疲れたときには「甘いもの」に心をゆだねてみる
疲れたときは目の前にある甘いもの、美しいものに、ただただ心をゆだねてみませんか。考えすぎて、悩みすぎて、少しずつ溜まっていく疲れに目が回る……そんな日は未来への不安はいったん置いておいて。がんばるあなたに「ごほうび」を提案するショートストーリーです。
春だ。
出会いや別れ、変化の季節なんて言うけれど、ドラマティックなものは経験したことがない。せいぜい、学校や職場のそれくらい。そんなわたしに今年の春は大きなことがやってきた。
「選択」だ。
今、わたしは新しい道に進もうとしている。
何を選ぶべきなんだろう。どの道を行くべきなんだろう。一体どうしたらいいのかな。頭の中はずっとずっとそればかり。
思考回路はもうショート寸前。
答えなんてどこにもないって、選んだものを正解にしていくんだって、わかってはいるけれど。悩み続けて少しずつ溜まった疲れが、許容量を超えた。
今日はもうダメだ。
疲れたときに、わたしはちょっとズルくなる。いつもよりワガママになることを自分に許して、目の前の「甘美なもの」に心をゆだねる。
■疲れたときは甘いものに心をゆだねる
たとえば、深夜の甘いケーキ。
いつもは、ダイエットが、体重が、体型がって気にすることばかりで絶対に手を出さない。怖くて出せない。欲望よりも理性のほうが圧倒的勝利で、絶対にそんなこと。
でもね、ほんとは食べたい。
だから、どうしても疲れてしまったときは、それを許すことにしてもいい。
たっぷりのホイップとつやつやの苺が乗ったショートケーキ、とろとろのカスタードがはみ出すシュークリーム、もちもちとしたお団子。
口の中いっぱいに広がる幸福にとろんと癒される。ダイエットも今は気にしない。
疲れたときには、目の前の「甘さ」に心をゆだねる。
たとえば、ふと目にしたかわいい雑貨。
いつもは、今使っているもので充分かな、もっと実用的なほうがいいかなって、なかなか決心しない。衝動的に買うことなんてない。
でもね、ほんとは欲しい。
だから、どうしても疲れてしまったときは、それを許すことにしてもいい。
するっとした柔らかいリボン、キラキラしたストーン、淡いピンク色。かわいらしさにはいつだって心惹かれてる。
手にするだけで体温がすこし上がるような感覚。使いやすさなんて今は気にしない。
疲れたときには、目の前の「ときめき」に心をゆだねる。
■疲れたときはやさしい人に心をゆだねる
たとえば、友人からの励ましの言葉。
いつもは、仕事忙しいかな、今大丈夫かなって気にしてしまう。相手の状況を考えずに、適当な連絡をすることなんてない。
でもね、ほんとは背中を撫でられたい。
だから、どうしても疲れてしまったときは、それを許すことにしてもいい。
いつもわたしの良い所を見つけてくれる友人に連絡する。ずるいかもしれない、カッコ悪いかもしれない。それでも。
弱いところを受け止めてくれるだけで救われる。ダサいかどうかなんて今は気にしない。
疲れたときには、目の前の「やさしさ」に心をゆだねる。
たとえば、恋人に抱きしめてもらう。
いつもは恥ずかしくて言えないし、彼だって疲れているんだからって自制する。重いって思われたらどうしよう、とか。
でもね、ほんとはうんと甘やかしてほしい。
だから、どうしても疲れてしまったときは、それを許すことにしてもいい。
何も考えなくていいくらい、考えられないくらい、抱きしめてもらおう。がんばったねって褒めてもらおう。
固まっていた頭も心もほろりとほぐれていくような感覚。照れなんて今は気にしない。
疲れたときには、目の前の「安らぎ」に心をゆだねる。
人生は予測できないことだらけだ。
絶対的な幸せも、輝く明日も、確約なんてない。
それでも、わたしたちは
考えて、悩んで、泣いて、選んで、
前へと進んでいかなきゃいけない。
だから、
見えない未来を目指している途中で、
どうしても疲れたときには
何かを不安に思う気持ちは、今は手放して。
甘さ、ときめき、やさしさ、安らぎ。
目の前のそういうものに、心をゆだねていい。
目の前のそういうものだけを、信じる時間があってもいい。
ちょっとくらいズルくても、ワガママでも。
がんばる自分に、甘美なごほうびを。
ライター/物書き