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髪を好きになったら、自分も好きになれた。“私なんか”が“私でも”に変わるまで

「器量が悪い」と言われ続け、ファッション誌のライターになってからも、“美しくあろうとすること”から距離をおいてきた佐藤友美さん。ところが、美容師さんにかけられた何気ない言葉をきっかけに、人生の歯車が噛み合い始めた。「私なんか」が「私でも」に変わるまでのお話です。

髪を好きになったら、自分も好きになれた。“私なんか”が“私でも”に変わるまで

■お前は器量が悪いのだから……

物心ついてから、ずっとクラスの男子に「ブス、ブス」と言われて育った。親戚には、「あんたは器量が悪いのだから、一生結婚できなくても食べていけるように、手に職をつけないとダメだ」と言われていた。学生時代はアスリートだったので、髪型は猿のようなショートカット。女子トイレに入ったら「ここ、女子トイレですよ」と注意されるくらい、女に見えない姿だった。

そんな私が、何の因果かファッション誌のライターになってしまった。まわりはみんなおしゃれで輝いているように見えた。それでも「ブサイクな私が見た目に気をつかっているなんて、逆に恥ずかしい」という変な自意識過剰ぶりで、わざとすっぴんで撮影現場に行ったり、変な服ばかり着ていたりしていた。

あの頃は、「このアイシャドウで一気に美人顔♡」と原稿を書くたびに「おいおい、お前みたいなブスが書くなよ」と自分ツッコミを入れながら仕事をしていた。今、振り返れば相当こじらせていた。

■髪には上下関係がない

あれはたしかライターになって半年くらい、25歳の頃だったと思う。

その頃私はヘアページを何度か担当し「髪の影響力ってすごいかも」と思い始めていた。メイクと違って、髪だけだったら、私でも今よりおしゃれにできるかもしれない。そんなことを考え始めたのだ。

例えばメイクには「目指すべき顔」のようなものがあると感じる。いろんなメイクページを見てきたけれど、「二重を一重に見せましょう」とか、「顔を大きく見せましょう」とか、そういう企画はなかったような気がする。

二重が、高い鼻が、小顔が“正解”。正解という言葉は強すぎるかもしれないけれど、多くの人は「目指すべき美人顔」に向かって自分の顔をメイクしているように感じる。

それに比べて、髪には正解がない。上下関係もない。

ロングヘアのほうが偉いわけでもないし、ショートヘアがいいわけでもない。その人にとって似合う髪と似合わない髪があるだけ。上下がないということは、人と比べなくていいということでもある。当時の私には、それがすごく救いに思えた。

そこで私は、それまで何もしゃべらずおまかせしていた美容院で、初めて「こんな髪型にしたいんです」と雑誌の切り抜き写真を渡してみた。切り終わったあとの私の髪は、なんだかいつもよりちょっといいような気がして、少し気分があがった。

■「かわいいですね」の一言をきっかけに、人生が大きく変わった

その数日後、私の人生を変える出来事が起こる。

仕事でお会いしたある美容師さんが、私の髪を見るなり言ってくれたのだ。「あ、その髪、すごく似合っていてかわいいですね!」って。

「か、か、か、かわいい?????????」

25歳になって生まれて初めて言われた「かわいい」に、私は半ばパニックで舞い上がってしまい、多分かかとが3センチくらい浮いたと思う。家に帰ってからも「かわいいって言われた!」「私(の髪)かわいいって言われた!」と、何度も思い返してにやにやしていた。

ちょっと大げさに思うかもしれない。でもこの気持ちは幼い頃から「かわいいね」と言われ続けてきた人には絶対わからないと思う。

「髪だけはブスでも褒められる」

そんな勇気をもらった私は、それから、顔はともかく髪だけは大事にしようと思うようになった。どんなに忙しくても2カ月に1回は美容院に通うと決めた。

すると不思議なことに、仕事もプライベートも突然順調に滑り出した。

「私なんか」が口癖だったのが、少しずつ自分に自信を持てるようになったからだろうか。駆け出しのライターだったにもかかわらず、どんどん仕事を紹介していただき気づけば連載を持たせてもらい、全国で講演をさせてもらうようになった。編集長を任され、本も出させてもらった。

そのどれもが、あの日「髪、かわいいですね」と言われ、自分に少しだけ自信を持てるようになったことがきっかけになっている。

私がヘアページにのめり込み始めたのは、この頃からだ。元の顔立ちや体型や年齢やセンスに関係なく、髪は平等に人を輝かせてくれる。それはなぜかというと、髪は誰かが決めた正解を目指すのではないからだ。

人と比べてどうこうじゃない。
ただ、自分史上、一番素敵になればいいだけ。
誰にでも同じだけ、チャンスがある。

私は、髪の、ここがたまらなく好きだ。

■なりたい自分を表現できる人は、美しい

今、私は、全国の女性に髪型をアドバイスするワークショップを行っている。新刊『女は、髪と、生きていく』にもその方法を詳しく書いたが、似合う髪型が見つからない……。そう悩む女性には、まず自分の棚卸しをしてみようとアドバイスしている。

髪型には実は「性格」がある。かっこよく見える髪型、かわいく見える髪型、大人っぽく見える髪型、若く見える髪型、知的に見える髪型、癒し系に見える髪型……。

だから、自分が「どんな自分になりたいか」を考え、それを実現する性格を持った髪型を手に入れると、人生が本当にうまくまわるようになる。第一印象を、髪の印象でコントロールできると言えばいいだろうか。

顔立ちや髪質に似合うだけではなく、自分がどうなりたいか、つまり自分の心にも似合った髪型を手に入れた人は、本当に美しくなる。大人になればなるほど、自分を知れば知るほど、髪はあなたの味方になるのだ。味方どころか、武器になると言ってもいい。

最近では、髪型だけでなく、香りでも自分を表現できることが気に入っている。お気に入りのヘアケアライン「Flowers」は、シャンプー&トリートメント、そしてヘアオイルに、自分の好きな香りをブレンドすることができる。

その日会う人の顔を思い浮かべながら、今日はどんな自分になろうかなと考えて、髪型と香りを選ぶ瞬間がとても好きだ。

髪を好きになれると、自分を好きになれる。

私は、髪の、ここがたまらなく好きだ。

佐藤友美さんのイチ推しコスメ

ヘアケアブランド「Flowers(フラワーズ)」の「パフュームブーケ(Perfume Bouquet)」

ベースとなるオイルに、パフュームブーケを数滴たらす。

男友だちと会うときは、アップルとカシスがトップノートのNo.2。
女友だちと会うときは、レモンやグレープフルーツが爽やかなNo.3。

化粧水やローションの香りと合わせるのも楽しい。
最近いただいたサンタ・マリア・ノヴェッラのローズウォーターがとてもいい香りなので、髪もそれに合わせて、ローズがトップノートのNo.5をよく使っている。

ときどき発売されるシーズン限定の香りを使うと、その季節を髪にまとっている気持ちになる。

Text/佐藤友美(@SATOYUMI_0225

佐藤友美

日本初のヘアライター&エディター。20年弱のヘアライター人生で、約4万人、200万カットのヘアスタイル撮影に立ち合う。「美容師以上に髪の見せ方を知っている」とプロも認める存在で、日本はもとより、海外でも美容師向けの講演を行い...

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