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万引き被害額は、年間●●●●億円!?

日本の万引きの年間被害額をご存知ですか? 4000億円を超えるともいわれており、高齢者の検挙率が高くなっています。今回は、NPO法人全国万引犯罪防止機構の理事兼広報委員長を務める、菊間 千乃さんに万引きの現状とこれからの対策についてお話をお伺いしました。

万引き被害額は、年間●●●●億円!?

■万引きの年間被害額

最近ニュースを見ていると、高齢者の犯罪が多いという印象を受けます。平成18年のデータによると、先進国における検挙人員に占める高齢者の割合は、アメリカ:1.4%、ドイツ:6.2%であるのに対し、日本は12.1%とダントツなのです。

殺人事件や傷害事件において高齢者が逮捕されるたびに、驚きを禁じ得ないのですが、実は青少年の犯罪と思われている「万引き」においても、高齢者の検挙数が増えています。
 
今年から、NPO法人全国万引犯罪防止機構の理事兼広報委員長を務めております。全国の万引き被害に悩む小売業、サービス業の団体等が加盟しており、万引きの実態を探り、警察と連携しながら、万引き被害の減少を目指して活動をしています。
 
全国で1年間に万引き被害ってどのくらいか、想像したことありますか?

万引きの年間被害額は、およそ4615億円と言われています。1日あたり12.6億円です。

振り込め詐欺の被害額が年間379億円(平成26年)ですから、その被害額たるや、すさまじいものがあります。でも、それほど話題にならないのです。昔からある犯罪、一つ一つのケースの被害額が僅少なこともあり、不起訴になることも多いからでしょうか。

ただ、個々の被害額は僅少でも、小売店各店舗にとっては大きな問題です。たとえば、書店で本を1冊万引きされた場合、その店舗は50冊を売らないと赤字になってしまいます。たかが万引きでは済まされない、死活問題なのです。

日本の3大万引き犯は……

 万引きは青少年の犯罪と思われている節があるのですが、日本の3大万引き犯は、①青少年②高齢者③外国人(集団)であり、平成24年に、検挙数で初めて高齢者が青少年を上回りました。青少年に対しては、学校の道徳の時間等を使い、万引きが犯罪であること、絶対やってはいけないことを教えることができます。最近の調査では、小学生から高校生の9割以上が、万引きは絶対やってはいけないこと、との認識を持っています。

 一方、高齢者に対しては、改めて万引きの悪質性を説明する機会がありません。実際、捕まったらお金を払えばいいと思った等、万引きを安易に受け止めている高齢者が9割弱であり、再犯率が高いことも特徴的です。被害物としては、食料品が大半を占めていて、被害金額の8割は2000円以下と少額です。高齢者の万引き犯からは「弁済すれば済む」「少額であれば処罰されない」「高齢者だから許される」等の発言も聞かれます。

 現在、最も被害が大きいのは、外国人による集団窃盗です。数名で店舗に赴き、役割分担をしながら、棚に陳列してある商品を20点、30点と全て万引きしていくそうです。大型チェーン店では、1店舗である商品が盗まれたことを把握すると、半径数キロ圏内にある他の店舗に連絡をし、当該商品を、取り急ぎ棚から全て撤去するそうです。外国人の集団窃盗の場合、今日は、この商品を盗めという指示があり、その商品だけを万引きするという犯罪形態がとられているようです。

 そして、こうやって万引きされた商品が、インターネットで販売されているという実態も見逃せません。大手衣料品店と全く同じ(ロゴを注意深く見なければ差異が分からない)ようなサイトを開設し、そこで現在正規店舗で売られている商品と同じもの(万引き被害物)を安く販売しているという実態も報告されています。また今年6月には、大学生が書店で万引きした医学書等の高額な本をインターネットのオークションサイトで転売していたという事件もありました。

衣類や書籍には、1つ1つの個体番号が付されていないため、たとえネット上で自分の店舗で万引きされた商品が販売されていたとしても、それが自分の店から紛失した商品そのものであるとの立証ができないため、万引き被害を食い止められないという現状があります。ならば、全ての商品に個体識別番号を付ければいいではないか、と思うのですが、コストが膨大で、書籍や衣類の価額そのものに跳ね返ってしまうことから、なかなか導入に踏み切れないという事情もあるようです。
 
 誰もが、万引きは犯罪であり、いけないことだとわかっているのに、被害が一向に減らないのはなぜでしょうか。万引きは窃盗ですから、起訴されれば、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。但し、初犯である、被害金額が小さい、本人が反省している等の理由により、各小売店が被害届を警察に出さない、又は出したとしても警察が受理しない等というケースがあり、なかなか刑事的制裁だけを振りかざしても、万引き被害減少には功を奏さないようです。

万引き被害を減らしていくには……

 万引き被害を減らしていくには、

①「万引きをさせない教育をすること」(加害者を作らない努力)
と同時に、
②「各店舗が万引きしにくい環境を整備していく」(被害者側の努力)

しか方策はありません。

①については、「飲酒運転」と同様、「万引き」も人として恥ずべき行為であり、万引きをすれば社会的制裁を受けるのだ、そういった世の中の流れを作っていくことが大事であると考えます。
 
②については、すでに各小売店が、監視カメラを設置したり、店内の進行方向を規制したり、マイバッグの持ち込みを規制したり(これが万引き犯を増加させた要因の1つと言われています)、声掛け運動をしたり、と様々な取り組みを行っています。なんだか自分が万引きしそうな人と思われているようで、嫌だわと思うこともありましたが、こういった取り組みをせざるを得ない小売店の気持ちもよく分かります。この点について、万引き防止機構としては、盗難情報共有システムの構築や、顔人証システムの適切な活用、万引き犯に対し損害賠償請求をする方策の示唆等、小売店をバックアップする方策を検討中です。

また万引き犯の中には、「盗みを止めたくても止められない」という精神障害故に、常習的に万引きを繰り返すクレプトマニアという人たちがいます。クレプトマニアを専門的に扱う弁護士とも連携しながら、被害の発生を未然に防ぐ方策についても検討しています。

来年は、万引防止機構が設立されて10周年の節目の年です。万引対策先進国のアメリカとの意見交換会があったりと様々な催しを通して,「万引きNO!!」の啓蒙活動を続けて行きますので、またこちらで少しずつご紹介させて頂きますね。

菊間 千乃

弁護士。1972年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。1995年フジテレビに入社。バラエティや情報・スポーツ番組など数多く担当。 2005年大宮法科大学院大学に入学。2007年12月司法試験に専念する為、フジテレビを退社。 ...

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