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「信じる優しさ」と「疑う優しさ」が半分ずつ。半信半疑の夫婦関係がちょうどいい。

夫婦のように超近距離な人間関係も、信じるのは半分くらいでいいし、疑うのも半分くらいでいい――。「半信半疑」でいようとすることは、リスクを考える余裕を生み出し、幸せを運んでくるコツなのかもしれません。

「信じる優しさ」と「疑う優しさ」が半分ずつ。半信半疑の夫婦関係がちょうどいい。

国語の辞書には「半信半疑」という言葉があります。

はんしん ‐ はんぎ【半信半疑】
信じられそうでもあるが、疑わしく思う気持ちもあって、どちらとも心の決まらない状態。(出典:デジタル大辞泉)

私はこの言葉がとても好きです。幼い頃から何でもカンタンに信じることが苦手で、いつもどこかで「なんでかなぁ?」と思っていました。この「なんでかなぁ?」を良い意味で好奇心だと思うようにしています。
大人になると経験値が増えるので、信じることも疑うことも覚えていきます。疑うことを「悪」とするような表現が世の中では多いですが、私はこれを「リスクの想像」と捉えています。ちゃんと疑うなら悪いことではないよ、と考えています。

■リスクの想像ができていれば、余裕が生まれる

私は「リスクの想像」をとても大切にしています。未来予想図を公園の遊具のシーソーに見立てるとして、右には「夢が叶う想像」を置き、左には「リスクの想像」を置き、ギッコンガッコンとシーソーが左右に揺れるとき、両方が同じ速度でバランス良く揺れる状態を心が保てるように意識しています。乗せる量を変えるか、支点の位置を変えるかで、バランスは取れるので、そこはそのときの心の状態でさじ加減をします。

この心のバランス感覚は生きやすさに直結しています。夢が叶って上手く成功すれば両手をあげて喜び、周りの人と素直に喜びを共有し、感謝し合います。逆に何か失敗や突然のトラブルが起きたとき「リスクの想像」のリストの中で近いイメージや条件を探し「こうなった場合はこう対処しようと思っていた」と深呼吸ひとつする余裕を持てるようになります。トラブルにおいて、余裕があるか・余裕がないかはかなりその後の解決に大きな影響を与えます。

生きていると良いことも悪いことも起きます。誰にでも。どこでも。一日の中にも小さな良いことと悪いことが起き、一生の中で大きな良いことや悪いことが起きます。平坦な命というものはきっと存在しないだろうと思っています。
どの命にも良いことと悪いことが起きるようにこの世界はプログラムされていると仮定したら、常にどちらも受け入れる準備をしておくこと。この準備が人生の余裕になってくるのかなと感じています。
どちらも受け入れる人生は、良いことと悪いことの両方を楽しむことへつながります。どちらも楽しめるなら、深く思い悩むことも減ります。「あっけらかんと生きる」ことが、私が理想とする生き方です。

■信じるのも、疑うのも半分くらいでいい

夫婦関係にも、この「あっけらかん」を応用しています。
「私はずっと愛されるんだなぁ」「夫が洗濯してくれて嬉しいなぁ」というような【夢が叶う想像】と「パートナーがもし浮気したらどうしようかなぁ」「夫が病気になって一緒に働けなくなったらどう生きていこうかなぁ」というような【リスクの想像】を、毎日半分ずつ考えるようにしています。

【夢が叶う想像】を半信半疑の「半信」とします。【リスクの想像】を「半疑」とします。どんなに近しき人間関係も、信じるのは半分くらいでいいし、疑うのも半分くらいでいい、そんな感覚を大事にしています。
パートナーを100%信じてないなんてひどい! と思われるかも知れませんが、信じすぎないことで相手の愛情のプレッシャーの重荷を少しだけ軽くすることができるかなと思っています。少し疑うことで自分と意に沿わないことに出会っても「まぁいいか」と思えます。

■幸せを手に入れたら、そのぶんリスクも引き受けている

信じるという言葉は美しく感じますが、信じすぎる状態は自分のチカラで物事を考えることを放棄してしまう少し危ない感覚でもあります。疑うという言葉についても、疑いすぎては疲れてしまいますし、周りの人を悲しい気持ちにさせてしまいますが、かすかな疑いは相手と相性が合わなかったり、相手と自分の意見が違うときに、裏切られたと自分本位な主観を持たないで済んだりします。信じるも疑うも実は自分の問題だと気づいている人は少ないです。相手の問題ではないんですね。

夫婦のリスクにはいろいろあります。晩ご飯の意見が合わないという小さな日常のリスクから、浮気される・浮気するかもしれない大きなリスクまで、本当に想像するとたくさん出てきます。リスクとは他人と上手くやっていこうとすれば、手に入る幸せと一緒にセットでついてくるもので、幸せを手に入れたら同じだけリスクも受け入れたことになるのかなと思います。だからこそ、夫婦で幸せに暮らしたいと思ったら、大好きだからこそ半信半疑くらいでいるのがちょうどいいと思っています。

夫婦には信じるという優しさがあり、疑うという優しさがあります。半信半疑とは、実は相手の良いことも悪いことも想像し、他人という家族の二人でどう問題をクリアしていくか考える優しさでできています。

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兎村彩野

Illustrator / Art Director

1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。シンプルな暮らしの絵が得意。愛用の画材はドイツの万年筆「LAMY safari」。

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