婚約トラブル回避に。2万円で作れる「婚約契約証書」って？
「婚前契約書」というものをご存知でしょうか？ 主に離婚したときの夫婦・パートナー同士の取り決めを入籍前に交わしておくためのものです。また、「婚約契約証書」は婚約期間中の浮気や婚約破棄が起きた場合の慰謝料などを事前に取り決めておく契約書のこと。それぞれ一体どのようなものなのでしょうか。
2014年末、総資産60億円以上ともいわれる世界的F1レーサー、ジェンソン・バトン氏と結婚した道端ジェシカさん。
それからわずか１年、早くも離婚の話題が持ち上がっているふたりが「婚前契約書」を交わしていなかったこと、それに伴う今後の財産分与についても注目が集まっているようです。
昨今、海外にとどまらず日本国内でも認知度が高まりつつある「婚前契約書」。
主に、離婚したときの取り決めを入籍前に交わしておくものですが、この冬、男女トラブルを回避する「婚約契約証書」という世界初の取り組みが日本で始動したそう。「婚約契約証書」とは一体、どのようなものなのでしょうか。
■結納に代わる儀式としての「婚約契約証書」
お話を伺ったのは、行政書士で一般社団法人プリナップ協会代表理事の多田ゆり子さん。
10年間、不倫や離婚など多くの案件を取り扱う中で、婚約中の浮気や結婚詐欺など婚約にまつわるトラブルに悩む人が多いことに気がついたそう。
「離婚した場合の財産分与などに関する『婚前契約書』に対し、『婚約契約証書』は婚約期間中の浮気や婚約破棄が起きた場合の慰謝料などを事前に取り決めておく契約書です。これまで行政書士として多くの男女トラブルを見てきましたが、じつは婚約破棄によってボロボロになってしまう人って多いんです。
昔は結納や給料３カ月分相当の婚約指輪という文化があり、『婚約』の意識や重みがありましたが、今はそういったことにお金をかけない傾向にあります。そのため、婚約破棄になっても裁判で婚約の事実が証明できず、慰謝料が認められないというケースも。知人の元裁判官（現在は引退）の話では、婚約破棄の裁判は年々多くなっているそうです。裁判となると１年以上かかるケースもザラですし、弁護士費用も負担としてのしかかります。裁判で身体を壊すくらい苦しむなら、最初からある程度の決まりごとを設けておいた方がいいと思うんです。
また、往々にして女性の方が経済的に不利なので、弱い立場の方を助けたいという思いがありました。そこで、婚約にまつわるトラブルを事前に避けるものとして『婚約契約証書』にたどりつきました。作成にかかる料金は事務所での立ち合い込みで（立ち合いの場は公証役場ではなく事務所）２万円なので、結納や婚約指輪よりも安く済みます」
■「婚約契約証書、どうする？」が自然に話せる社会へ
今回、実際に「婚約契約証書」を見せていただきました。
上品なデザインが施された淡いピンク色の用紙は親しみやすく、契約という言葉から想像されるイメージとほど遠いものでした。「いかにも契約書っぽくなるのを避けました」と多田さん。条件欄には、法的に有効とされる範囲内の内容をふたりで決めて記載します。
「今や『婚前契約書』は海外では４組に１組のカップルが交わしているほどメジャーなものです。日本でも徐々に認知度は高まっており、私の事務所でもひと月あたり２～３人が依頼に来られます。契約書作成後は男女ともに将来の不安が取り除かれて幸せそうですよ。それと同じように、婚約が決まったカップルが『婚約契約証書』について自然に話し合え、万が一の場合でもくやしい思いをする方がひとりでも少なくなってほしいですね。今後は、結婚相談所などと連携しながら認知度向上に取り組んでいきたいと思います」
Text／井上こん
