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恋をすっ飛ばした、結婚や出産が本当に楽しいか?

脚本家・北川 悦吏子さんに、女性の、恋愛、結婚、出産について連載をお願いしました。まずはアラフォーシングルの気になる響きから・・・。

恋をすっ飛ばした、結婚や出産が本当に楽しいか?

アラフォーシングルのみなさん、こんにちは。さてはて。このアラフォーシングルってどんな響きだろうか。言われた方は、どう思うんだろうか?

私は、なんとなく、すぐに、ふかっちゃんが浮びました。深津えり。いや、だから何ってことはないけど。あの人、アラフォーシングル、ですよね。いえ、ただ、余談でした。

さて、この大臣を引き受けるに当たって(大臣!だよ、すごいよ。しかも、恋愛担当!何、それ?!)、アラフォーシングルの方といろいろお話をしてみました。みなさん、もちろん、考えてる。結婚、出産。それを自分の人生から、完全に外すかどうか、というテーマ。命題。

ここを無しにして、ないことにして、「恋」は語れないよね。さあ、恋をしましょう。ときめきましょう。まだまだみんなキレイです。と言われても、なんかこう……夏休み明けの校長先生の朝礼の挨拶みたいに、上滑りだと思います。

40を手前にして、婚活にいそしむ人もいるでしょう。なんとか、子供生むぞ、いっそシングルマザーでもいいと意気込む人もいるでしょう。それについて、否定はしません。私は、結婚も出産も、経験しています。

それが、悪かった、という結論は自分では出していません。良かった、という結論も実は出ていないんだけど。ま、それはおいおい。

確信的に結婚、出産に向けて、動く人のことを、どうこう言う気はまるでないし他人に迷惑かけるわけではないので、それは個々人の自由。そして、たぶん、ここは何が正しい、という結論は出ないところ。

なので、私自身の考えを書いてみるね。一般論でも、普遍的真理、でもなく、私が、どう考えるか。私だったら、どうするか。

私だったら、私がアラフォーシングルだったら婚活もしなければ、出産も焦らないと思う。もうそれで、子供を生めなくなってしまうとしても。結婚とか、出産というのは、巡り合わせ、だと思うので。マストじゃないよ。義務じゃない。そこに確実なしあわせがある、とも思ってない。それは、その人それぞれの人生のお話なので、いちがいに、どうとは言えない。結婚と子供が絶対しあわせ、って神話でしょう?

人はどうしたって、自分の人生を生きるしかないので、その中で、何を感じ、何をするか?

私、を例に取ってみれば、ちょっと特殊な例なんだけど、聞いてみますか?

高校の時に、ある、体の異常が見つかって、子供は無理、と医者に言われる。親は泣く。今より昔だったし(当たり前)、田舎だったので、嫁に行けないと思ったんでしょうね。「こんな体に生んでしまってごめんなさい」
うちひしがれる父と母が芝居じみて見えて、何この光景、なんかメロドラマみたい、と思ったら、急に笑いがこみあげて、たまらず、声をたてて笑ってしまいました。だって、私の体の異常は誰のせいでもないし、と思ったし。笑った私に、父親が激怒。「えりちゃんは、いい根性しとる。親が泣いて謝ってるのに、笑った。その神経で、その体でも(病気のこと、ですね)、ふてぶてしく生きていくわ」

その父の予言通り、私は、上京し大学に入り、脚本家になった。

持病があって子供は無理、というのは、つきあうごとに、その時々の、彼氏に話していた。

26歳か27歳の時でしょうか?「今、体の調子がいいです。子供生むなら今です。今だったら生めます。生んでください」と主治医に言われました。私、パニック!つきあってる彼氏に相談しました。「今だったら、生めるそうだ。そう言われると、なんか絶対当たる宝くじみたいで、焦る。買わないと損、みたいな気がする(←もちろんこんな面白いことは言ってません。今ちょっと、脚色してます)。どうしよう?」

彼は、「無理」ということでした。それはそう。まだ若かったし。やりたいことを成就させる途中だったし。

そして、子供を生む、という選択はしませんでした。ちょっと、惜しかった気もしましたが、だいたい、「今、生みましょう」って妙な話だし、とも思っていました。

で、結婚します。(ちなみにこの時の彼氏とは別の人)

結婚後、何年かして子供ができた時は、焦りました。これは、早くおろさないと私が死ぬ?くらいな勢いで「これは、どうしたもんでしょう?」と主治医に相談すると、リスクはありますが、今の感じなら大丈夫でしょう。ということで、子供を生みました(主治医は、変わってません。彼氏は変わったのにね・笑)全ては、巡り合わせです。

でも、めでたしめでたし、にはならなくて子供を生んだことと関係があったかどうかは、定かではないけれどやはり、私としては無理な選択だったのかもしれない。その後、10年以上に渡って、私はまた難病に苦しむことになります。

なんていうか、こう。

人生ってどうなるかわからない、というのが私の実感です。私は、この10年、ベッドの上の方が長かったんじゃないか、という生活を強いられました。病気以外だって、地震は来るし、放射能はこわいし。

病気に苦しんだ私は娘だけは、病気にしたくない、と鬼のように思い込み放射能を恐れて娘を連れて、沖縄に渡り、沖縄の中学校の入学手続まで取ったのに、キレた娘に、翌日、とっとと東京に帰られ(きっと、クラスにボーイフレンドがいたせいだ)。ただひとり。沖縄の海をボーッと眺めていた、あの日の、あの孤独。忘れられません。

そしてまた、自分が脚本家になる、こうして、大勢の人に向けて発信する立場になる、なんていうのも、これも、想定外のことでした。

いいことも、悪いことも、全て、予測不能。何が、起きるかわからない、というのが、私のこの世界に対する人生に対する実感です。

そんな中で、どう自分を失わず、納得できるように、生きていくか。

難しいけど、日々それは心がけます。

そうすると、よ~くつきつめると、結婚したい、とか子供が欲しい、が「好きな人がいる」の前に来るのは、私は不遜だと思う。そんな風に、自分の人生って手玉に取れるものではないのではないでしょうか?

昔、書いたドラマのセリフ。ひとりでいてしあわせでいられない人は、ふたりでいても、しあわせにはなれないよ。

本当にそう思います。

まっさらな、気持ちで恋をしませんか?自分の足らないところを、自分の不安なところを埋めてもらうための結婚、ではなくて。

その方が、ずっと遠くまで、視界は広がるし人生は、楽しい、と思うのです。

ということで、次回からはいよいよ「40からの恋」についてです!

北川 悦吏子

脚本家。『ロングバケーション』『ビューティフルライフ』などの数々の恋愛ドラマのヒット作を生む。活動は多岐に渡り、作詞やエッセイでも人気を集める。映画『新しい靴を買わなくちゃ』では、脚本とともに監督も担当。

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