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会員登録 ログイン「結婚は若さの勢いがないと……」と姉に言われた言葉。結婚するタイミングはそれぞれのパートナー同士が決めればいいことだけれど、時には勢いで決めることも大切なのかもしれません。小島慶子さんによるエッセイです。
年の離れた姉が、まだ20代前半だった私に言ったことがある。「結婚はね、勢いよ。若さの勢いがないとできないわ。だんだん見る目が養われると冷静に条件を考えるようになるでしょう? そうしたらもう、ケチを付けるばっかりで永遠に踏み切れなくなってしまう」
姉は、いわゆるバブル世代。彼女が若いころは、まだ女の結婚適齢期はクリスマスケーキと同じと言われていた。25になったとたんに売れ残りの札がつく。姉は25歳になる直前に、学生時代から付き合っていた人と結婚した。当時としては遅い31歳で最初の子どもを産んだ姉は、大学を出て働き始めた私に、確か赤ん坊をあやしながらそう言ったのだ。彼女の夫が勤める大手企業の社宅は狭かったけれど、高い年収と海外転勤が約束されていた。
私は専門職で企業に就職したので、男性と同じ待遇で、寿退社のプレッシャーもない職場だった。90年代半ば、女性の総合職採用も少しずつ増えて来て、女性の働き方が、それまでの夫探しの腰掛け就職という感覚から、一生かけてキャリアを積む志向へと変わっていく潮目にあたっていたのかもしれない。