「友達以上恋人未満」な関係に耐えられない男性の弱さ
ふたりで食事にも行くし、何でも話し合えてお互いに好意がある。でも告白はしない。いわゆる「友達以上恋人未満」な状態は、相手をどこまで信じれば良いかわからず悩む人もいるでしょう。このグレーゾーンに耐えられない男性は、女性を傷つけることで「そっちから関係を進めて」と迫ります。その焦りはどんな心理なのか、お話しします。
■距離が縮まるときは何も考えない
ある男性の話です。
サークルで知り合った年下の女性とは、趣味や好きなものが合い、会話していると話題が途切れない居心地の良さがありました。最初はサークルで顔を合わせるたびにどちらからともなく寄っていき、ずっと話していられる楽しさを共有していましたが、そのうちLINEのIDを交換し、プライベートでも連絡するようになり、彼女が観たいといっていた映画のDVDを貸すなど距離が縮まっていきます。
男性の中では、やりとりを重ねてふたりのつながりが濃くなっていく時間は、ただ楽しくて嬉しくて、このときは何の不安もありませんでした。こちらからメッセージを送れば必ず彼女は返信をくれるし、サークルがあるときは「今日来ますか?」と尋ねられてテンションが上がるし、休日も彼女から他愛ない話題のLINEが送られてくる。
元気でアクティブな姿ばかりでなく、料理が得意でお菓子作りが好きな一面もある彼女は、彼のためにクッキーやマフィンを焼いてくることもあり、照れくさそうに「もし良かったら」と渡されるたび、彼の中で好意が育っていきました。
それまでまともに女性とお付き合いしたことがなかった男性は、彼女から関わりを求められるたび、「俺って好かれているのかな?」とちらりと考えます。
もちろん、ふたりきりのやりとりが続く時点で、「人間として好感を持ってくれている」のはわかるけど、彼が知りたいのは「恋愛感情の有無」。ふたりの距離が縮まるのを感じる間は、特に恐れもなく踏み込んでいました。けれど、いざ「男性として好かれているか」を考えてしまうと、彼は彼女の行動の中にその確信が得られるものを見つけようとします。
俺のことを、そんな意味でも好きでいてくれたらいいな。
それが彼の願いであり、彼のほうはとっくに彼女のことを好きになっていました。
■「俺だけじゃない」ことの苦しさ
サークルではいつも明るくいろんな人に気さくに声をかける彼女は、彼以外にも親しくしている男性がいました。その人は彼が入会する前からサークルに所属していて、彼女との付き合いも彼より長く、ふたりが一緒にいるときは「他の男性と比べて」彼女の笑顔が多いな、と彼は気づきます。
笑いながら男性の腕を叩く彼女の様子を目にして、彼の胸がざわっと動きました。
俺より楽しそうだな。
何の話をしているんだろう。
ていうか、距離が近すぎないか?
それは紛れもない嫉妬でしたが、今までひとりの女性と向き合ったことがなかった彼は、彼女の気持ちがわからず混乱します。自分が来ているのに、自分よりそいつのほうに行くのか。そう思うとなぜか怒りが湧くし、話が終わってこちらに気づき、笑顔でこちらに近づいてくれる姿を見るとほっとする。
彼女のほうは、特にこの男性に恋愛感情を持っているわけではありません。仕事を通じた知り合いでもあるため親しく、話題が多くあるだけですが、そんなことは彼にはわかりません。
「自分以外の男にもいい顔をする彼女」を見ると、重苦しい気持ちになって彼女に対して憎しみのような黒い感情が生まれる。でも、ほかの男性と仲良くしていても、自分とも変わらず距離の近さを感じさせるやりとりをしてくれるから、安心するし突き放すことができない。
感情の振り幅が大きくなり、彼は疲れてきます。親しくなる前はこんな自分じゃなかったのに、彼女に恋愛感情を持っている自分に気づいてからは彼女の一挙一投足に意識が向いてしまい、自分以外の男性と仲良くできる彼女に「なぜ」「どうして」と悔しい思いを抱いてしまう。
それは、ふたりの関係があくまでも「友達」の枠から出ていないことへの焦りであり、どんなに親しくても「恋人」ではない事実が、彼の中で彼女の存在をネガティブなものにしていました。