死んだと思わせて婚約者の元を去った卑怯男。そのとき彼女がとった行動
ハッピーな国際恋愛をしていた女性にある日届いた、婚約者を襲った悲劇のニュース。そのとき彼女の取った勇気ある行動とその結末にとても感銘を受けました。死んだと思わせて婚約者のもとを去った卑怯な男性と、そんな彼に対してアクションを起こしたひとりの女性のお話しです。
■もし「あなたの婚約者が亡くなりました」と知らせが来たら?
ある日突然、「あなたの婚約者が事件に巻き込まれて亡くなりました」というメールを受け取ったら、どうするでしょうか?
これは、私が国際恋愛コーチのアイリーンさんと一緒に運営していた「国際恋愛&国際結婚オンライン・コミュニティ」のメンバーだったある女性に起きた出来事です。
彼女は恋人と2年近くお付き合いをしていて、彼がアメリカに戻るタイミングで関係の次の段階に進むことを話し合っていました。家族に不幸があり、一時的にアメリカに帰国するということでしばらく離れていた間に、彼の死を知らせるメールを受け取ったのです。
■彼は直近まで勤めていた職場を去っていた
メッセージの送り主は彼の親戚を名乗る人でした。突然のことにパニックになり、悲嘆に暮れながらも、状況を確認するためにメールの送り主に返信し、信じられないけれども、できることならお墓参りに行きたい、これから航空券も手配すると伝えました。
しかし、返事が来ないので、朝になるのを待って、彼女は彼が所属しているはずの職場の上司に連絡を取りました。すると、驚いたことに「彼はもうここでの任務は終了し、次の赴任地に赴いています」という返事だったのです。
この時点で、元の上司は「彼は実は生きていて、あなたは騙されているのではないか」と彼女に伝えたそうです。
■「偽りの死」を演じていた彼
この時点で、彼女も「もしかしたら、自分は捨てられたのかもしれない。彼は既に新しい勤務地に行き、戻ってこないのかも」と思ったそうです。
でも、とにかく真実を突き止めなければ、気持ちの整理もつきません。元の上司と再び連絡をとり、職場での面談をセッティングしてもらいました。その時点で、彼らも事実確認を済ませており、結果としては「彼は生きていて、アメリカで勤務している」ということがわかりました。
既に違う部署に属しているため、自分の部下ではなく管轄外ではあるけれども、元部下がでっちあげた狂言に元上司もショックを受け、誠実な態度で謝罪されたそうです。
■別れ話すらできない卑劣な男
この話を聞いて、私は「別れ話をしたくないがために、自分の死をでっちあげるなんて本当にひどい」と怒りの感情が湧いてきました。
彼女は、元の上司と会ってはっきりと「彼は生きている」と聞くまで、本当に苦しい時間を過ごしたのです。
けれど、一方の彼は日本にいる間だけの恋人のつもりだった。任期を終えて国に帰るとき、彼女とはもう別れようと思っていたけれど、それを言えなくて、自分が死んだことにしてしまえば良いと考えた……。この思考には、「婚約者が突然亡くなったと信じて生きていくことになる彼女」に対する配慮がこれっぽっちもありません。自分が死んだと聞いて彼女がどのような精神的苦痛を味わうか、悲しみに暮れる日々を過ごすことになるのか、想像できないのでしょうか?
また、論理的に考えても、結婚を誓い合った仲なのなら、片方が亡くなったというニュースを聞いて、「はいそうですか」と、事実確認もせず、お葬式に参列もせず、そのまま何のアクションもとらないと思っていたのでしょうか? そうであれば、詐欺のプランニングという意味でもあまりにもお粗末です。
■裏切られたのに「彼が生きていてくれたことが嬉しい」
でも、少し時間が経って気持ちが落ち着いたとき、彼女はこう言っていました。
「一番大事なことは何かと考えたときに、それは彼に生きていてほしいということでした。死んでいないのなら自分は騙されたことになるけれど、それでも本気で愛していたから、彼には生きていてほしかった」
そして、そんな偽りの終わり方で別れが訪れたことは悲しいには違いないけれど、付き合っていたときに大事にしてもらったことも覚えているから、彼のことは許す、と語っていました。
ひとりでこの関係を静かに振り返る反省会をして、そのときの気づきや学びをリストにして送ってくれました。
■過去の恋愛での学びを次に生かす
この一連の出来事を通して、私は「いろいろな形で結局その恋がうまくいかなかったとしても、彼女のように、自分が精一杯がんばった点や、至らなかった点をきちんと振り返り、またその経験から自分が学んだことを言語化できる人は、次にもっといい恋愛ができるだろう」と感じました。
セミナーなどでは「データをとる」とお伝えしているのですが、自分がどんなことにどのように反応するのか、何は許せて何は許せないのか、本当に大事に思っていることは何なのか……たとえ一度きりのデートだったとしても、自分について何かしら学べることはあるはずです。
「自分はどういう状態であれば幸せを感じるのか?」ということがわかれば、それに近づくことは少したやすくなるはずです。信じていた人にこんな形で裏切られて、つらい思いをした彼女ですが、この学びを生かしてまた素敵なパートナーを見つけます、と力強く語ってくれました。
彼女の未来に幸多かれと祈りながら、私が彼女の立場だったら、こんな風に彼を許せるだろうかと思いを巡らせます。心から愛していたのだったら、死んでいるよりは、別れてしまっても生きていてほしいとは思うでしょう。
嘘のお芝居をしなければならないのは「何でも話し合える関係」とは言えないでしょうが、完璧な人間はどこにも存在しませんし、不完全な者同士が何とか折り合いをつけていくのがパートナーシップの本質とも言えるでしょうから。
彼女にとっては、彼を許すこと自体が次に進むための第一歩だったのです。皆さんが彼女の立場だったらどうするか、ぜひ考えてみてください。