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誰にも見せない自分だけの幸せ。高山都のランジェリーに宿る哲学

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「私のバストを私なりに楽しむ」と決めてから、ランジェリー選びが楽しくなったという高山都さん。お気に入りの下着は、自分の気持ちを高めるスイッチでもあります。人生との向き合い方にも通じる、都さんの「ランジェリーに宿る哲学」とは?

誰にも見せない自分だけの幸せ。高山都のランジェリーに宿る哲学

■「私は私のバストを、私なりに楽しもう」と決めた

大きくて、おもわず谷間に目を奪われるような、色っぽいバスト。
もちろん素敵だけれど、そういうバストだけが世間から「いい」と言われることには、昔から違和感がありました。

私は若いころからずっと、胸が小さいほう。だから、“大きく” “セクシー”に見せるためには、寄せて上げたりパットを入れたりしなければなりません。

でも本当に、わざわざそんなことをする必要があるのかな?
たとえばドレスを着るときに、ボリュームのある胸だと華やかに見えるのはわかります。
だけど、胸が小さいからこそシルエットがきれいに出せる洋服だってある。そもそも私自身、盛るためのパットなんてないほうが、つけていて心地よいのに……。

そんなことをずっと考えていて、あるときから、人と比べるのをやめました。
その人の雰囲気によって似合うファッションが違うように、バストの大きさによっても、似合う服や着こなしは変わります。なのにバストだけ、みんな同じ「良さ」を求める必要はありません。

「私は私のバストで、私なりの楽しみ方をしよう」と決めたら、なんだか気持ちも楽になって。まず、下着の選び方が変わりました。
「どうすれば大きく見えるか」「谷間がつくれるか」という視点が、いらなくなったんです。

それまではワイヤーのあるものばかり選んでいたけれど、私のサイズならノンワイヤーでも充分。もちろん、パットもつけません。肩紐が細くて華奢で、すっきりと女性っぽく見えるデザインが、いっそう好きになりました。

自分が本当に気に入るランジェリーを、ビジュアルやつけ心地で、心底楽しく選べるようになったんです。

■背筋が伸びる「よいランジェリー」にも出会えた

自分のバストを認めて、愛してあげる。
その個性に合わせて、素敵な下着を選ぶ。
そんな習慣ができてからしばらくして、この数年は「よいランジェリー」にも興味がわいてきました。

20代のころは下着にまではなかなかお金をかけられず、上下セットで数千円のものばかり。「もしいま交通事故に遭って、万が一下着を見られることになったら、恥ずかしいな」なんて思うような柄物をつけていたこともありました……。

だけど、昔のバイト仲間が夢を叶えてランジェリーデザイナーになり、自身のアトリエを開くということで、お祝いに駆けつけたとき。サイズを測ってもらい、はじめてオーダーの下着をつくってもらったんです。お洋服ではなく下着に何万円もかけるなんて、なんだかドキドキしてしまいました。

でも、その下着は国産のコットンを使っていて、縫製も丁寧。繊細なレースやこだわりのデザインに、彼女の哲学がぎっしりと詰まっていました。気づけば製品だけでなく、彼女のアイデンティティや美学のファンにもなっていたんだと思います。

「下着なんて誰にも見せないし」と思っていたけれど、こうして出会ってみれば、やっぱり良いものは良い。身につけるだけで、自分の背筋がすっと伸びたのを感じました。

その日、家に帰ってから。私は迷いなく、いままでの古い下着をすべて捨てました。新しく手に入れた、この美しいランジェリーに似合う自分になれるように。前向きな断捨離は、私に大きなエネルギーをくれたんです。

もしかしたら、若いころ一緒に夢を語り合っていたバイト仲間がつくった下着だから、という理由もあったかもしれません。
彼女の名前は、栗原菜緒。いまをときめく「ナオランジェリー」の創業者です。

■誰にも見せないからこそ、自分のスイッチを入れてくれる

長くモデルをしてきたから、オンのときの下着は、飾り気のないベージュが鉄板。お洋服に響かない、シームレスなデザインが当たり前です。肩紐がうっかりのぞいたり、Tシャツから透けてしまったりするのは絶対に許せません。せっかくのファッションも台無しになる気がして、いつも注意しています。

そんな感覚が強いせいか、オフのときも、私にとってのランジェリーは見せちゃいけないもの。もしくは、本当に特別な人にしか見せないもの。

だからこそ、お気に入りをひそかに身につける楽しみも生まれました。自分だけの世界で、自分の気持ちを高めるスイッチを入れるような感覚です。

たとえば、この春はおうちで過ごす時間が多かったと思います。私もそうで、毎日自粛してばかりいたけれど、それではなんだか気分が上がらない……。お出かけしないから、ファッションを楽しむ機会もありません。

そこで、クローゼットで出番を待っていた、新しいランジェリーをおろしてみたんです。どこにも出かけない、誰にも見せない。完全に自分だけのためなんだけど、その時間がとてもよくて、気分が明るくなったのを実感できました。

だからその勢いのまま、同じブランドの新商品を買ったりもして。自分のためだけに選び、自分のためだけにつけて、自分のためだけにまた新しいものを買うのは、とても豊かで幸せな時間でした。

お洋服と違って、冒険しやすいのもおもしろいところ。みんなに見られる洋服では勇気が出なかったり、パブリックイメージとは違うデザインも、気軽にチャレンジできます。
私はいままで、なんとなくずっと黒いランジェリーばかりつけていたけれど、ふと「もっと明るい色もいいかも?」と思い、いくつか試してみたんです。そうしたら案外、白も悪くない。ちょっとだけ、新しい扉があきました。

■自分の魅力も、自分の幸せも、自分で決める

いま私にとって、ランジェリーは、自分の軸になるもののひとつです。
たとえば、どれだけ素敵な下着をつけていても、姿勢が悪ければ台無し。バストを本当に美しく見せるためには、自分自身をはつらつとさせなければいけません。

そのために私が日ごろから続けているのは、走ること。
コロナ禍でランニングすることには賛否両論あったけれど、ソーシャル・ディスタンスをとってひとりで走るぶんには、いいことづくめです。自粛でもやもやした心も晴れるし、なにより筋肉がついて、姿勢がよくなる。自分を整えることとお気に入りのランジェリーは、実はこうやって、つながっているんだと思います。

若いころは「大きなバストがいいのかなぁ」と悩んだこともあったけれど、本当は、バストの大小と美しさは関係ありませんでした。

大切にするべきなのは、きっと「サイズ」じゃなくて「印象」。
そして印象をつくるのは、姿勢のように自分で磨けるものや、心に秘めた「今日は素敵なランジェリーをつけている」という自信、なんだと思います。
みんながみんな、おっぱいばっかり見てるわけじゃない。その上の顔つきとか、その奥にある生き方を、感じ取ってくれるはずです。

SNSでは、毎日みんなの幸せそうな姿が流れてきますよね。ひとりで家にこもっているとき、たまに出かけたスーパーで仲良し家族を見かけると、急に寂しくなったりもして……。隣の芝生って、どうしても青く見えてしまいます。
だけど、人生における幸せに、正解なんてありません。だったら自分が選んできた道に自信をもって、いつも小さな幸せを感じていたい。

……人生の幸せも、バストの大きさやかたちも、ランジェリーの楽しみ方も、人それぞれ。
ときどき揺らぐこともあるけれど、自分に合うものを見つけていけばいいのかなって、信じています。

編集協力/菅原さくら

Photo/宮本七生

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高山 都

1982 年生まれ。モデル、女優、ラジオパーソナリティーなど幅広く活動。趣味は料理とマラソン。

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