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誰も、何も教えてくれない。だから自ら動くうちに、母になる。

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上の人からいろいろ教わる学校や会社とは違い、自分で動かない限り、誰も何も教えてくれない妊娠・出産に関する諸々。単に「無事に出産する」以外に自分の望むことがあるなら、それらはすべて、自分から行動しなければ、誰も察してくれないし、叶えてもくれない――。

誰も、何も教えてくれない。だから自ら動くうちに、母になる。

妊娠9ヶ月になった。というと「臨月だね!」と言われるが、どうやらそれは違うらしい。臨月とは妊娠10ヶ月目に入ってから、妊娠36週0日から39週6日までを示す。ついでに、よく妊娠期間は十月十日と言われているけれど、出産予定日は、最後の生理開始日を0日として、40週0日に設定されている……なんていうことは、もちろんのこと、わたしも自分が妊娠するまでは知らなかった。そして、このこと以外にも、妊娠して初めて知ったことは、驚くほどにある。その中でも一番驚いたのは、妊娠から出産、そしてその後すぐの子どものことに関して、「自分から進んで情報を求めて動かないと、誰も何も教えてくれない」ということだった。

もちろん、区や病院が開設している「ママクラス」や「母親学級」などに参加すれば、妊娠中の心構えや食生活、産後の公的補助にどのようなものがあるかついては、大まかに学べる。が、そんなものはキホンのキ。自分にとって切実に必要な情報はなにか、ということも含めて、考えて学ばなくては、後々途方に暮れかねない。

■病院を決める前に、自分の優先順位を考えなければならない

たとえば、わたしの場合。自宅で妊娠検査薬を試して陽性が出たのを確認した後、地元の産婦人科の専門医院を予約して訪れた。なぜその医院を選んだかというと、以前、家の近所に住む友人に「不正出血があって、家の近くのレディースクリニックに行ったら、そこの女医が非常に感じが悪かった」と漏らしたところ「そこよりは遠いけど、評判がいい」として教えてもらったのが、その医院だったから。そこでの検査で、妊娠していることを確認し、2週間後に再び訪れて胎児の心音を確認した。そのときにようやくのこと「ひょっとしてこの病院、入院施設がなくない?」ということに気づいて尋ねたところ、「うん、うちでは産めないから、もう少ししたら別の病院で分娩の予約をしてね」という答えが返ってきた。

医者にしてみれば、「産む病院は、患者が決めるもの」が当然のことなのだろうが、こちらにすると、どんな病院があるのか、何を基準に選べばいいのか、知識はゼロ。そこでようやく、自分の優先順位を考えることになった。
まずは「里帰りはしない」という大前提を決めた。その後に、「無痛がいい」と思った。次に、「高齢出産のリスクを考えて、総合病院であること」と「家からの距離」、「出産費用が高額ではない」で絞ったいくつかの候補の中から、「先生が厳しい」という噂のある病院を除外し、「入院食が美味しい」を決め手として選んだ病院に、すぐに見学と診察の予約を取った。

その時点でまだ7月だったが、希望する病院の分娩予約は10月まで埋まっていた。出産予定は12月なので、まだ空きはあると思いつつも、うかうかしては埋まってしまうのではないか、と焦りしかなかった。なんとか無事に初診を受け、分娩予約を取ることができてほっとしたものの、その日、妊婦でごった返す待合室で5時間近く待たされた。「毎回、これはちょっとキツい」と思い、検診は今まで通りの地元の産婦人科に通ってもいいのかを尋ねたところ、「34週までは、それもできる」という返事が戻ってきたので、そうすることにした。働く妊婦にとって時間は貴重だ。検診は2週間に一度。そのたびに半日かかったのでは、たまったものではない。が、これも自ら主体的に尋ねなければ、叶わなかったかもしれない。

■妊娠・出産に関するあれこれは、自分で動かない限り、誰も教えてくれない

夏は比較的穏やかに過ぎた。といっても、妊娠したからといって、急に仕事を減らしたわけではないので、相変わらず忙しかったし、並行して、年末に向けて仕事をどう片づけて調整していこうかと頭を悩ませていた。そして夏が終わって9月半ば、大きな仕事が片づいたタイミングで少し余裕ができたので、保育園見学を始めた。

わたしが住んでいるのは、そこそこに激戦区と言われている中野区だ。それでも、12月生まれで翌年の4月から保育園に入れるのはさすがに早いのではと思い、1歳児までは自宅で面倒をみようと考えていた。しかし、保活経験者からは「1歳児の枠は、ほとんど0歳児からの持ち上がりで埋まる上に、育休を終えた人たちが殺到するから相当に厳しいよ」とアドバイスをもらって考え直した。リスクを取るなら、「0歳から入れる」という選択肢を選ぶしかない。

区役所へと足を運んで区内にある保育園のリストをもらって、家から通える範囲内の保育園に片っ端から電話を掛けて見学の問い合わせをしたものの、すでに、来年度3月までの見学が埋まっているという園もあり、真っ青になった。見学の予約が取れても、ひと月先はあたりまえだ。生まれる前、しかも、まだ半年以上あるというのに、出遅れたとは驚きだった。そんなこと、病院はもちろん、母子手帳を取りに行ったときに面談した区の職員も教えてくれなかった……なんて恨み言を言っても仕方がない。ここでいま一度、妊娠と出産に関するあれこれは、誰が教えてくれるわけでもなく、自分からどんどん情報を仕入れて、何をすべきかを考えて動かないといけない、ということを、強く実感したのだった。

■妊娠期間は母になるための大事な準備期間

ほかにも「自分で情報を仕入れて、考えなくてはならないこと」はたくさんある。わたしが分娩する病院では「バースプラン」というものを事前に立てることができる。出産時には可能な限り、その希望に沿ってくれるそうなのだが、そもそも「バースプラン」とは具体的にどういうことなのかがさっぱりわからない。聞いたところ、「四つん這いや横臥などの態勢で出産したり、アロマを炊いたり、好きな音楽をかけたりのリクエストができる」と教えてくれたものの、そこにこだわりがないので、いまいちピンとこない。しかし、せっかくなので、自分はどうしたいかを考えてみようとは考えている。

もしも、「エコーを配偶者に見せたい」と思ったとしても、自分から「配偶者にエコーを見せたいんですが、一緒に見ることはできますか?」と尋ねないと、あちらからは提案してくれないし、胎児の染色体異常や代謝異常を検出するために行う羊水検査も、したければ自分からお願いをしないといけない。いま通っている病院では、性別を教えない方針らしく、何度か尋ねたものの、なんとなく返答を濁されてしまった。しかし、性別は知っておきたいと考えたので、検診に通っている産婦人科医院とも分娩する病院とも別の、4Dエコー(胎児の3Dのムービー)が撮れる病院を予約した。

といったふうに、妊娠や出産にまつわるあれこれは、すべて自分で何が必要かを考えて動かなくてはならないのだ。もちろん、最低限、病院さえ予約してあれば、産むことはできる。が、それ以外に自分が何か「望むこと」があるのならば、それらはすべて、積極的に自分から動かなければ、誰も察して、叶えてはくれない。

しかし、駆け抜けるようにして、妊娠・出産における様々なタスクをこなしてきた今になって思う。このタスクをこなしたことで、わたしは「娘」という立場から「母」になったのではないか、ということだ。母性というものは、いまだにピンとこない。けれども、母である自分と子どものために「すべきことは、有無を言わずにする」ということは、身についたように思える。そういう意味でこれまでの9ヶ月は、わたしが「母」になるために、必要な準備期間だったのだと思うなのだと思う。

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大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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