好きだから、観察するーーはあちゅうさんに学ぶ、パートナーとの毎日を100倍楽しくする方法
DRESSにも度々登場いただく、はあちゅうさんの最新エッセイ『真夜中にシュークリーム』ブックレビューをお届けします。パートナーとの何気ない日々を幸せに過ごすヒントが満載でした。
(シュークリームを我慢しながら)真夜中に読み終えた。
DRESS対談企画でもお馴染み、はあちゅうさんの新刊『真夜中にシュークリーム』(以下、まよシュー)は、体をスッと通り抜けていくような、軽快なエッセイであふれている。
書店で初めて本書と出会った方は、これをグルメ本もしくはスイーツ本だと勘違いするかもしれないけれど、実際のところはエッセイ集で、かつ3〜4割は「恋人観察記録」だ。
たゆまぬ努力と細やかな気遣いが素敵なはあちゅうさん。有名人で人気者、しかも賢くて美人。彼女と一度でも仕事をした女性は皆「ファンになってしまった」と口を揃える。女性からの支持も絶大なのである。
そんな彼女とお付き合いする相手とは、一体どんな人なのかしら、と想像するのは楽しい。芸能人? 投資家? 作家? 起業家? なんて勝手にイメージをふくらませていた。
まよシューでは、具体的な職業は明らかにされていないけれど、恋人にまつわる情報が適度に生々しく綴られていて、リアルな感覚にぐっと引き込まれる。たとえば、こんな情報。
・「今暇だからプロポーズしてみて」とLINEすると、きちんとプロポーズを返してくれる
・コーヒーの香りに幸せを感じている
・朝がとても弱く、はあちゅうさんによるクリエイティブな方法で毎回起こされている
・食材をたくさん買っては腐らせてしまう
ふたりは基本的に楽しく、素の状態で過ごしているようだけれど、ケンカもそれなりにあるという。さらに、時折はあちゅうさんの怒りに火をつけたり、傷つけたりする言葉を発してしまう彼。結果、爆発したはあちゅうさんに素直に謝り、攻撃されても受け止める。優しく、器の大きい、クマみたいな人なのだと思う。いい恋をしていらっしゃる。
「書くことは、観察すること。好きになること。」というエッセイがある。60本を超えるエッセイの中で、同じ書き手として最も印象に残った文章だ。
まよシューは「note」で見られる「ごはん日記」(「月刊はあちゅう」の前身)と「月刊はあちゅう」、毎日新聞紙面での連載コラムの3ヶ所から選りすぐりのエッセイを収録したもの。まよシューの元となった「月刊はあちゅう」開始後、今まで以上に彼のことを注意深く観察するようになった、とはあちゅうさんは語っている。
「『この人のこと、好きだな』と思った瞬間を心にちゃんと、留める」、「『覚えておこう』っていう意識が無いとその瞬間は流れていっちゃう」との言葉からは、彼と日頃から丁寧に向き合っていることが伝わってくる。
「魔法瓶」のエピソードが面白い。彼が会社で飲みたいからと、自宅で熱いコーヒーを魔法瓶に詰めているのを見たはあちゅうさんは、「大の大人が魔法瓶を持ち歩く姿は、想像するとかわいすぎる!」と大興奮し喜ぶ。
彼を観察する習慣がなければ、その姿は目に入ってこないだろうし、たとえ目に入ったとしても無関心だったはず。さらに、当時の思いや情景を書き留めておかなければ、彼のその言動を知ったときの喜びはなかったとも語る。
はじめは互いに大事な人だったのに、共に過ごし時を重ねていくと、次第に相手が空気みたいな存在になるーーそんな切ない話を聞くことは少なくない。
無理して書き残す必要はないけれど、少なくとも「観察すること」「好きでいること」だけは意識して続けると、パートナーと過ごす何気ない毎日は、一気にカラフルで幸せな形に変わるのではないだろうか。