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性欲を高めると健康を損なう? 女性の性をめぐる誤解の歴史

「性欲を高めると不健康になる」なんて誤った理論が展開されていた時代から約100年、今女性の性に対する価値観は大きく変わっている。性的な欲求は人間にとって大事な欲求のひとつであり、恥ずかしいものでも、タブー視されるものでもない。

性欲を高めると健康を損なう? 女性の性をめぐる誤解の歴史

女性がセルフプレジャー(マスターベーション)をするのは、ごく自然なこと。しかし、女性のセルフプレジャーについての話題は、残念ながらまだまだ「はずかしい」「はしたない」といったイメージで隠され、避けられてしまいがちです。

「性のことって、本当はもっと気持ちがいいものだよ。人間の根源的な欲求で、当たり前のものだよ」。──セルフプレジャーに対するマイナスイメージを払拭し、女性たちにそんなメッセージを伝えようとしているのは、女性向けセルフプレジャーアイテムを展開しているブランド「iroha」の広報・西野芙美さん。

そんな西野さんと、同じくiroha広報の本井はるさんのおふたりが「性の歴史」を紐解いていくトークイベントが、2019年5月24日、大丸梅田店で開催されました。

このイベントは、iroha POP UP STORE大丸梅田店(2019年5月22日~6月4日まで営業)のオープンを記念したもの。

イベントでは、性の歴史とプレジャーアイテムの歴史を振り返ることで、女性の性をめぐる価値観が歴史の中でどのように変化してきたのかが探られていきました。当日のトークの模様をレポートします!

西野芙美(にしの・ふみ)/1989年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。人材紹介会社、出版社での勤務を経て株式会社TENGAに入社。2017年12月より広報宣伝部広報チームマネージャー。TENGA、irohaブランドのほか、医療・福祉・教育分野の専門家と連携して性の問題解決を目指すグループ会社「TENGAヘルスケア」の広報を担当。

本井はる(もとい・はる)/1991年生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。中部地方の新聞記者を経て、2019年1月に株式会社TENGAに入社。広報宣伝部にて、TENGA、irohaブランドとグループ会社「TENGAヘルスケア」の広報を担当。

■ヒステリーの原因は欲求不満? 性をめぐる誤解の歴史

イベントでは、西野さんと本井さんが国内外のさまざまな文献を参考にしつつ、プレジャーアイテムの歴史を紐解いていきます。

まずは最初に、こんなクイズが出題されました。

iroha提供のスライドより

この問題の答えは、コーンフレークを発明した「ジョン・ハーヴェイ・ケロッグ」。驚くことにケロッグはこの本の中で、セルフプレジャーはてんかんや姿勢の悪さ、虚弱体質などを引き起こす、と主張しています。ケロッグは性欲を高めると健康が損なわれると考えていたようで、性欲を抑えるための健康食品としてコーンフレークを推奨していたのだとか……!

「西洋では紀元前から20世紀にいたるまで、女性が訴える息切れやてんかん、食欲の減退といった症状はすべてヒステリーと診断されてきました。ヒステリーは『子宮が体内で暴れまわって悪さをする病気』と捉えられていて、セックスによって欲求が満たされないからヒステリーになる、と考えられていたんです。そして、その治療のためには性器マッサージが効果的だとされていました」(本井さん)

当初は医師の手によっておこなわれていた性器マッサージでしたが、手だと技術が必要だし疲れる、というストレートな理由もあり、試行錯誤を経て1880年代にイギリスの医師が開発したのが「電動バイブレーター」。

iroha提供のスライドより

iroha提供のスライドより

「性器をマッサージするだけなら、女性が自分ですればいいのでは……? って思いますよね。医療機器まで開発して男性にマッサージをしてもらう必要があるんだろうか、とみなさんも考えられたと思うのですが、当時、女性自身によるセルフプレジャーは不貞で不健康だと言われていたんです」(西野さん)

『ヴァイブレーターの文化史』の著者であるレイチェル・P・メインズという研究者によると、この「治療」がおこなわれていた背景には、性的不満を訴える女性の夫の自尊心を傷つけないようにという配慮や、男性が女性に挿入してオーガズムを得ることこそが正しい性行為のあり方である(!)という考えがあったのだといいます。

「いま聞くと、『いったい何言ってるんだろう?』って感じですよね(笑)。でも、挿入でオーガズムを得ることがいちばん尊いみたいな考え方は、いまでも残っていると思っていて。私のTwitterにも『中イキできない女はつまらない、と彼氏に言われました』という匿名の方からの相談がきたことがあるんですけど、本当にその彼氏には説教したい!」(西野さん)

