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超音波検査より詳しい「羊水染色体検査」でわかることは?検査方法、メリット、リスクも知って

羊水染色体検査を通じてわかること、検査の方法、メリット、リスクなどを山中智哉医師が解説します。さらに、1990年代以降行われるようになった、母体血清マーカーテストについても後半で説明します。

超音波検査より詳しい「羊水染色体検査」でわかることは?検査方法、メリット、リスクも知って

前回のコラム「出生前診断と着床前診断の違いや問題点は?診断技術の進化から考える」では、超音波検査を行うことで、胎児の性別や形態的な異常など、多くの情報を得られるようになったとお話ししました。

しかし、現在ではあたりまえのように、超音波検査でわかること以上の情報、つまり「染色体レベルでの異常はないか」ということが問われるようになりました。

■羊水染色体検査とは

そこで、考え出された方法が「羊水染色体検査」や「絨毛染色体検査」といった、染色体レベルでの検査でした。

羊水染色体検査は、妊婦さんのお腹の上から針を刺して少量(20ml程度)の羊水を吸引し、その中の胎児由来の細胞から、胎児の染色体検査をする方法です。また、絨毛染色体検査は子宮の入り口から絨毛組織を採取し、同様に染色体検査をします。

どちらも保険適応外検査になりますので、費用はクリニックによって異なりますが、およそ10~15万円前後となります。

ところで、出生前診断が行われる上で、大切なことは何でしょうか。それには3つのことが挙げられます。

1つ目は「より確実であること」、2つ目は「より早い時期に検査できること」、そして3つ目は「より安全であること」が挙げられます。

診断のためのさまざまな技術は、この3項目をより高いレベルで満たせるよう発展してきました。
 
超音波検査は安全性という点では優れていますが、胎児がある程度の大きさにならないと見えてこないケースがあることや、微細な異常などは見つけられないこともあるように、
確実性という点では、いくらか劣る部分があるといえます。

■羊水染色体検査のメリットとリスク

それでは羊水染色体検査はどうでしょうか。
羊水を採取する際に穿刺(刺す)針の先端は、子宮内の羊水の空間まで到達するため、胎児の損傷や不慮の出血などのリスクを伴います。そういった施術の合併症による流産の確率は約0.3%といわれます。

したがって羊水染色体検査は、羊水の空間が広くなればなるほど安全に行なうことができます。

羊水検査の歴史は意外と古く、1930~40年頃から行われていました。その頃は超音波検査もなく、また細胞培養や染色体解析の技術も未発達だったため、染色体検査ではなく、羊水が十分にある妊娠後期に、胎児の貧血の確認目的で行なわれていました。

現在、羊水染色体検査は妊娠16週以降という妊娠中期に行なわれています(*)が、その時期でも安全に穿刺できるようになったのは、超音波検査が導入された1980年以降。

*染色体検査の結果、異常が見つかった場合の中絶の是非については、また改めてお話ししたいと思いますが、現在の日本の法律では妊娠22週以降の中絶は認められていないため、染色体検査の結果が出る2~3週間の期間も考慮して、検査の時期を決める必要があります。

このように、安全性という面からみると、いくらかリスクのある羊水染色体検査ですが、検査の精度は非常に高く、微細な異常を除けば、その診断精度は100%とされています。

■母体血清マーカーテストとは

このように、羊水や絨毛から胎児由来の細胞を採取して染色体検査を行なう方法とは別に、さらにもうひとつの方法が、1990年代に行なわれるようになりました。

それが、「母体血清マーカーテスト(トリプルマーカーテスト、クアトロテスト)」です。
この検査は、妊娠中の母体血に特異的に上昇するホルモンやタンパクを測定し、21トリソミー(ダウン症)など主要な染色体異常が発生している可能性を、確率的に算出する検査です。この検査も羊水検査と同様に保険適応外検査になりますが、およそ1~2万円程度で、費用的な負担は羊水検査よりも少なくなります。

母体の血液だけで診断するため、胎児のリスクがゼロということが最大のメリットになりますが、一方で結果が確率で出るため、誰が受けても一定の確率になることや、そのことによって却って妊婦さんの不安をあおってしまうこともあるなど、その不確実さによるデメリットもあります。

こうして振り返ってみると、今から約20年前、私が産婦人科医になった1998年は、胎児診断のためのさまざまな検査がちょうど出揃っていた時期ともいえます。そして複数の検査を組み合わせながら、胎児の状態をより正確に把握できるよう努めていました。

しかし、そこから約10年以上、2010年に入るまでは、染色体レベルでの診断方法に飛躍的な変化を与える検査は生み出されませんでした。

次回は「新型出生前診断」についてお話しする予定です。
2011年にアメリカでNIPT(non-invasive prenatal genetic testing、無侵襲性出生前遺伝子学的検査)が開発されました。日本には2013年に導入されましたが、「新型」と名づけられるほどに、周産期医療に大きなインパクトを与える検査でした。

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山中 智哉

医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医 現在、東京都内のクリニックにて、体外受精を中心とした不妊治療を専門に診療を行なっています。 不妊治療は「ご夫婦の妊娠をサポートする」ことがその課題となりますが、...

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