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結婚は勢いって本当?

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結婚は若さの勢いがないと・・・。と姉に言われて、気になっていた自分がしました。

結婚は勢いって本当?

 年の離れた姉が、まだ20代前半だった私に言ったことがある。「結婚はね、勢いよ。若さの勢いがないと出来ないわ。だんだん見る目が養われると冷静に条件を考えるようになるでしょう?そうしたらもう、ケチを付けるばっかりで永遠に踏み切れなくなってしまう」

 姉は、いわゆるバブル世代。彼女が若いころは、まだ女の結婚適齢期はクリスマスケーキと同じと言われていた。25になったとたんに売れ残りの札がつく。姉は25歳になる直前に、学生時代から付き合っていた人と結婚した。当時としては遅い31歳で最初の子どもを産んだ姉は、大学を出て働き始めた私に、確か赤ん坊をあやしながらそう言ったのだ。彼女の夫が勤める大手企業の社宅は狭かったけれど、高い年収と海外転勤が約束されていた。

 私は専門職で企業に就職したので、男性と同じ待遇で、寿退社のプレッシャーもない職場だった。90年代半ば、女性の総合職採用も少しずつ増えて来て、女性の働き方が、それまでの夫探しの腰掛け就職という感覚から、一生かけてキャリアを積む志向へと変わっていく潮目にあたっていたのかも知れない。

 私は18歳で初めての失恋をするまでは完全な玉の輿志向で、自分が「働く女」になるなんて思ってもみなかったけれど、最初につきあった人にふられたときに「どうしよう、せっかく銀行に内定していた人だったのに」と惜しく思い、次は商社か電通かとルート探しに思いを巡らせていた最中に、突然そんな自分が嫌になった。男の年収を当てにするからこういう浅ましい恋愛をしなくてはならないのだ。男と同じだけ稼げば、相手の懐具合なんか気にせずに誰でも好きになれる。そっちの方が絶対に楽しい、と180度方針を転換して、自活はもちろん、家族を養える女になることに決めた。

 かくして自分の成績でなんとかもぐりこめる職業についた私は、これでどんな男とでも結婚できるとホッとしていたところだったので、姉の言う「若いうちに勢いで」というのは分かる気もしたが、正直言って当面は思い切り恋愛をしたかった。焦らなくたって大丈夫。稼ぎのいい男の争奪戦には参加しなくていいから、と。ちなみにその時つきあっていた人を姉に会わせたところ、「早く結婚しないと他の女にとられるわよ」と言われたのだが、案の定その2ヶ月後、部屋の電話に知らない女が出た。なるほど、と悔やまれたが、その男はそのあとも浮気でトラブルを起こしたと聞いたので、むしろ結婚しなくて良かったのである。それでもずっと引っかかっていた。「結婚は勢いで」

 28歳の時、3年半の同棲を経て現在の夫と結婚したのは、この姉の言葉が背中を押したからかもしれない。いや、確かにあれは勢いがなければ出来なかった。3年半も一緒に暮らしてしまって、今さら……となっても不思議ではなかったのに、どこかであの言葉が気になって、するなら今、決めてしまおうと思ったのだ。

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小島 慶子

タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族と暮らすオーストラリアと仕事のある日本を往復する生活。小説『わたしの神様』が文庫化。3人の働く女たち。人気者も、デキる女も、幸せママも、女であることすら、目指せば全部しんどくなる...

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