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「恋人を作っていいよ」と告げられた妻。セックスレス夫婦が唯一無二の信頼関係を築くまで

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第一子出産後に妻が夫から告げられたのは「できれば、もう一生セックスはしない人生を送りたい」という言葉。セックスをしたい妻と、したくない夫――。稲田さん夫妻(仮名)はどのようにしてセックスレスと向き合い、ふたりの関係を保つことに成功したのでしょうか。

「恋人を作っていいよ」と告げられた妻。セックスレス夫婦が唯一無二の信頼関係を築くまで

現在、4歳になる子どもと一緒に、都内で暮らしている稲田さんご夫妻。妻の舞子さんと、夫の淳史さん(それぞれ仮名、ともに会社員、35歳)が出会ったのは、約7年前のこと。

当時、地方住まいで転職を考えていた淳史さんが、就職活動の下見を兼ねて東京を訪れた際に、共通の友人を介して知り合い、すぐに意気投合。淳史さんが地元に戻った後もスカイプを通じて交流を続け、ひと月もしないうちに交際がスタート。

お互いの家を行き来して関係を深めていった3カ月後、淳史さんの転職が決まり、都内に引っ越してくることに。それを期に一緒に住み始めると同時に、結婚に至ったというふたり。

けれども結婚後、ひとつだけ夫婦を悩ませる問題が。それは夫婦間のセックスについてでした。

■女としての自信を、セックスで満たしたいと思っていた

――おふたりの間にセックスレスの問題が持ち上がったのはいつ頃ですか?

稲田舞子さん(以下、舞子): 恋人同士のときは、遠距離で付き合っていたんですけど、たまに会えたところで、彼は「久しぶりに彼女と会えた、やりたい」みたいなのがない人だったんです。それでも「泊まりに来たら、こういうことをするもんだよね」という感じで、ある程度は定期的にセックスをしてはいました。

けど、結婚して半年くらいで、彼がうつ病になってしまって。イチャイチャしようよっていう空気がまったくなかった時期が1年くらいありました。それからは、朝ドラが一周する周期で「そろそろ一回しておく?」くらいになりました

――朝ドラは1クール半年……ということは、1年に2回ですね。

舞子:そう。結婚当初はドラマの1クール周期だったのが、朝ドラになり、やがて大河ドラマになり……みたいな感じでだんだんと周期が伸びていって。お互いに子どもが欲しいっていうのは同意していたんですが、気持ちの元気がないから、セックスは最低限で仕方ない。そんな矢先、1年ぶりくらいにしたセックスで、奇跡のように子どもを授かったんです。

――わぁ、それはよかったですね。

舞子:けど女性って、子どもをリリースした途端に、急に周囲から“お母さん”扱いをされるようになるじゃないですか。「私は自分の子どものお母さんなだけで、みんなのお母さんではないんだけどな」っていう違和感があって、夫に対して「私はあなたにとって、女だよね?」っていうのをすごく確認したくなったんです

それでも、のらりくらりとかわされて。なんでも話せる関係だったので、「私はこういう理由で触れてほしい。法律上、私に触れられるのはあなたしかいないから、どうにかしてもらわないと困る。嫌ならその理由が知りたい」と話し合いを持ちかけました。

そしたら、「実はそういう欲情がまったくなくて、気持ち悪いのを我慢して今までしてた」って言われたんです。

――すごくストレートに、セックスをしたくない理由を告げられたんですね。

稲田淳史さん(以下、淳史):「子どもが欲しかったからしてたけど、もう役目は終わったと思ってる。できればもう一生、セックスはしない人生を送りたい」というようなことを伝えましたね。

舞子:そう言われちゃったら「そっかぁ」ってなるというか。今までごめん、無言の圧をかけてさぞや暮らし辛かっただろうと思いました。彼は、いわゆるアセクシャルの人だと思うんですよ。欲情しないというか。

――アセクシャルっていうと無性愛のこと……性的な行為への関心や欲求が少ないか、存在しない性指向ということですね。淳史さんは、ご自身の性欲についてどうお考えでしたか?

