ランジェリースタイリストだからこそ出会えたお客様とのストーリー
販売員時代になんとなく抱えていた違和感を、今は感じることなくお客様と向かい合える……。堀部優李さんがランジェリースタイリストとしての経験を通じて、お客様一人ひとりの心に寄り添いながら、最適なランジェリーを提案する喜びと挑戦を綴ったリアルなストーリーをご紹介します。
目次
ランジェリー販売員時代の大切な5年間
※ 画像はイメージです。
私は、ランジェリースタイリストになる前、大手メーカーでランジェリーの販売員をしていました。販売員になったのは、結婚、引越しを機に「何か好きなものに関わりたいな」という気持ちから。
ランジェリーに囲まれ、たくさんのお客様とお話しし、ランジェリーをご提案をする毎日はかけがえのないものでした。在籍していた店舗は、旗艦店ということもあり、比較的お客様の来店も多く、毎日忙しく充実した日々だったと思います。
お客様のご要望を叶える仕事が心底、好き
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ただ「ランジェリーが好き!」という気持ちで飛び込んだ仕事でしたが、さまざまなお客様と出会い、自らも知識がついたことで、“”プロとして下着に接する”ということが身についた日々でした。
そして何より、お客様のご要望を伺い、それを叶えるランジェリーをご提案する、接客という仕事が心底好きなんだと気づいた5年間でもありました。
納得いかないことも……販売員のもどかしさ
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しかしそれと同時に、販売員は、“自社ブランドのランジェリーを売る”ことがメインであり、それ以上でも以下でもないと無力感を感じる瞬間も多くあったのも事実です。
このお客様は◯◯ブランドのランジェリーのほうがお体に合うだろうな、お好みに合うだろうなと思っても、他のお客様もいらっしゃる店内ではお伝えしにくく……。試着室の中や、店の端に移動して、こっそりお話しするというようなことも多々ありました。
合わないものを無理に売ることはないものの、もどかしさを感じた出来事としてよく覚えています。
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また、トランスジェンダー(当時はそのような言葉も浸透しておらず「女装した男性」という表現をしていました)の方が来店されたら、すぐに接客につき、ご要望を叶え、いち早く退店していただくよう言われていました。他のお客様のご迷惑にならないように、という説明を受けていましたが、私はとにかくこの決めごとに納得がいかなかったのです。
また、この対応はトランスジェンダーの方にだけでなく、長時間滞在されるお客様などにも同様で、私にとってはとても苦しいものでした。
ランジェリーを楽しみたい気持ちがある方、販売員とたくさん話しながら、時間をかけてランジェリーを選びたい方、どんな方でも、ご本人が納得するまで相談し、本当に欲しい1着を見つけるべきだと思っていたからです。
経験は宝物
このように、限られた時間の中で多くのお客様対応をしなければいけない現実と、私の個人的な思いに差を感じることもありましたが、販売員時代の5年間は宝物です。
もやっとする思いを抱えながらも、かけがえのない出会いもあった販売員という仕事。いいことも悪いことも、たくさんありました。一言では言い表せませんが、本当にいい思い出です。
ランジェリースタイリストと販売員の違い
さて、その後、ランジェリースタイリストとなるのですが、販売員との違いはやはり自由であること。どこにも所属していないので、お客様に本当に合うランジェリーをご提案できますし、ご提案自体が目的、というところも大きく異なります。販売員は、ランジェリーを売るのが仕事ですが(表現が直接的すぎるかもしれませんが)、ランジェリースタイリストは、売ることがメインではありません。
そして何より、お客様のご要望に全力で応えることができます。
販売員時代にもどかしく感じていた、多くの目線や時間の制約。それらがなく、全身全霊でお客様のご要望を伺い、できることは全てする! これが叶っている今、とても自由で楽しく、やりがいを感じています。
そこで今回は、そんなランジェリースタイリストになったからこそ出会えたお客様を3名ご紹介します。
お客様とのストーリー
筆者 カウンセリングの様子
離島で暮らしているためランジェリーのお買い物に不便を感じている方や、ランジェリーを手にすることに不自由さを感じておられたトランスジェンダーの方、そして夫婦間コミュニケーションのひとつとしてランジェリーを捉えてくださったおふたり。
どの方とのセッションも、私にとって思い出深い大切なストーリーとなりました。
諦めずにランジェリーを楽しみたい!【Aさんの場合】
ひとり目は、離島に暮らすAさん。
