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SNSと恋模様〈Twitter編〉鍵付きリストでのぞき見る「あの人」

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エッセイストの大島智衣さんが、恋愛とSNSにまつわる「きゅん」「えええ!?」なエピソードをつづる連載「SNSと恋模様」。第2回はTwitter編をお届けします。今でも正面切ってフォローできない、だから非公開リストに入れてこっそりのぞき見ている「あの人」。“知ってると思うけど、キミのこと好きなんだよ私”──。

SNSと恋模様〈Twitter編〉鍵付きリストでのぞき見る「あの人」

昔好きだった人のTwitterアカウントを、フォローはできないけれど非公開の鍵付きリストに入れてときどき見に行ってしまう。リスト名は「あの人」だ。

「あの人」とは何年も前にバイト先で一緒だった。
ぬぼっとしていて、ボサッとしていて、ニンゲンに一番近いアルパカみたいな人だった。

アルパカを嫌いなひとって、いないんじゃ?
だから私も、あの人の髪の毛や、瞳や、口元の、モフモフとした感じがお気に入りだった。話すといつも波長が合って、ほんわかと和んだ。

波長が合う者同士、バイト終わりにふたりで飲みに行ったことがある。
バンドをやっていることと、カノジョと同棲していることを知った。

そっか、そうだよね。アルパカだもの。
もう誰かのものになっていたって驚くことじゃない。
だけど私もそのアルパカ、結構好きなんだよな。


数日後、バイトの帰りにあの人を公園に誘った。

夏の終わりにコンビニで売れ残っていた線香花火を見つけ、誰とやるあてもなく買ったのがカバンにずっと入ったままだった。
あの人とやりたいなと思った。それで誘った。

あの人はのっそりと花火に付き合ってくれて、あっという間にすべての線香花火の火の玉が落ちきったあと、すべり台で仰向けになって夜空を見上げていた私に、

「この前、飲みに行った日、本当に楽しかったんだよね。……本当に楽しくて」

とやけにあらたまって、妙にかしこまって言った。

なんで。なんでそんなに、特別なことみたいに。
「楽しかった」なんて、なにをそんなに。

こそばゆかった。彼の顔は見られずに、
「そぉ? まぁ私も楽しかったけど」
なんて、全然特別じゃないみたいに返事をした。

だけど、熱くなった頬を撫でる夜風は、夏のそれとはもう違ってひんやりと心地よく。
季節が秋へと移ろうように、私の「あの人」への気持ちも変化した。

その思いに私は、“お気に入り”でも“結構好き”でもなく、あたらしく名前を付けた。

“恋”


***

それなのに。

そのあと「あの人」はだんだんと素っ気なくなっていった。
どこかへ誘っても、少しずつやんわりと後ずさっていってしまった。

ちょっと食いつきすぎてしまったのだろう、と思った。
だいたいカノジョがいるのだし、とも。
それ以上は近づけなかった。

───この思いに、せっかく名前を付けたというのに。

ほどなくして彼はバイトをやめた。


***

秋が冬になった頃。
「あの人」のバンドが下北でライブをやるのを、彼と会えなくなってからもときどきチェックしていたバンドのホームページで知り、こっそりとライブハウスへ観に行った。

そこには、夢みたいにステージライトに照らされて、無心に音楽を奏でている「あの人」がいた。

カッコ良くて、眩しくて。色っぽくてムカついた。全然アルパカじゃなかった。
観客に紛れて身を潜めながら、私はそんな「あの人」をただ見つめた。

「ひさしぶり!」なんて、ひと声かけて帰ろうかななんて、淡い思いでやってきたけれど、対バンの演奏中、爆音のなかをフロアに降りてきた彼が互いの耳に口元を近づけ合いながら話していたのはたぶん、あれがカノジョなのだろうと思った。

その夜、挨拶もできずにそそくさとライブハウスを抜け出して以来、「あの人」には会っていない。

今でもTwitterの中の「あの人」に会いに行ってしまう。

あのとき、何も言えなかったから。

“ねぇ、なんで。あの日そんなに「楽しかった」の?”
“ぜんぶ私の勘違いだったのかな”
“あと知ってると思うけど、キミのこと好きなんだよ私”

……なんて。

叶わなかった「恋」には、そんな風にちょっとさみしい気持ちとか、恥ずかしさがいつまでも残ってしまっていて、そしてそれは「恋しい」に似た感情だから困る。
だから未だに、私は彼のアカウントを正面切ってフォローができない。

そこで、鍵付きリスト「あの人」なのだ。

とはいえ、彼のタイムラインってば、ライブの告知やYouTube動画シェアが殆どで……はっきり言って物足りない!
「あの人」じゃなければ速攻ミュートしてしまうタイプだ。

それでもたまに、タグ付けされた彼の写真や動画がアップされていると、ぬおおっ! と飛びついて最大限に拡大して見入ってしまうよね。ヘタしたら保存かスクショする勢い。で、懐かしく眺めては、さすがにちょっと老けたな(笑)とか、自分のことは棚に上げて時間を忘れてほくそ笑むよね。
心底気味悪いけど止まらない。

ライブで近くの街に来ていたと知れば、すれ違っていたかも⁉︎ と動揺するし、「ほうじ茶ミルクティーうまし」なんてツイートを見ると自販機を探してしまう。

もちろん、返信も「いいね」もすべてチェックしている。
やけに彼のツイートにリプ(返信)している子がいると、どこのどいつだよ! とプロフィールをコソ見しに行き素性を確認するのは必至。
しかし、彼がそれに「いいね」も返信もしていないと、いいぞいいぞとひと安心するのがルーティーン(なにやってんだ)。

彼のリストはというと、公開されているものはなくて。
でももしかしたら彼も……非公開リストで私をチェックしてくれてたりする……かな? なんて期待と心配が入り交じる気持ち、否定できない。イタイ。

だけどもう、なんだか……「彼のタイムラインが見られる=ブロックされてない」ってことなわけで、それだけで正直十分うれしい。


きっとこれからも、ライブハウスに行ってしまったあのときの気持ちのまま、鍵付きリストの「あの人」をのぞき見てしまうだろう。

「いいね」も返信もできないけど、私もほうじ茶ミルクティーはうまいと思う。


Illust/久保夕香(@yuka1263


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大島 智衣

おもに恋とじーん➢twitter

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