
と書きたくても、書けないのが実情。
何も情報がなくて、つまらない広告ですが、実はこの規制を、正直に順守しているクリニックは、院長が誠実な考えを持った、良心的なクリニックだといえます。
このような広告のクリニックを見つけたら、騙されたりする可能性が低いので、次のステップに進みましょう。
美容クリニックの詳しい情報はWeb上なら掲載可能
次のステップは、そのクリニックのホームページを見ることです。
クリニックの治療内容や得意分野などは、広告には書くことができなくても、個々のホームページには掲載することができます。
この違いを説明すると
広告 = 一方的に目に飛び込んでくるもの
ホームページ = 自分の意思で情報を取得しにきている
ということです。
例えば、テレビCMなどはテレビ番組を見ているときに、こんな広告が見たいという意思とは関係なく一方的に表示されるもの。
それに対して、ホームページの情報は、検索した本人が自分の意志で内容を見にきているわけですから、お店の戸を自分で開いて中に入ったことになります。
ご自身の意思で見にきたところには、さまざまな情報を提供してよいという解釈です。
ですから、クリニックの広告を見つけたときは、広告だけで良心的なクリニックかどうかを判断し、でホームページを見に行ってご自身にあった治療をやっているかどうかの情報を手に入れる2段階の情報収集によって、信頼度が高められるといえます。
■医療もどきに注意! エステ・リラクゼーションサロンを取り締まる役所がない
一方、エステやリラクゼーションサロンは広告などを厳しく規制している部署がありません。
見張ったり、注意をする部門がなく、監視されてないために過大広告になりがちです。
そのため、以下の3つのことが広告に書かれているサロンは要注意です。
1)「○○に効く」と効能効果を書いている
2)「○○施術一番」と根拠なく書いてある
3)HIFU(ハイフ:超音波)ケアを強く推している
特に注意してほしい点が、3)のHIFUを押しているサロンです。
もともと、このHIFUという施術は、顔のたるみを解消するために使用されるものですが、非常に強く働くため顔面神経麻痺ややけどのリスクがあります。
国民生活センターでも、下記のようにエステサロンでHIFUを受けないよう、注意喚起がされています。
もともとHIFU(ハイフ)は、治療用の医療機器として開発された機械で、効果が良い分副作用も生じる可能性も高いケアです。
このような施術を、ちゃんとした知識もなく行っているサロンは非常に危険と言えます。
同様に、リラクゼーションよりも効果を出すことを誇張しているサロンや、クリニックと同等のケアができるような書き方をしているサロンには近づかない方が安全です。
医療もサロンも安全面重視のお店が良い
上記のHIFUを行っているサロンなどは、はっきり言って安全性に対する意識が非常に低いです。
999人に安全にケアできたとして、1人やけどを起こしたり神経麻痺を起こしたとき。その方にどのように対応すればよいのか、そして、その責任を持てるのか。
サロンのオーナーがこの危険性を理解していたら、怖くてとてもサロンで医療もどきの施術をしようとは思えませんよ。
■サロン施術で副作用が起きたら泣き寝入りの可能性も……
サロンで受けたケアによって、やけどやかぶれ、傷、しみ、傷跡などができたら……そんなときは病院に行けば良いと思っていたら大間違い!
症状によっては、病院側で診療拒否の可能性だってあります。
「診療拒否!?」とびっくりされる方もいるかもしれませんが、保険診療であれば我々医師には基本的に、「応召義務(おうしょうぎむ)」があります。「応召義務」とは、困って受診した人に適切な医療を提供しなければならないという決まり事です。
そのため、やけどや傷の治療は受けてもらえる可能性が大きいです。一方、自由診療には応召義務がありません。
やけどの治療後に
・傷跡が残った
・しみが残った
・引きつれが残った
こういった場合に、よりきれいにする治療を行うことは、医師の側にとって義務ではありませんから、エステサロンや、他のクリニックで行ったことに対するトラブルのケアをあえて進んでやる医師はかなり少数派なのです。
安易に、サロンの施術を受けて副作用が起こってもどこの病院でも対応してもらえず、途方に暮れる人が巷ではあふれているのが現状です。
無責任なサロン・クリニックで治療を受けた後のトラブル例
私の経験した例を、3つほどご紹介しますね。
症例1:50代女性・ハイドロキシアパタイト注入(ヒアルロン酸みたいなもの)後の3年近くに渡る顔の腫れ、その後続く顔の皮膚の変形
ある美容外科クリニックでハイドロキシアパタイトを頬に注入後、顔の腫れやむくみ、目が開かない日もあるくらい、顔がパンパンになることもあったそうです。
当然、施術を受けた美容外科クリニックに相談するも、「じんましんでも出ているのでは?」「ハイドロキシアパタイトで腫れるという報告はないから関係ない」と塩対応。
