レースやパールでエレガントに!「おしゃれマスク」開発で人生が変わった
「かわいい・繰り返し使える・つけ心地が抜群」なマスクを開発したのは、DRESS世代のワーキングマザーでした。
レースやパールでエレガントに! 「おしゃれマスク」開発で人生が変わった
これからの季節に欠かせないマスク。岐阜県にある株式会社エストの作る「おしゃれマスク」が、今治産のタオル地や耳あたりのいいゴム、そしてレース、デニムなど高いデザイン性で人気を集めています。この「かわいい・繰り返し使える・つけ心地が抜群」なマスクを開発したのは、DRESS世代の一人のワーキングマザーでした。
「主婦の趣味の延長で、売れるとは思ってなかった」
このマスクを企画開発したのは、エストの加来久恵さん。もともと「形にすることが楽しい」と、自身のウエディングドレスも手作りしてしまうほどの腕前の持ち主です。子どもが毎日喜んでつけてくれるようにと作ったかわいい柄のガーゼマスクは、周りのママ友たちからも大評判。そんなとき、エストの古田明広社長と出会います。
「子どもが少し大きくなり、ちょっと仕事をしたいなと思っていたところに、古田社長に『何ができる?』と聞かれて。『子どものマスクを作っています』と話したら、『うちでネットショップを立ち上げるからそこで一緒にやろう』と」
これが今から3年前。もともとエストは「寝具・インテリア 企画・製造・販売」を主な事業としていました。社内でも「マスクなんて手がけてたっけ?」という雰囲気だったそう。加来さんも「主婦の趣味の延長で、私も売れるとは思ってなかった」と話します。
そんなある日、加来さんは「今治産のタオル地」と出会います。「もう素材に惚れ込んでしまって。会社に入ったからこそ今治産のタオル地の仕入れ、試作や開発が可能になり、一番いい形になるまで作っては誰かに試してもらいました」
こうして3ヶ月間試行錯誤してできあがったのが、現在のおしゃれマスクです。しかし、加来さんはまだ満足していませんでした。加来さんはタオル地にどうしても色をつけたかったのです。
「当時、今治産のタオル地は真っ白の一色のみ。白色ではマスクを外したとき、ファンデーションの色移りが目立ってしまいます。だからどうしてもファンデーション色のタオルが欲しくて」
それから1年後、ようやく「モカベージュ」が誕生。今ではピンクやアイボリーなど4~5色が展開され、表面のデザインに合わせた色のタオルが使われています。
若い女性の感性を活かし、デザインの幅を広げる
マスクのデザインを提案しているのは女子社員たちです。「社員の子たちがレースを付けてほしいとか、リボンやパール、ビジューもいいですよねと、そういう若い感覚を教えてくれて。おかげさまで年代を問わず、マスクのデザインが広がりました」
男性にはデニム柄マスク、女性は「マカロンレースマスク」、また現在は睡眠時用の「スリーピングマスク」もヒット中だそう。
「主婦としてはやはり、長く使えるものじゃないともったいない、と考えちゃいます。そうは言っても、このマスクはお安いものではありません。結構高いものなので長く、長く使っていただきたい。そしてファッション的に、『今日はこの色だからこのマスクを~』と取り入れてもらえると嬉しいです」
子育て中のママが職人として大成長
初期の頃は、加来さん一人体制だったマスク作り。しかし、今では注文数が増加し、社内は大忙しの状況となっています。しかし「縫製経験者の方からすると『細かすぎてやってられない』」と、マスクのクオリティの高さが人員募集のハードルになってしまったのでした。
そんな中、「大健闘してくれた」と加来さんが絶賛したのは、小さな子どもを抱えていて外に働きに出られない、ミシン初心者のママたちでした。
「最初は1時間にマスク1枚を作るのでやっと。それでミシンを家まで教えに行ったり、会社でも練習をしたり。もうみんな泣きながら作っていました(笑)。本当に頑張ってくれて、今彼女たちは1時間に10枚縫えます。私より早いかも」
型紙もマスクを効率よく縫えるように工夫されています。それでも加来さんは「縫い方が悪ければいい商品にならないですし、本当にみんなの努力の賜物。マスクは私にとって本当に愛おしい商品です」と笑顔で話します。
現在は枚数を確保するため、中国の指定工場でもマスク作りをスタート。「2ヶ月に1回ほど中国へ行き、チェックしています。言葉の指示だけで相手を動かそうと思っているわけではないので、やはり現場に行きます。いいものを作ろうとなれば、いい相手はいる」と加来さん。
「でもまさか中国出張に行くようになるとは(笑)。子どもには寂しい思いをさせちゃって可哀想だとは思うんですが……。まさかこんなふうになるなんて。マスクで人生が変わっちゃったんです」
マスクはノーズワイヤー入り、花粉90%以上カット、UVカット効果など機能性もバラエティに富んでいます。そんな「おしゃれマスク」はWebサイト「エストクチュール」をはじめ、楽天やAmazonなどでも購入可能。
「マスクが世に広まることが一番嬉しいです。自分の考えた商品を、みんなが『嬉しい』と言って使ってくれることが、私にとって最高に幸せなこと。今後はマスクを進化させるのはもちろん、自分自身も進化させないと、と思っています。またマスク以外のヒット商品を作りたいですし、そういった商品をひとつでも多く世に出したいと思っています」
Text/Photo=三谷アイ
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