淳史:特別に(他の男性と)違うっていう認識はなかったですね。そもそもそんな話って、男性同士でも踏み込んですることもないので。なので、他の人の普通がわからないし、ひとりでまったくしないというわけでもなかったので、人並みなのかなとしか思っていなかったです。でも、結婚してから、行為に対して自分が前向きになってないなっていうのはなんとなく感じて。

舞子:これは彼に対してちょっと申し訳ないんですけど、振り返ると、彼とのセックスがめっちゃ気持ちよくて楽しかったかというと……。彼は嫌々していたのもあって、作業みたいな感じでもあったなって。だから今となっては、なんであんなに夫とセックスがしたかったんだろうなって思うんです。自分の不安をそこに擦り付けていたというか。

――女としての自信を、夫である淳史さんに救い上げてほしいっていう。

舞子:はい。なので、彼が正直に「これから先、セックスをしたくない」って言ってくれたことによって、その問題にふたりで向き合えた。触れてもらうことで不安をごまかそうとしてた自分とも向き合えたので、言ってくれて本当にありがとうと思ったし、それを言える信頼関係を築けてきたことが、すごく自信になりました。

■夫からの「外に恋人を作っていいよ」宣言


――でも、したいという舞子さんの気持ちは変わらずにあるわけで、それはどうやって解決することになったんですか。

舞子:「あなたの気持ちはわかったけど、人に触れてほしいという私の気持ちをどうしたらいいか、夫婦だから一緒に考えてほしい」って言ったんです。

淳史:考えた結果、「外で恋人を作ってもいいよ」と提案しました

――淳史さんに「恋人を作ってもいい」って言われて、舞子さんはどういうアクションを取ったんですか?

舞子:「ラッキー、これでなんぼでも恋できる」って思いました(笑)

淳史さんは「外で恋人を作ってもいいよ」と提案

――今、お付き合いしている人は?

舞子:います。「恋人を作っていい」宣言から3、4年かかりましたけど……あ、最近の話なんですよ。

――けっこう時間が空いたんですね。

舞子:それまでも好きになった人はいたんですけど、「ありがたいけど、困る」って振られたりして。そりゃそうですよね。

――相手も、どういう関係を築けばいいのか、理解しにくいですしね。

舞子:こっちが納得してても、相手の男性からしたらすごくうさんくさい話じゃないですか。端から見たら、子どもがいる人妻と恋=不倫だし。

独身の人と付き合って、結婚したいなんて言われても、私は家庭を壊したいわけじゃないから困っちゃうし、彼女がいたり家庭のある人をいいと思ったところで、その相手の彼女や奥さんが了承してくれない限りは傷つく人ができちゃう。そう思うと、もうどうしていいかわからない。

私自身も、セックスだけがしたいのか、信頼関係を築きたいのか、信頼関係を築いた上で肉体関係を持ちたいのか、よくわからない時期が長かったです

――今の恋人はどういう方なんですか?

舞子:独身で、ずっと友人の期間が長かった男性です。なので、うちの事情も知ってるし、彼もいずれ結婚して家庭を持ちたいから、「『この期間だけ恋人だったね』って感じで、付き合えたらいいね」と言ってて。ドライといえばドライだと思うし、理解がある人ですね。

――淳史さんは、舞子さんの恋人に対して、まったく嫉妬はしないんですか?

淳史:いや、もうそれは自分で決めたことでもあるし。

――逆に、「NTR(寝取られ)」で興奮したりとか。

淳史:取られるっていう感情はあまりないですね。根本的にそこにあまり興味がない。三大欲求の大半は睡眠欲と食欲なので。

舞子:彼にとっての射精は、排泄と一緒だそうです。

――たとえば舞子さんが、マッチングアプリなんかを使って、名前も知らない男性と一期一会で、アバンチュールを繰り返すっていう可能性もあったと思うんです。淳史さんは、それでもOKと思っていました?

淳史:体だけの関係を他に求めてほしいのかと言われると、それは違うのかなぁという気がしますし、そもそも彼女はそういうことはしないだろうなとは思ってました。それに付随してくるトピックスも、全然盛り上がらなくなってきちゃうので。

――トピックス?

