恋愛には困らなかった私。変なプライドを捨てて結婚相談所に行ったら……
独身アラフォーの私。結婚紹介所には若干の抵抗があった。でも、もうそんなことを言っている余裕はない。利用できるものは何でも利用してみよう! 皆が持っている結婚を手に入れるために。そう自らを奮い立たせた松江理央さんは、結婚相談所に足を運び、実際に婚活を進めていったのだが……。
結婚紹介所のタイプは大きく3種類
いくつかの結婚紹介所に足を運んでみると、当時36歳だった私は「女性会員が最も多く含まれる年齢層です」と担当者から聞かされた。30代後半ともなると、皆考えることは似てくるのだろうか。手段はともかく40歳までにどうにかしたいという焦り。
結婚紹介所を調べていくと大きく分けて「データマッチング型」「仲介・相談型」「インターネット型」の3つに分かれることがわかった。
まず「データマッチング型」。こちらは住所や年齢、家族構成から親と同居可能か不可か、年収、転勤の有無、趣味など、多岐に渡る条件を独自のパソコンで検索するシステム。業界では日本最大級の「IBJ(日本結婚相談所連盟)」が有名で、全国の結婚紹介所1,100社が加盟する。会員は全国で56,000名とのこと。
たとえはどうかと思うが、不動産物件のように他の紹介所でも人物の情報共有ができるようになっている。A紹介所で入会してもB紹介所でも同じIBJの情報が見られるというように。全国に56,000人もいたら選び放題ではないか、なんて期待が膨らむ。しかし、年齢に住所、趣味、職業~♪と広瀬香美の「ロマンスの神様」のように楽しくチェック&検索するのは自由だが、条件を絞り、これをいくつもの紹介所でかなりの人々が検索しているということ、また女性の年齢が高くなればなるほど、お相手の希望年齢から外れるというシビアな現実も……。
ちなみに当時36歳だった私は同じ条件で37歳の設定でシュミレーション検索してもらうと、急激に相手の希望条件から外れるといったデータを見せられ、30代後半における「1歳年を重ねるごとに厳しくなる現実」を目のあたりにした。
検索後の進め方は紹介所やコースによってさまざまで、月に男性と会える回数や方法なども異なってくる。
次に「仲介・相談型」。これはさらにアドバイザーとの関係が少し密になり、IBJの検索システムを使うところもあれば、いわゆる「お見合いおばさん」のような世話焼き係を介して紹介してくれるところもある。
そして「インターネット型」はわざわざ足を運んで入会手続きをすることはなく、PCまたは携帯で活動ができる上、料金設定も一番安い。会社によっては「独身証明書」や「免許書」の提出を求められるところもある。しかし、若干「出会い系」という陰なイメージが否めない人もいるかも。
趣味じゃないのに……戸惑いながらも男ウケ服でプロフ写真撮影
7〜8ヶ所へ足を運んだ後、結局「仲介・相談型」の紹介所に興味を持った。いくつかある結婚紹介所の中では新しい会社ではあったが、料金が他社と比べ若干安かったのと、雰囲気が良さそうだし、いまどきの男性もいそう? という勝手な妄想も密かに含めた上で、である。毎月必ず男性2人を紹介してくれるコースで、自分であちらこちらへと動かなくても、自動的に紹介してくれるなら楽でいいな、とも思った。
まずは、プロフィール作成に写真撮影。写真は「この写真が検索に引っかかるか、相手の希望に叶うかどうかがかなり重要なので、プロに頼んでもらいましょう!」と1~3万円程度のカメラマン&スタジオを紹介されるところもあるそうだが、ここでは世話焼きおばさん……じゃなかった、通称コンシェルジュと言われる担当の方が写真を撮ってくれた。それも携帯カメラで。
とりあえずは「ワンピースまたは白かピンク系の女性らしい服」を着てくるよう言われる。普段はカーキや黒、紺色などアースカラー系の服が多く、デニムやパンツもよく履いていた。当時の私はお洒落への関心は高いが、女性アピール全開のものよりは、どちらかというとカッコいい系のファッションが好みだった。
……それなのに、そんな女度全開の服を着なくちゃいけないのかぁ。滅多に着ない部類の服だな。
服にこだわりがあるぶん、多少の抵抗はあったがここは結婚紹介所。プロフィール写真といったらきっとこんな感じで、ある程度は偽りの服装、偽りの笑顔でニコッと微笑んでおく場所なのかと、自分を納得させ、まずは指示に従った。そこまでは……。
結婚紹介所を「入会、即退会」した理由
結論から言うと、私はここまで調べて入会せずに、いや一応入会はしたものの、すぐに退会してしまったのだ。ちなみにお金は全て戻ってきた。何が退会へ至るきっかけになったかというと、結婚紹介所の方針と自分の気持ちにズレがあったのが大きい。
まず、プロフィール作成であまり深いことを考えずに「趣味:キックボクシング」と記入した。もちろん、素直な気持ちで。すると、案の定コンシェルジュさんがすっ飛んできて「理央さん、こういうところでは、お料理とか読書にしましょう」と促される。
