「やろうとしていたことを忘れる」もの忘れ&ど忘れを防ぐ簡単な方法
ポストに郵便物を投函しようとしていたのに、出すのを忘れちゃう自分は大丈夫……? やろうとしていたことを忘れる、物の名前をど忘れしてしまう……。そんな方向けに、『「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方』著者の宇都出雅巳さんが、有名人の名前を忘れてしまう原因と対策をご紹介します。
「あれ? 忘れてた……」
仕事をはじめ日常でよく起こる「もの忘れ」や「ど忘れ」。記憶力の悪さや歳のせいにしがちですが、実はそうではありません。
「あれ? 忘れてた……」がなぜ起こるのか? どうやればそれが防げるのかを、『「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方』や『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』など多くの記憶に関する著作がある、記憶の専門家・宇都出雅巳さんに解説していただきます。
これまでの記事では、「お客さまの名前」「パスワード」「有名人の名前」を取り上げてもらいましたが、4回めとなる今回は、「しまった! ポストに投函するのを忘れた!」など、これからやろうとしていた用事をうっかり忘れてしまうことの原因と対策です。
■やろうとしていたことを忘れる理由は「いつもの習慣」という強い記憶に負けるから
会社からの帰りにポストに投函しようと思っていた書類。会社を出るときまでは覚えていたのに、電車に乗ってから「しまった!」と気づく……。買い物のついでにコンビニで公共料金を払おうと思って振込伝票を持って出たのに、家に帰ってから、「しまった!」と気づく……。
何かの”ついで”にやろうと思っていたこと、やらなければいけないことがあったのに、その記憶がスッポリと抜け落ちて忘れてしまうというケースです。
「さっきまで覚えていたのに……」。
覚えていたときの確かな記憶があるだけに、忘れてしまったことが大きなショックになりがちです。「認知症かも?」なんて不安になってしまう人もいるでしょう。
ただ、この「忘れた!」は単に「忘れた」のではなく、より強力な記憶である「いつもの習慣」に負けてしまったというのが原因です。
毎日通勤する人にとって、その通勤の行動は数えきれないほど繰り返されてしっかりと「身体の記憶」として定着しています。もし、しょっちゅう書類を投函していれば、「ポストに投函する」行動も定着していますが、そうでなければ、「ポストの前を何もしないで歩く」行動がしっかりと記憶されているので、自然とその行動を取ってしまうのです。
買い物の場合も同じです。買い物の途中でコンビニに寄って振り込むというのは、せいぜい月1回。普段ほとんどコンビニに寄っていなければ、「公共料金を払うんだった」と思い出さない限り、「コンビニの前を通りすぎる」という行動を自然ととってしまうのです。
まずは、この強力な「いつもの習慣」という記憶があることを自覚しておきましょう。
■新しい情報は忘れやすい。だから、忘れないための工夫を
「でも、会社(家)を出るときには確かに覚えていたのに……」と、記憶力がやっぱり落ちているのではないかと思うかもしれません。
ただ、それは「覚えているようで、実は覚えていない記憶」なんです。
「え? 覚えているのに覚えていない記憶ってどういうこと?」、そう聞きたくなりますよね。
実はわれわれの記憶の中には、「脳のメモ帳」とも呼ばれる「ワーキングメモリ」という記憶があります。これは、ある目的のために一時的に情報を蓄えてくれる記憶で、すぐに覚えてくれて便利な反面、容量が小さいのです。このため、新しい情報が入ってきたり、何かに注意を取られたりすると、覚えていた情報は外に出され、すぐに忘れてしまうのです。
確かに、会社や家を出るとき、やる用事はしっかりワーキングメモリに入って覚えています。しかし、途中で何かに気を取られたり、新しい情報が入ってきたりすると、ワーキングメモリから押し出され、忘れてしまうことがあるのです。
「覚えている」という感覚が今しっかりあるからといって、それは単にワーキングメモリに入っているだけの場合があります。新しい情報が入ってきたら、あっさり忘れてしまうことを自覚しつつ、忘れないための工夫をしましょう。
■忘れないための工夫 #1「手にメモ」
では、どんな工夫をすればいいかですが、やる用事をメモしてしまうことです。といっても、実際にメモに書くわけではありません。書類や振込伝票を手に持つことで、「手にメモ」をしてしまうのです。
こうすれば書類や振込伝票が常に目に入って思い出させてくれますから、よっぽどのことがない限り忘れなくなるでしょう。
「そこまでしなくても……」と思う人がいるかもしれませんが、そういう人こそ「しまった!」とよく忘れる人です。強力な「いつもの習慣」という身体に染みついた記憶、そして、覚えているようで覚えていない「ワーキングメモリ」のことを思い出し、ほんのちょっとでいいので忘れない工夫をしましょう。
■忘れないための工夫 #2「強くイメージする」
最後に、もう一つ方法をご紹介します。これはあなたの頭をやわらかくし、想像力も高める副次効果もあります。
どんな方法かというと「イメージを強烈にする」こと。
具体的には、ポストやコンビニといった対象を巨大にしたり、派手なカラーにしたり、とにかくインパクトを強くしてイメージしておくのです。笑ってしまうぐらいのイメージがちょうどいいです。
これをほんの数秒でもイメージしておくと、ポストやコンビニが目に入ったときに、この強烈なイメージが思い浮かび、「あれ? 何だっけ? そうだ、投函(振込)するんだった」という具合に、忘れずに思い出されるのです。
バカバカしいと思いながらでも、楽しんで試してみてください!
拙著『「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方』では、21パターンもの「あれ? 忘れた」を取り上げて、それぞれの原因と忘れない方法を解説しています。ぜひチェックください。
次回もまた日常でよく起こる「あれ? 忘れた?」の具体的ケースを取り上げ、記憶の正体と忘れないためのコツをご紹介します。お楽しみに!
■講座案内
東京の日本橋三越本店・三越カルチャーサロンで宇都出雅巳さん本人による短期講座:「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方 が開催されます。2016年11月20日(日)14時からです。
詳細・お申し込みはこちらから ⇒ 短期講座:「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方
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