舞子:彼は、私の恋バナを聞くのが好きなんです(笑)

淳史:「好きな人ができた」っていう話をずっと聞きながら、彼女が一喜一憂してる感じが、それだけでも相当のトピックスになって。

舞子:『テラスハウス』を観てる感覚。

淳史:僕にとっては『テラスハウス』よりも全然楽しい。

――なるほど……おふたりの関係が、世間一般で言われている夫婦というよりも、まるで親友同士のようにも思えます。恋バナを聞いて応援するって。

舞子:先に親友になってから結婚したっていうのが、私たち夫婦の関係なのかもしれません。私にとって彼は性別を超越してる存在で、なんでも話せる。

初めて好きな人ができたときは、やっぱり葛藤があって。「子どもがいるのに好きな人ができた」なんて話せる相手は彼しかいないので、話してみたら「うまくいったらいいね」って言ってくれたんです。

淳史:ヤキモチの対象ではないんです。恋人は、僕ができないことをできる人だから。僕も一緒に食べたい美味しいご飯を、他の誰かと一緒に食べに行かれたらヤキモチをやくけど、そうじゃないから

たとえば、ランニングが嫌いな人が皇居ランに誘われても、苦痛でしかないじゃないですか。それだったら楽しく一緒に走れる人と走ってきなよ、と思うんです。

淳史さん「妻の恋人には、まったく嫉妬はしないです」

■「一緒に暮らしたい人」「楽しくセックスできる人」は、別でもいい

――さっき、セックスだけがしたいのか、信頼関係を築きたいのか、その両方か、って話をされてましたけど、恋人の彼とは、どこに落ち着いたんですか?

舞子:信頼関係を築くっていうのは大前提で、女性として欲情してほしい。本能的に欲されて、きちんと触られたい。なので、信頼関係を築いたうえで、女として欲されるっていう、そこのふたつが満たされるのが大事だったんだなって。結果的には今すごく満たされています。

――恋人と付き合う上で「これはNGにしておこう」っていうルールはありますか?

舞子:うちは朝帰りは全然OKなんですけど、子どもが起きるまでに帰るようにしています。

今日こうやってマスクで顔を隠してるのも、子どもの気持ちを考えてのことです。いつか子どもが、この関係性を知ったときにどう思うかっていうのは、懸念のひとつで。子どもが大きくなったときに、私たちの関係性をどう説明するか。それはそのときになってみないとわからないので……。

舞子さん「子どもが将来私たちの関係をどう思うかは、懸念のひとつですね」

――最近、度々話題にもなるポリアモリー(関係者全員と合意の上で、複数のパートナーと同時に性愛関係を結ぶこと)とは、舞子さんはまた違うのでしょうか。

舞子:私は、セックスをする相手はひとりじゃないと嫌だなって思うんですよ。複数の人とセックスや恋愛をしたいとは思わないので、ポリアモリーとは違うのかな。現状、私がセックスする相手は恋人の彼ひとりで、まだまだ他に彼氏を作りたいかと言われると面倒くさいなって思うし、もしそういう人が現れたら、どっちか選ぶだろうなと思うので。

――生活を共にする夫の淳史さんと、信頼関係もありつつセックスもできる恋人がいる、今がちょうどバランスが取れている、と。

舞子:はい。登場人物の全員が納得してることだし、誰にも嘘はついていないので、夫がいて恋人もいるという今の状況に罪悪感はないです。周りの人が「不倫だ」と言おうが、そう思いたければそれでいいって感じです。

――これだけセックスレスの夫婦が増えていると、結婚とセックスとを両立させるって無理なのかもしれないって思います。

舞子:私、結婚したばっかりの頃、「おじいちゃんおばあちゃんになってもセックスをしてたい」って夫に言ってたんですよ。「ずっとそういう関係でいたい」って。そういう理想はあったけど、冷静になって考えたら、人として一緒に暮らしていける人とセックスを楽しくできる人は、別で当たり前なんだなって思うんです

「夫婦だからセックスしよう」って無理矢理にがんばっていたら、私と夫とは、たぶんもう一緒に暮らしてないと思うんですよね。一緒にいるのがつらくなっちゃってたと思う。

――必ずしも夫婦でセックスをしなくてもいい、という価値観が一致したのが良かったんですね。

淳史:彼女に「外で恋人を作っていい」と伝えたとき、離婚を言い渡されるかもしれないという考えが、よぎらなかったわけではないです。でもそれ以上に、彼女にとって拠り所でありたいとも思って。

僕はずっと、誰かと結婚することを想像できなかったんですけど、彼女と初めて会って話したときに、この人となら想像できると思ったんです。彼女とだったら一緒に暮らしていけるって。そういう人って、世の中に何人もいるとは思わないので、彼女は家族としてかけがえのない人です。

舞子:もちろん、セックスレスをなんとかしようとして、夫婦でカウンセリングに行ったりして、夫とのセックスにこだわる人もいると思うし、価値観はそれぞれでいい。けれども私は夫と、体のつながりがなくても不安になることがない。唯一無二の信頼関係を築けているなって思いますね。

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大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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