え? やっぱりダメ? びっくりする? まぁ確かに驚くかもしれないけど、格闘技だろうと何だろうと私自身が楽しんでいるんだから、いいじゃない。お料理とか読書なんて誰でも書きそうなインパクトのないものより、キックボクシングをやっちゃうような女性を「面白い!」と興味を持ってもらえる方が、本来の自分に興味を持ってもらえたようで嬉しい、と思って正直に書いたのだが。
ちなみに当時、私はキックボクシングジムに趣味で通っていて、今でこそローラさんや道端アンジェリカさん、菜々緒さんなど、モデルさんもお洒落にカッコよくやっている姿をテレビでも拝見するようになったが、当時は今以上に認知度はなかった。
「趣味はキックボクシング」と言うと、男性からは「喧嘩強いの?」「試合とか出るの?」「なんでやろうと思ったの?」「理央ちゃん、ミドルキック蹴って~」なんて、大概この手の質問&リクエストを興味本位で受けていた。しかし、不思議と女子には受けが良かったな。
多少大人になった今では、コンシェルジュの言うこともわからなくはないが、当時は「ありのままの自分を受け入れてくれる人でいいんです」と少々生意気だった私。いや、今も多少は融通が利くようになったが、基本的なスタイルはあまり変わっていないかも。
1〜2回会う程度なら取り繕うこともできるだろう。もうちょっとは頑張れるかもしれない。でもそんな偽りをいつまでも続けたら、きっと楽しくない。私はもちろん相手もそうではないか。きっと、そんな彼とデート後は、フゥーッとひとりで肩の力を抜くのだろう。
誤解のないように言っておくが、「ありのままに」とは言っても自分と向き合うことをせず、前を向くことをせず、「それが自分です、わかってね」と開き直るのもまた違うと思う。彼との仲が深まるまでは多少の演技や偽りもあるだろう。だけど、過剰な演出は結果的に自分の首を絞めるだけではないかと思うのだ。
結婚相談所に向いている人、向かない人がいる
さらに、紹介されたお相手のプロフィールが、どこをどう読んでも、斜めに読んでも薄目で見ても、私の希望とは真逆だったことも、退会に至った要因のひとつである。とても地味で寡黙で内気、自分が頑張って会話を進めないといけないタイプなのだな、という人物像が文面から想像できてしまったのだ。会う前から楽しくなさそうな予感。
多少は予想していたが、やっぱり結婚紹介所って高学歴、高収入、次男など外的条件は良いけれど、私が望んでいる明るく元気な男子! 会話が面白い人! 言うなれば「大泉洋」みたいなタイプ! はほぼいないのだと思ってしまった(全国の結婚紹介所さま、失礼極まりない発言で申し訳ありません。あくまで、当時の私の印象です)。
実際、本当に仕事が多忙で彼女を作る時間もなかったよ、という人も中にはいるだろう。私の友人の兄(歯科医)がそのタイプだ。当時45歳、結婚紹介所に入会し、知り合って半年でゴールインしたとのこと。社会的地位や年収が高いのに加え、コミュニケーション能力もあり、女性からの応募が殺到したとか。
でも、当時の私は自分の持ち味を認められない不満と、やっぱりな、という相手への一方的なダメ出しでテンションが下がる気持ちを抑えられず、お相手に会うこともないまま、退会してしまった……。焦る気持ちは大いにあるが、しかし、一方でどうにかなるさという希望もまだあって。
もちろん、これはあくまで私の思考・体験であって、地味で寡黙で自発的な発言が少ない人、でもいい人はたくさんいる。友人のMちゃんの旦那さんもそのタイプ。2人は結婚紹介所で出会って半年で結婚、1年を過ぎたあたりで可愛い双子ちゃんに恵まれている。私からすると、なんでこの人と……と余計なお世話ながら思うこともあったけれど、結婚から数年経って彼女に話を聞くと、今でも幸せそうである。人の幸せはやはりその人にしかわからない、ということだ。
もっと楽しくオープンに「結婚紹介所、使ってます!」と言える社会に
それにしても結婚紹介所に通っていることは、未だに堂々と言いにくく、周りを確認してどこか俯きながら「実はね……」と小声でこっそり伝えるイメージがあるのはなぜだろう。実際、紹介所からの資料も紹介所名は伏せて送られてくる。どこかで憐みや必死感が伝わるイメージなのか。
「生涯未婚率○パーセント」と世間やメディアが煽りまくる現代において、もっと明るくてオープンに、たとえばFacebookにも「今日は紹介所に行ってきまーす!」とカラッと公言できる感じにはならないのだろうか。「今日、カフェに行きまーす!」くらいに。
ついでに言うと、芸能人や有名人など、社会的影響がある人もCM以外で実際に結婚紹介所を利用して婚活してます、もしくは結婚しましたアピールをしてもらえると非常にありがたい、と勝手ながら思っている。
東京出身。医療現場で働いた後インド、イタリアへと単身旅行。趣味は油絵、読書、麦酒、オーラソーマカウンセラー取得。