島にはランジェリーショップが1店舗しかなく、販売員さんもフィッティングは心許ない。そんな理由から、普段はネットで購入しているそう。ネットでのお買い物は、サイズや形がしっくりくるものに出会いにくい……とご相談してくださいました。
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Aさんにそもそも合う形はどのようなものなのか、またそれを見極めるコツ、おすすめのアイテムなどをご提案しました。
これは、オンラインで相談できるという、ランジェリースタイリストの強みややりがいを感じた体験です。おそらく販売員のときには出会えなかったであろうお客様として、とても印象に残っています。
女性らしく生きたい……【Bさんの場合】
ふたり目は、トランスジェンダーのBさん。
体は男性、心は女性のBさん。「女性らしく生きたいんです」とご連絡をくださいました。
普段の生活では自分らしさを出せず、休日に女性の服を着たり、ランジェリーを着けることで自我を保っているとのこと。そんな心の内を長文で送ってくださり、カウンセリングを受けて良いですか? と話してくださいました。
販売員時代、満足にご提案ができず悔しい思いをしていたことを思い出したこともあり、Bさんのカウンセリングには一層熱が入っていたように思います。カウンセリングが終わり、カルテをお送りした晩、感謝のメッセージをいただくことができました。
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胸が熱くなり、心の底から、ランジェリースタイリストになって良かったと思った瞬間でした。
夫婦でずっと仲良く暮らしたい【Cさんの場合】
おふたりでカウンセリングを受けてくださったCさんご夫婦。
もともと、おひとりのカウンセリングとランジェリースタイリングだったのですが、途中から“夫婦でランジェリーを楽しむには?”という話題になりました。
私の実体験も交えながらご提案をさせていただいたところ、途中でご主人も登場され、ご夫婦でのランジェリーカウンセリングとなったのです。
ご主人の下着の選び方からおすすめアイテム、また、ご夫婦で、飽きずにランジェリーやスキンシップを楽しむコツまで、さまざまなことに話が及びました。
ランジェリーの話を深めるたび、おふたりがどれだけ相手を想い合っているかが伝わってきて、とても楽しくあたたかい時間になったのを覚えています。
おふたりのカウンセリングから1年以上経ちますが、いまだにランジェリーを新調されるたびにご連絡をくださったり、ちょっとした質問をしてくださったり、本当に嬉しく思います。
お客様の心に徹底的に寄り添いたい
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私が求めていたものは、ランジェリースタイリストの活動を通したからこそ実現できました。大好きなランジェリーをもっと多くの方に提案し、サポートしていきたいです。
私が追い求めたもの
ランジェリースタイリストになったことで、販売の枠を超えたサポートを実現できるようになりました。私のカウンセリングでは時間を無制限にしているため、本当にさまざまな話題が出てきますし、それをご納得いただけるまでお話しできるので、販売員時代とは大きく異なるなと感じます。
「ランジェリーを楽しみたい」
そんなお気持ちに全力でお応えできている今の環境は、過去の私が追い求めたものであると思います。もちろん、まだまだ未熟ですので成長あるのみ! ですが!
私のこれから
今回は、特に印象に残った3名のお客様をご紹介しましたが、5時間半カウンセリングを受けてくださった方や、赤ちゃんを一緒にあやしながらお話した方、夢を叶えるためにランジェリー提案をしてください! と話してくださった方など、関わってくださったお客様は本当に全員心に残っていますし、ご縁をいただけてとても嬉しく感じています。
感謝してもしきれません。
筆者 2024年 The Lingerie Showにて
私はランジェリーが大好きなので、それをご提案し、たくさんの方とお話しできる販売員の仕事もとても楽しかったのですが、ランジェリースタイリストになったからこそ出会えたお客様方は、よりその方の心の近くに寄り添ってご提案させていただけている気がします。
感謝を忘れずに
これからも、お客様の人生のさまざまなシーンで、最適なランジェリーをご提案し続けていきたいですし、たくさんの笑顔を見るために、この仕事を続けていきたいと思います。
なにか相談事がある方、お店では話せないけれど吐き出したい思いがある方、いつでもご相談くださいね。お待ちしています。
Text:堀部 優李
堀部優李 プロフィール
一般社団法人日本ランジェリースタイリスト協会
ランジェリースクール『ランジェリーカレッジ』の運営と
ランジェリーの専門家『ランジェリースタイリスト』の育成をしています。
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