Illustration / Yoshiko Murata
DRESS NOVEMBER 2014 P.25掲載
都合のいい女って、どんな人よ?【甘糟りり子の生涯嫁入り前】
おそらくネガティブなニュアンスで発される「都合の良い女」。それも、思っているほど悪くはないかも?
「それって、単なる都合のいい女なんじゃないの?」
ン十年も女として生きていれば、一度や二度ぐらい、この単語をいわれたことも、友達にいったこともあるだろう。ン? ない?
もちろん、いわれて嬉しい言葉ではない。なんというか、あまり大切にされていない感じがするし、優先順位が低そうでもあるし。
都合のいい女の定番は、なんといっても、夜中・突然の「これから行ってもいい?」だろう。
ほろ酔い気分で、まだ夜を終わらせるのがもったいなくなっちゃった男が気軽&気まぐれに電話をする、そういう相手こそ、都合がいい存在。気を使
わなくていい、困った時に使える、つまりは非日常の普段着、みたいなね。や、作業着か。
私も、そんなふうに扱われたことがあったなあ。最初はそれなりにきちんとつきあっていたはずなのに(まあ、何をもって、きちんと、というのかは人によるけど)、いつの間にか、待っているのはいつもこっち。それどころか、楽しみにしていた食事@予約のとれないレストランの約束をドタキャンされたり、しれっと女の子(多分、ケバい種類と思われる)が来る飲み会を優先されたり。
仕方ないか、あっちも忙しいんだし、と、無理矢理自分を納得させていた。それでも、女友達とのおしゃべりの合間に、ついつい口からこぼれてしまう不平不満、そして不安。で、件の単語を持ち出されるのであった。
ツゴウノイイ、オンナ、ナンジャナイノ? メ、ヲ、サマシタラ?
わかっちゃあいるけど認めたくない、そういう事実を他人から、それも信頼している人からいわれた時って、こんなふうに言葉がカタカナで聞こえちゃうのだ、私は。
大雑把に分けると、都合のいい女は「セックス」「寂しい時」「経済」のどれかの補充や補塡に使われるようだ。もしくは全部か。経済というのは、直接お金を渡すことではなく、食事やホテルといったデート代の負担を指す。ぴかぴかの女の子である時期は、それ以外に自分の魅力を見いだしてもらえないと、まあ普通はムカつくよね。昔の私もそうだったもん。
が、しかし……。しかし、ですよ。
セックス=肌寂しい時や心が寂しい時にあてにされるのって、そんなに悲観すべき関係なのだろうか。弱っている状態で求められるのは親密の証だと、いい歳の大人になった私は思う。
女友達の、こんなエピソードがある。
その友達は世でいうアラフォーで、グラマー&キュートで、料理が上手でなかなか魅力的だ。彼女は同じ歳ぐらいの男性と知人の紹介で知り合い、デートを重ね、だんだんいい雰囲気になってきた。でも、その男は何もしてこない。彼女の部屋に手料理を食べにきても、セックスどころかキスもしない。
いわく、「せっかく気の合う、いい関係になったのに、セックスを持ち込みたくない。そういうことは、セフレといわれる女友達がいるからそっちで済ませます」といわれたそうだ。これって、恋人同士じゃないよね? と聞かれ、私は、残念ながら未満以下だなあと思ったけれど、なんとなく口に出せなかった。
この場合、「都合のいい女」は当てはまると思いますか? 私は当てはまると思う。けれど、それはそれでいいじゃない、といってあげたい。
年齢を重ねると人間たいてい、頑固になるか、妙にものわかりがよくなるか(=あきらめを知るということ)のどちらかに偏る。私は、ものわかり派の女性のほうが好き。だって、つきあいやすいもん。友情においては、お互いが都合のいい存在になれるのが私の理想である。
恋愛だって同じかも。ものわかりがいい=都合のいい女(もしくは男)のほうが、距離感を縮めやすいよね。縮めやすいに超したことはないんじゃないでしょうか、と私は思う。結婚するなら、都合のいい男がいいもんね。
もし、万が一、ふとしたはずみで、自分が都合のいい女という位置付けにハマってしまったら……。
これはもう、海のように広い心を目指して、「都合のいい道」を極めるのはいかがだろうか。アスリートのような気分でね。その先に何が待っているのかは知らないけれど。きっとすがすがしい景色が見えるはず!(今、無責任なこといいました)