困って、大学病院皮膚科を受診すると、MIRなどでの検査を行い、最終的には、頬の内側にハイドロキシアパタイトが残っている状態。という診断で、それに対する治療は「自分で受けた美容なので、責任は自分にある、治療方法は不明」と。
そこで困って当院を受診されたわけですが、さすがに私も経験がない副作用で、日本の輸入代理店では情報がなかったので、製造元の海外のメーカーにも情報提供を依頼することとなりました。
幸いにして、治療方法が見つかり薬の内服で1年以上時間をかけて腫れを抑えることに成功しましたが、残念ながらその後に皮膚が固くなって凸凹するという後遺症が残りました。
症例2:30代女性 ヒアルロン酸注入後 半年後の突然の顔の腫れ
ご自身が務めている歯科クリニックで、歯科医師がヒアルロン酸注入の勉強の際にモデルとして手伝ったとのことです。
注入後半年経過して突然顔が腫れて、当然注入をした自分の上司である歯科医師に相談したのですが、歯科医師であるため皮膚科的知識はありません。
どこかの皮膚科で相談してきてと、何とも無責任な発言を受けて当院にいらっしゃいました。
症例1と同様の治療で症状は改善しましたが、自分の施術に責任を持たない、あるいは副作用が出たときに対応できないのに施術を行うとは、本当にひどい話です。
症例3:20代女性 エステサロンで痩身モニター、おなかにやけどを負って、手のひら大の大きなシミが残った
エステサロンで、痩身モニターを格安で受けた際におなかに手のひら大のやけどを負いました。
やけど自体は、近くの皮膚科で治療を受けて治りましたが、1年経ってもくっきり茶色くシミが残ってしまいました。そのシミの治療を相談に当院にいらっしゃいました。
経過を聞くと、「やけどを負わせたエステサロンは一切の損害賠償を払う様子はない」と、ご本人はかなり、怒っていらっしゃいました。
こういうケースでは、残念ながら当院でお手伝いすることはできません。
トラブルで揉めているところに、さらに治療を行ってトラブルに巻き込まれるリスクを、我々も避けなければならないからです。
最終的に、リスクや費用的負担を負うのは、施術を受けたご自身です。
きちんとしたところで施術を受けることがいかに大事か、伝わったでしょうか。
■消費者に厳しい国の方針転換
2016年、東京のとある大学病院(A大学病院とします)の治療に対して、国が支払いを拒否した例があります。
これまでこのA大学病院は、技術不十分なクリニックで美容治療を受けた後に副作用や変形などで困っている人たちの、再建(傷をきれいに治したり、異物を取り除いたり)手術などを行っていました。
・10年前の鼻を高くするために使ったプロテーゼによる鼻の変形を治す手術
・ヒアルロン酸注入後に失明した、あるいは鼻の皮膚が広い範囲で壊死(ただれて腐ってしまった)を再建する手術
・17年前の豊胸術を受けた部位が、感染を起こしてその感染による意識不明、ICU(集中治療室)での治療
など。これらは、今まで保険診療で認められていました。
保険診療では、病院で本人が支払うのは3割、国が後から病院に支払う金額が7割。高額医療費の免除などもあるので、治療費はご本人の負担は多くても数万円でした。
ところが、2016年に突然「保険診療ではない。支払えません」と国が方針転換をしてきたのです。
今までは、治療費のほとんどを国が負担してくれていたのに、今後は100%自分で治療費を払わなければならなくなったのです!
例えば、鼻の骨の変形を切って軟骨移植を行った場合、
手術費用だけで 22万円
全身麻酔 10万円
入院費用、薬代、その他もろもろを合わせると、どんなに安く見積もっても50万円以上の費用がかかるわけです。
保険診療が適応になると(高額医療費の戻りもあって、月収50万円以下の場合)4万4400円の支払いで済みます。
であるのに対して、保険診療が認められず、全額自費で50万円超の支払いになると一大事です。
安易に数万円で鼻を高くする美容医療を受けた結果が、50万円以上の治療費と目立つ傷跡になる可能性だってあるということです。
現在のところ、このような国の支払い拒否は東京での数例でしかないですが、おそらく今後全国で同様の対応になると思われます。
安易に、安いサロン、クリニックでケアや治療を受けたことによって、命の危険や大きく残る傷跡そして莫大な医療費負担を数年後に負うリスク、ここまで考えた上で美容医療をどこのクリニックで受けるかを考えなければならない時代になってきました。
最終的に負担を負うのは、その治療を受けたご自身になることをしっかり認識して、安全性をきちんと重視しているところ、将来に渡っての経過を知っているDr.の元で治療やケアを受けることが何よりも大事です。
自分の身を自分で守るためにも、今回の「信頼できるクリニックの選び方」を実践してみてください。
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