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華やかな色を身にまとえば心が踊る【高田賢三】

現在、セブン&アイグループのプライベートブランド「SEPT PREMIÈRES(セットプルミエ)」とコラボしている高田賢三さん。華やかな色合いのアイテムが目立ちます。デザイナーである高田さんが考える華やかな色とは――。

華やかな色を身にまとえば心が踊る【高田賢三】

クリスマス、そして師走。年末に向け、パリもそうですが、日本もイリュミネーションで、街が華やかな色であふれていることでしょう。


僕がとくに美しいと思う華やかな色は自然の色です。日本には四季があり、それぞれの季節、自然が醸し出す風景はダイナミックで美しく、まるで「色の魔法」にとりつかれたみたいな感覚になります。

■僕たちは美しい色に囲まれて生きている

秋の紅葉、冬景色。そして春の訪れとともに、木々のつぼみが大きくなり、綺麗な花たちが咲き始め、桜が満開になり……。そんな光景を目にしたいがために、日本に帰る日程を調整することもあります。


昨年の晩秋、フランスの友人に紅葉を見せたくて帰国しましたが、自然は僕のスケジュールには合わせてくれず、結局紅葉には早すぎた、なんてこともあったけど……(笑)。


日々の暮らしの中に溶け込んでいる色もありますよね。皆さんもそうだと思うのですが、僕も自分がリラックスできる自宅の空間の色使いには、常に気を配っています。各部屋には花を飾って色を添えるのもその一例です。


いろいろな種類の花々を飾った室内

それは、自分が心から落ち着ける空間であってほしいと思うから……。やはり僕たちは常にさまざまな色に囲まれて生活をしているんだな、と気づかされますね。まさに多彩な色のパレットのよう。


■SEPT PREMIÈRESに取り入れた、着て心踊る色

前回のコラム「華やかじゃなきゃ人生じゃない」にも書いた、今年8月に発表した「SEPT PREMIÈRES」でも芍薬(しゃくやく)の花をメインのテーマとして展開しました。そのコレクションには重なり合う色、そして着る人の気持ちが心躍るような色を取り入れてみました。


皆さんは生まれていない時代かもしれませんが、僕が初めてパリでコレクションを発表したのが1970年。どんなコレクションにしようか? 自分のアイデンティティーは何か? と考えたとき、故郷である日本やアジアを意識したんですね。


日本に住んでいるとき、実は海外の憧ればかりが頭に募り、日本をちゃんと見つめていなかった。パリに行って初めて日本の伝統文化の素晴らしさや美しさをあらためて感じたんです。着物や歌舞伎の衣装など、そこには相反する強烈な色が混ざっているのに、凛とした美しさを放っている。

■10人いれば10の色がある。色は完成の表現であり、変化し続ける

その美しさを僕のコレクションの中に落とし込もうと思いました。当時は生地を買うお金もなかったし、パリで売られている生地は柄・色ともに地味なものばかり。日本に戻ったときに、下北沢でかわいい色や柄の生地や浴衣の反物、呉服屋さんで安くしてもらった染め見本の端切れや総絞りの帯揚げをたくさん買い込んでパリに帰りました。


そんな日本の伝統的な色の組み合わせや柄を駆使したコレクションは、当時のモード界に大きな驚きと衝撃を与えたのだと思います。西洋と東洋の融合というヨーロッパにない発想が魅力だったのでしょうね。


「色」は人それぞれの感性の表現であり、置かれている環境やそのときの気持ちも含め多彩に変化していく。華やかな色――それは万華鏡のような色彩だと思います。

高田 賢三

デザイナー。 1939年 兵庫県生まれ。文化服装学院で服飾デザインを学び、'60年第8回装苑賞受賞。その後'64年に渡仏。 1970年 パリにブティックを開き“JUNGLE JAP”として初コレクションを発表。パリの伝統...

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