猫と女子会
コミックエッセイ『ただいまみいちゃん』では、ひとりの女性と1匹の猫のささやかな日常をお楽しみいただけます。 第6話となる今回では、猫のみいちゃんがもしも人間の女の子だったら――そんな夢を描いてみました。
みいちゃんは人間で言うところのおばあちゃんだ。
家の前で拾った猫だから、正確な年齢はわからないけれど、動物病院の先生には13歳くらいかなと言われている。猫の寿命はすごくすごく長生きでも20年と言われているから、人間で言うと70歳くらい。おばあちゃん。立派なおばあちゃんだ。
でも、おばあちゃんのわりに、みいちゃんは子どもっぽいところがある。わたしの後をついてきて何でもマネをしたがる。
月に2回のペースで整体の先生に家まで来てもらっているのだけど、私が布団に横向きに寝て施術を受けている間、みいちゃんはわたしのからだにからだを添わせるようにして弓なりになって横たわる。
「整体を受けたいみたいですね」と言いながら先生と笑って、先生が人間と同じようにみいちゃんに施術すると、気持ちよさそうに足を伸ばしたのでまた笑う。みいちゃんは人間のマネっこがだいすきだ。
整体のとき以外でよくマネっこをするのは、わたしがスキンケアをしているときやお化粧をしているとき。わたしがベッドにうつぶせで寝転びながら、美顔ローラーをしていると胸と顎下の間に小さな隙間を見つけてころりと横になる。
「やってほしいの?」
そう聞くと、グィィイイイインとめいいっぱいからだを振るわせる。どうやらやってほしいみたいだ。
みいちゃんの顔の顎下に美顔ローラーをセットするけれど、顔が小さくて何度も行ったりきたりしなければいけない。それに、いきなりバチンとローラーが外れてしまうといけないので、慎重に慎重にローラーを動かす。みいちゃんは最初はキョトンとしていたけれど、からだのちからをだんだんと抜いていく。目を細める。そうしている間に安心したのか眠ってしまった。
また別の日、私が獣毛ブラシで髪を梳いていると、やっぱりみいちゃんが寄ってきて、床にぺたりと座っている私の膝の上に置物のように座った。髪を梳いてくれと言わんばかりだ。ほんの少し躊躇したけれど、獣毛ブラシをそっとみいちゃんのからだに当ててみる。猫用のブラシでなくて、人間用のブラシでからだを撫でているとなんだかクククと笑い出したくなるようなおかしな気持ちになる。普段は体毛にしか見えないみいちゃんの毛が髪の毛みたいに思えてくる。随分と短い、だけどつやつやした立派な毛ですね。
みいちゃんは案の定というべきか骨抜きになってお腹を見せてきた。居心地のよい時間が流れる。
人間の女の子が私の膝のうえに頭を乗せて、黙って髪を梳かれる映像が頭をよぎった。ハッとして膝の上に視線を落とすと、そこには目をつむって膝の上に横たわるみいちゃんがいた。白い昼間の夢だった。
みいちゃんが人間だったら。
そんなことをときどき考える。
ドレッサーのない我が家のちゃぶ台のうえに広げられたアイカラーパレットを見て、一緒におめかしする夢を見た。
Text/佐々木ののか(@sasakinonoka)
Comic・Illust/池田明久実(元ぱの)(@panoramango)