全部読んだら恋の達人!? 大人の恋に役立つ「恋愛小説」5選
いそがしい日々を送る大人女性の皆さん。読書も、実用書や話題の本ばかりになっていませんか? じっくり言葉と向き合うことで、人生はもっと豊かになる。今回は、大人の恋に役立つ恋愛小説をセレクトしてみました。
1.『悲しみよこんにちは』フランソワーズ・サガン
フランスを代表する作家・サガンが18歳のときに出版したデビュー作。世界的なベストセラーとなりました。18歳のヒロイン・セシルが、ひと夏のヴァカンスで大人の女性へと変わってゆくさまが、衝撃的なラストへ向かって描かれています。
本作のテーマは「悲しみよ、こんにちは」というタイトルに集約されています。大人になることは、孤独や虚無、そして悲しみを受け容れること。その悲しみにむかって「こんにちは」と言えることが、大人の女性になる、ということなのかもしれません。
2.『マチネの終わりに』平野 啓一郎
芥川賞作家・平野啓一郎氏による、映画化もされた恋愛小説です。
天才クラシックギタリストの蒔野は、コンサート後の楽屋でジャーナリストとして活躍する洋子と出会います。蒔野は婚約者のいる洋子に惹かれ、洋子もまた蒔野に運命を感じます。東京・ニューヨーク・パリ・イラクを舞台に展開する大人のドラマは、まさに上質なクラシックのマチネ=演奏会を聞いているかのよう。
本作のテーマは、本当に愛した人との恋愛の行方です。惹かれ合いながら、すれ違いや誤解によって結ばれることのない蒔野と洋子は、物語の中で、たった三回しか会っていません。大人だからこそ、若い頃のように大きく踏み出すことができない。でも、真実の愛や運命は信じたい。それこそ、DRESS世代が最も共感できるポイントかもしれません。
福山雅治さん、石田ゆり子さん主演の映画も素晴らしくて、筆者は映画館で二回観ました。
3.『マディソン郡の橋』ロバート・ジェームズ・ウォラー
クリント・イーストウッドとメリル・ストリープが主演し、映画版が大ヒットした本作。アメリカ・アイオワ州の片田舎で出会った主婦と、中年のカメラマンのたった四日間の恋物語です。
結婚15年目で、毎日変わらない日々を送っていた農場の主婦・フランチェスカは、夫と子どもがでかけ、四日間ひとりで過ごすことになります。そこへ道をたずねてきたのが、カメラマンのロバート。ふたりは惹かれ合い、四日間の濃密な日々を過ごしますが……。
出会うタイミングが違っただけで結ばれることのできなかったふたり。でも、そのタイミングでなければ出会うことはなかった。誰の人生にも起こりうる濃密な時間が、クライマックスで永遠の愛に昇華されます。長い人生、いつか起こるかもしれない情熱的な恋愛について、想いをはせてみてはいかがでしょうか?
4.『源氏物語』紫式部
平安時代に書かれた源氏物語が、世界最古の小説であり、恋愛小説であるということを、ご存知でしたか? それ以前も『古事記』や『伊勢物語』などがありますが、いずれも作者は不明。ひとりの作者が書いた本としては、『源氏物語』が最も古い物語なのです。
ご存知の通り『源氏物語』は、イケメン貴族・光源氏の、魅力的な女性たちとの恋愛と、政治的謀略や権力闘争などが描かれます。あらためて読むと『源氏物語』の中に、恋愛ドラマや映画で描かれる要素はすべて含まれています。
仕事や目の前のことに追われ、恋愛から遠ざかってしまっている……という人にぜひ、世界最古の物語小説が恋愛小説であったことの意味を、味わっていただきたいと思います。
5.『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ
2019年、アメリカで一番売れた本。
アメリカ南東部の湿地帯で、家族に捨てられ、湿地帯でひとり生きる少女カイヤ。彼女が愛したふたりの男性と、壮大な自然の摂理の中で生きることの意味。分厚い本ですが、冒頭からひきこまれ、あっという間に読み終えてしまいます。
物語は、カイヤと関係をもった男性の死体が、湿地帯で見つかるというシーンから始まります。ミステリーのような展開と、孤独な少女が自然とともにたくましく成長してゆく物語は、衝撃的な結末へとかけぬけてゆきます。人との関わりをもたなかったカイヤが、恋愛におけるさまざまな感情を、自然の摂理と重ね合わせて理解しようとするシーンに、深く考えさせれます。
情報と人工物に囲まれてしまった私たちは、本来「動物」である自分たちの恋愛について、どれくらい理解できているのだろうか……ということを考えながら本を閉じました。
■大人の恋愛小説に女性の人生が詰まっている
映画やドラマ、マンガと違い、小説は言葉を通して、自分が主人公になったかのような気持ちで、別世界を疑似体験できます。恋愛小説こそ、大人の女性にって、最も必要な本かもしれませんね。
恋愛ライター。LINE記事を得意とし、自立した女性へ向けた恋愛記事を多数執筆。