1. DRESS [ドレス]トップ
  2. 美容/健康
  3. 私のおっぱいは、この世界のオンリーワンのおっぱいだから

私のおっぱいは、この世界のオンリーワンのおっぱいだから

40代半ばの私はいつからか、自分のおっぱいと人のそれとを比べて、大きいだの小さいだのと一喜一憂しなくなった。私のおっぱいは、この世界でオンリーワンのおっぱいだ! と、慈しむことすらできるようになった。そこに至るまでの戦いや葛藤を綴りたい。

私のおっぱいは、この世界のオンリーワンのおっぱいだから

40代半ばの現在、私は案外、自分のおっぱいに満足している。といっても、誰が見ても手放しで「素敵なおっぱい!」と誉めたたえられるようなものでは決してない。

このコラムを書くにあたり、改めて鏡に自分のおっぱいを映してみると……「ルーブル美術館所蔵の、中世のオバハンを描いた裸婦像」といったテイ。どう見ても全体的にプチ中年太りなので、腕も丸っこいし、腕とおっぱいの間に、はみ肉で構成される第二のおっぱいが出現している……。

なんてメリハリがないバディなのだ……そう落胆するものの、「でもさ、こういうのを熟しているというのじゃないかしら?」とも考える。若いときには決して着ることができなかった、大きく胸元が開いたニットやワンピースを着れば、見ようによってはデブだけど、見ようによってはエロいとも言えるし、と。

若くて痩せていた頃、小さくて薄かった私のおっぱいは、今では分厚くふてぶてしい変貌を遂げた。おっぱいに比例して、心の持ちようだって、どんどん図々しくなっているけれど、そんな熟した自分が、私は決して嫌いじゃない。

食べたいものを食べ、飲みたいものを飲み(だから太るのだけど)、言いたいことを言って、笑いたいときに笑って、しょっちゅう怒っていて……とにかく今の私、生きやすくて最高! とすら思っている。未だに「若さ至上主義」という価値観の人が多いのも確かだけれど、年齢を重ねると、私のように、自分の体を、おっぱいを、静かに認めていける度量が持てるようになる女性は多いと思う。

人と比べて、大きいだの小さいだのと一喜一憂しない。私のおっぱいは、世界でただひとつの、私なりの情緒が宿ったオンリーワンのおっぱいだ! と、慈しむことすらできるようになるのだ。

だから、もし自分のおっぱいに悩んでいる若い女性がいたら、「大丈夫、どんどん変わっていきますから!」と女の先輩の端くれとして、余計なお世話を承知で声をかけたいし、この境地に至るまでの私の葛藤を少しばかり披露したいと思う。

■ひとつとして「同じおっぱい」は存在しない

女性のおっぱいというのは実に不思議だ。顔と一緒で、誰ひとりとして同じ表情を持っていない。そして、洋服を着ているときの、その女性の持つ顔や雰囲気と、むき出しにされたおっぱいの持つ表情には、必ずしも関連性がないところが、本当に興味深い。

だから私は「女性の見た目/パーソナリティ」と「おっぱい」の関係に人一倍興味を持っているし、40代半ばになってもちっとも衰えない驚愕の視力(1.5~2.0)の持ち主なので、温泉やスポーツクラブのお風呂に行くと、他人のおっぱいのチラ見と考察に余念がない。

若くてピチピチしていて綺麗な女の子が、いざブラを外した瞬間、「あれ?」ということも多い。痩せているから、さぞかし小ぶりのおっぱいが出現するかと思いきや、とってもたわわでボリューミーなものをお持ちだと、そのギャップに、オバハン思わず興奮。

彼女とデートにこぎつけ、いざ、そういうことに持ち込めた幸運な男子がいたとして、彼が繊細なレースの施されたブラを外す前……と外した瞬間……彼の時間は、ブラ前/ブラ後で、紀元前/紀元後、くらいのインパクトをもって変化してしまうのではないかしら、などと勝手に妄想。彼の中で、あどけないと思っていた彼女の印象が、一気にエロティックな存在に変わるだろうか。

一方で、かなり強めなくるくるパーマをかけたオバサマが、脱衣所でなんの恥じらいもなくラクダ色のシミーズとブラを外した瞬間、時の流れが変わることがある。

重力には逆らえないから、ツンと上を向いているということはないけれど、「デブ」とも「垂れ乳」とも言わせない、何とも肉感的なボリュームの土台に、まさかのハッとするようなベイビーピンクの乳首がちょこん。おそらく結婚してお子さんもいるだろうに、「今まで誰にも触られたことがありません」とでもいうような、処女性を感じるピュアな先端。

そういう数々の「意外性」を目撃すると、私はこう思う。「美人はお得、不細工は損」という身も蓋もないステレオタイプな価値観を、頑なに信じる人たちもいるけれど、その一方で「女の顔の美醜とおっぱいに相関性はない。だから案外、女って公平にできているし、『脱がせる』っていうのは、実に奥深い行為かもよ」と。

