本棚は脳や心と直結している。本を読むことは生きること【本棚百景#1】
本棚の中身は、持ち主の脳内や心の中を映し出していることがあります。他人の本棚や読書スタイルというものは、意外に知らないものですが、読む本の変遷は時にその人の生き方さえもあらわしています。連載【本棚百景】1回目は、筆者ナカセコエミコの本棚をご紹介します。
思い思いのスタイルで過ごす読書の時間。本棚の中身は、そのときどきの持ち主の脳内や心の中を映し出していることさえあります。
だからこそ読書とは、もしかすると生きることそのものといえるのかもしれません。連載【本棚百景】1回目は、筆者ナカセコエミコの本棚をご紹介します。
■本棚の持ち主 プロフィール
夫と共有の本棚。自分の持ち分は2段。奥にも本が詰まっている。
デスクの隅。仕事で使う資料的な本の置き場所。
個人事業主(ライター・ブックコーディネーター/物販コーディネーター)
東京都在住・女性・41歳・夫と二人暮らし
静岡県で生まれ育ち、学生時代は名古屋で一人暮らしを経験した。
その後、実家に戻って銀行に就職するも、高校時代から持ち続けていた“本や文章に携わる仕事”としての司書教員になる夢を諦めきれず、地元図書館に司書として転職。数年勤めたが、マニュアル化された作業の繰り返しに、イメージしていた司書の仕事とのギャップを感じる。
地元の一般企業でダブルワークをスタート。販売のおもしろさに目覚め、図書館を退職。やがて、地方事業所から東京本社に異動になり、住まいを東京に移した頃に結婚。20代後半で配属された部署は商品開発部。ものづくりのおもしろさにとりつかれたように仕事に没頭。異動を繰り返しつつ、30代半ばで管理職につき、キャリアを重ねていくことができた。
その頃、そもそもの志であった“本や文章に携わる仕事”を再び始めたいと考え、起業準備をスタート。40歳で、約15年勤めた会社を退職。
個人事業主でライター・コーディネーター業を開始し、半年後の今春に法人化の予定。
■幼い頃に好きだった、自分の原点となる本
『赤毛のアン』『モモ』などが大好きだった小学生時代。
体が弱かった幼少時代は母親から買ってもらった『赤毛のアン』『アンの青春』と続くアンシリーズや『若草物語』に夢中になった。
小学生になると『モモ』『はてしない物語』『チョコレート工場の秘密』などのファンタジーにどっぷりとつかっていく。
想像する無限の楽しさや、知らない世界を知る喜びを読書から学んだ子供の頃。
この頃から、大人になったら文章を書いたり、本に関わる仕事に就きたいと思うようになっていた。
■10代から20代を共に過ごし、影響を受けた本
向田邦子や江國香織から、多感な時期に影響を大きく受けた。
高校生になると、向田邦子にはまって読み漁るように。小説の中身だけではなく、孤独で美しくスタイリッシュ。そして文章が圧倒的に上手い向田邦子の生き方そのものに憧れを強く抱く。
「物書きになりたい」と思うようになるが、それは無理かもしれない……なら、本を扱う出版や司書の仕事をしてみたいと考えるようになってきた頃。
そして、学生時代は江國香織の文章の言い回しや空気感に共鳴。いつかこんな文章を書いてみたいと思った。
この二人の女流作家が、本や文章を書く仕事への憧れをかきたてたが、現実を見るようになったのもこの年頃。いつまでも夢見てばかりではいけない、と自分に言い聞かせていた。
管理職になった35歳前後はビジネス本に興味が移る。
学生時代から20代までは主に好きな小説やエッセイを読んでいた。
30代で管理職になると、小説よりもビジネス本へと一気に興味が移るようになる。必要に迫られて、ありとあらゆるリーダー論や店舗運営、書類の書き方からスピーチ術、女性の働き方などといったビジネス本を読みまくった。
販売部門と商品開発部門の2つの部門で主任・支社長・係長を経験。最大で30人弱のスタッフを管理していく中において、読書がさまざまな知恵を与えてくれた。
しかし、一方でノマドや起業についての本も、多く目にした。いつか、組織を卒業して、起業していきたいと漠然と思い描くようになったのも本の影響。
■最近読んでいる本、何回か読み返す本
戦国時代、特に徳川家康がもともと好き。首都圏の支社長を経験したことから東京・江戸の歴史に強く興味を持つ。
ルミネやJOMOのコピーをつくったコンセプトクリエーター柴田陽子の本は何度も読み返す。
静岡県出身ということもあり、もともと徳川家康びいき。前職で東京都内5事業所を管理する首都圏支社の支社長を経験したころから、江戸や東京の歴史に興味を持つようになる。
徳川家康は、駿河・遠江・三河等の領地を治めていたが、北条氏小田原攻めの後、それと引き換えに関東8ヶ国を治めるようになる。湿地帯が広がる当時の江戸。時間をかけてインフラを整えていったその手法が丁寧に描かれている。
柴田陽子の本は、コンセプトを持って仕事をする楽しさや、独立して会社を作っていく様子などが、魅力的な言葉でいきいきと書かれている。
最初は商品開発のアイデアソースにと思って買ったが、読むうちに自分自身も起業してみたいと思うようになったきっかけの1冊。当時から、何回も読み返し、今もまた読んでいる。
■本を読む場所、夢中になる場所
自宅のソファ。
読書のお供はコーヒー。
キッチンの角っこ。
自宅リビングのソファで足をのばしながら読むことがほとんど。ただし、夢中になってくるとキッチンのコーナーに移動して、三角座りして読むと、なぜかものすごく集中できる。
コーヒーをミルクたっぷりにして、いつもそばに置いておくが、読んでいるうちに冷え切ってしまい、途中で気がついて一気飲みする。
会社員時代は電車の中でいろいろと読んでいたが、最近はカフェや自宅での読書が多い。
■本を読むことは生きること
本は増え続ける一方なので、一定の量を超えたら売りに出すようにしている。
本棚は夫と共有で、自分の棚は二段。奥行きがあるので、手前と奥で2列ずつ並べることができる。
ここ、10年でビジネス本がものすごく増えた。一方で、ファッションや美、健康に関する本も仕事に関する資料として何割かある。
主に、子供の頃はファンタジー、20代は女流小説、30代以降はビジネス本という変遷を経ているが、昔から基本的に活字は何でも読むから、そんなに食わず嫌いはない。
好きな本は変わらないが、生活や役割の変化に伴い、所有する本の種類はやっぱり大きく変化している。
だから思うのだ。本を読むことは生きることであり、その人生とつながっているのだと。今の自分に対して定点観測ができる場所、それが私にとっての本棚なのかもしれない。