「昨年、女性医師をお招きしてiroha RINという挿入するタイプのirohaの関連イベントを開催したときにもお話ししたんですが、いわゆる『中イキ』も『外イキ』もクリトリスでオーガズムを得ているという点では同じなんですよ。

クリトリスって目に見えている部分はごく一部で、体内により広い面積のクリトリスがあるんです。それを膣側から刺激しているか外側から刺激しているかというのが『中イキ』『外イキ』の違いなんですが、なぜか中イキのほうが偉い、と今でも言われがちですよね」(本井さん)

医学的な知識がなかった時代に西洋で生まれた偏見が、払拭されることなく現代にまで残っている──とふたりは強調します。

■江戸時代までは「性」に大らかだった日本

では、日本の歴史の中では「女性の性」はどのように扱われてきたのでしょうか?

日本では、男性器を模したプレジャーアイテムである「張形」が平安時代末期には存在していて、江戸時代になると、大奥の女性などを中心に絶大な人気を集めていたのだとか。実際に江戸時代の春画の中には、張形を使用する女性の姿が多く描かれています。

iroha提供のスライドより

iroha提供のスライドより

このクイズの答えは、②の体位。本井さん曰く、春画では足を使った体位が多く見られるそう。

「セルフプレジャーって、本来はこのくらいクリエイティビティあふれる自由なものなんですよね(笑)。でも『女はポルノを読む』というフェミニズムの本によると、アメリカでは長らく、ポルノの中で女性のセルフプレジャーが描かれるときって、体位がM字開脚か四つん這いの2種類だけだったそうです。女性のセルフプレジャーは男性を欲情させるためのもの、という考えが強かったんですね」(西野さん)

日本では、江戸時代にはプレジャーアイテムを販売する性具店が流行するなど、男女問わず性に対して大らかな空気があったよう。その背景には、「性器信仰」という日本独自の価値観の存在があったといいます。

「日本では、性器は豊かさを表す聖なるものだという考え方が強く、神社でも古くから男性器や女性器をかたどった石が祀られていたりしました。海外にも中世頃まではそういった考え方があったのですが、キリスト教の普及とともに少しずつ薄れていったようです」(西野さん)

日本でも、明治に入って西洋的な思想が普及していくにつれ、性に対する価値観は少しずつ西洋に近い形に変化していきました。

「江戸時代までは大らかだった性への意識が、日本でも明治時代に一気に西洋化してしまったんですよね。……でも、そのころから100年も経っているはずなのに、女性の性欲ははずかしい、という考え方はどうしていまだに変わらないんだろう? と思ってしまいます」(本井さん)

■セルフプレジャーは、自分を知る手段でもある

長らく性がタブー視され続けてきた西洋でしたが、現在では、その価値観が大きく変化してきているといいます。

iroha提供のスライドより

「2018年、世界最大級のクリエイティブフェスティバル『サウス・バイ・サウスウエスト』では、ウェルネスエキスポの中でアロマやオーガニック製品と同じ会場に女性向けのバイブレーターが展示されていたことが象徴的です。

また、アメリカ在住の1000人を対象としたアンケートでは、『ストレス解消に有効な方法』に対して74%がセルフプレジャーと回答したというデータがあります。欧米ではいまはもう、セルフプレジャーはセルフケアのひとつの方法と捉えられているんです」(西野さん)

一方、現代の日本で女性の性がタブー視されがちなのは、これまで触れてきたとおり。

性的な欲求は人間にとって大事な欲求のひとつで、セルフプレジャーは自分を知るための手段でもあるということを、irohaではこれからも伝えていきたい──とふたりはトークを結びました。



性の歴史にまつわる話のあとには、irohaのさまざまなアイテムや、おすすめの使い方についての紹介も。会場で実際にirohaを触ってみたイベント参加者の女性たちからは、「可愛い~!」「素材が気持ちいい!」と歓声が上がっていました。

イベントの最後を、西野さんはこんな言葉で締めくくりました。

「私たちは、女性が性について真面目に語ったら怒られる、という風潮を変えていきたいと思っています。もちろん、性についての話は自分の中に秘めていたい、という方はそのままで構いません。ただ、『本当は誰かと話したい』『誰かに相談したい』と思っている方がいたら、そうしてもいいんだよって言いたい。どんな女性にも、自分の欲求を素直に肯定してほしいなと思います」

生湯葉 シホ

1992年生まれ、ライター。室内が好き。共著に『でも、ふりかえれば甘ったるく』(PAPER PAPER)。

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