■「ブラジャーを買ってほしい」と言えなかった少女時代

中学生頃まで、私はガリガリに痩せた少女だった。よって当然、周りの友達とのボリュームの差に悩んでいたわけだが、そのうち、ペチャパイなりに「ノーブラでは、さすがにちょっと……」という「ちょっと出てる」的な半端な時期が訪れた。

今思い返しても、その頃は本当に恥ずかしかった。「ブラジャーを買ってくれ」、そう親に言うには小さすぎるおっぱい。そんな自分には、スリップの上部にソフトなカップのついたブラトップのようなものが適している、そう判断した私は、学校からの帰り道、イトーヨーカドーの下着コーナーをよくウロついた。 
 
「コレ、ホシイ……」でも、こんなペチャパイのくせに、ブラトップを試着させてくださいと言い出すのは恥ずかしい。「お前くらいのでっぱりじゃ、まだ要らないよ」そう店員さんに思われるのではないか、という、これまた思春期独特の自意識過剰さゆえに、すごすごと、エスカレーターを、手ぶらで下ること数回。

そのうち、さすがに娘の成長に気づいた母親がブラを買ってくれたのだが、当時のガリガリガールは、首の下、いわゆる胸板と呼ばれる部分がペッタンコに凹んでいたため、カップがプカプカと浮いてしまい、とっても不格好だった。鳩胸気味の豊満なおっぱいに、ピッタリとブラ紐を這わせて胸を張っている友達には、随分とコンプレックスを感じたものだ。

が、その後、ペチャパイ以上の困難が私を襲った。

「ニキビ」……この言葉は、今聞いても本当に辛い思いが込み上げてくる。ペチャパイのおっぱいが本格的に膨らんでくるのと同時に、私はいわゆる「思春期ニキビ」に悩まされることになる。

頬だのおでこだのはもちろん、首にも腕にも、脂の出る穴という穴から、無尽蔵に脂が噴き出している状態だった。乾燥肌の人には想像もつかないだろうが、おっぱいの上、胸板部分にも脂の穴はたくさんあって、当時の私の胸板は、一面真っ赤になるほどのニキビに覆われていたのである。

女子校に通っていたので、実際に男子との交際云々という話は未知の世界だったが、首から胸にかけ、真っ白で毛穴ひとつない、綺麗な友達の胸板を見るにつけ、「ハイ、私の人生オワタ!」と、絶望的な気分になっていた。

■分厚く、ふてぶてしくなったおっぱいに、満足してる

それから20代いっぱいくらい、胸板のニキビは完全には消えなかった。大学生になり、彼氏と呼ばれる存在が出現すると、女友達にその胸板を見られるのとは別のレベルでの恥ずかしさが私を襲った。

なにせ、私は友達の真っ白で滑らかなおっぱいをいくつも知っている。「女性のおっぱいは、真っ白で綺麗」。男性はきっとそう思い込んでいるから、私の胸を見たらさぞ幻滅するだろう……そう思うと、いざ! というときにはとにかく電気を消し、部屋を暗くすることに必死だった。

だが、学生時代のある日、昼間に彼氏の部屋でそういうことになった。電気を消してカーテンをぴったり閉めたところで、部屋はふんわりとした明るさに包まれている。この状態で脱ぐなんて……私はブラ一枚になった後も、胸板の前で両腕を頑なにクロスさせ、なんとかそのままベッドに潜り込もうとした。

今思えば、いくら夜で部屋が暗くても、私の胸にニキビがあったことがバレていないわけはない。そして私がそれを気にしていることも、とっくにお見通しだったとみえ、彼氏はそっと腕をほどいて言った。「どうして隠すの? とっても白くて綺麗なのに」。

ウソつけ、と思うと同時に、おっぱいなんて自分が気にしているほど相手は気にしない、というより、好きな彼女のおっぱいだったら、うーんと思うところがあっても、男性は(少なくとも当時付き合っていた相手の人は)ちゃんと受け入れてくれるものなんだ。男性をそこまで見くびっちゃいけない、私はそこから、男の人っていいな、と思えた気がする。

それから幾歳月……。思春期ニキビに悩んでいた私に母がよく言っていた言葉、「40や50になっても、ニキビだらけの女の人っていないでしょう。だから、いつかはきっと治るから」。その言葉の通り、私の胸にはもう、ニキビはない。

それどころか、月に一回、おっぱいが張って、先端が痛くなると、「ああ、来週あたり、生理が来るな……」と、憂鬱な気分になるけれど、あと何年かすれば、そんな周期からも解放されることを思えば、おっぱいの張りも痛みも愛おしい、という境地に達している。

そして、今でもデパートのエスカレーターから下着売り場が見えると、私は必ず胸がキュンとする。「思えば遠くに来たもんだ」と。


Text/henzutsuu
Photo/タカハシアキラ(@crystal_style

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

関連するキーワード

関連記事

Latest Article