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旅の達人が語る「ニューヨーク」の楽しみ方 丸山ゴンザレス×伊佐知美 

旅のスタイルは人それぞれ。だからこそ、旅慣れている人が、旅先で何を見て、何をして、何を食べるのかを知ることは、自らがより楽しい旅をするための参考になります。丸山ゴンザレスさんと伊佐知美さん、まるで違った旅スタイルを持っているように見える(?)おふたりに「ニューヨーク」の楽しみ方を教えていただきました。

旅の達人が語る「ニューヨーク」の楽しみ方  丸山ゴンザレス×伊佐知美 

グルメ、ファッション、アート、音楽――。

さまざまなカルチャーの最先端を体験できる街、ニューヨーク。

多くの人々が「一度は訪れてみたい」と思う憧れの街ではないでしょうか。

今回は、独自の視線でニューヨークを切り取った新刊『GONZALES IN NEW YORK』を8月18日に上梓したばかりのジャーナリストの丸山ゴンザレス氏と、旅と生きる美しさを伝えるマガジン『May(メイ)』を運営する、エッセイスト、フォトグラファーの伊佐知美さんという、旅の達人のおふたりに、ニューヨークの魅力についてたっぷりと語り合っていただきました。

■ニューヨークは東京から襟を正して行く街

伊佐知美さん(以下、伊佐): 『GONZALES IN NEW YORK』を拝見したんですけど、「ニューヨークは歌舞伎町と同じ匂いがする」って書いてあって驚きました。ニューヨークっていうのはやっぱり、タイムズスクエアに行ってキラキラした景観の中で写真を撮ったり……とにかく歌舞伎町のようなイメージはまったくなかったので。

丸山ゴンザレス(以、丸山):僕の中のニューヨークは、移民とか、キューバサンドとか……。

伊佐:えっ、キューバサンドってニューヨークの食べ物なんですか?

――すみません、いきなり盛り上がっていますが、伊佐さん、『GONZALES IN NEW YORK』を読んだ感想ってどうでしたか?

伊佐:あ、そうですよね。『GONZALES IN NEW YORK』を拝見したときに思ったのは、丸山ゴンザレスさんだからこそ見ることができたニューヨークの世界だなって。王道の観光でもなく、表面的な美しさだけを切り取るでもなく、もっとディープで個性的な、深く潜るようなニューヨークが描かれていて……。

「世界はどんな風に切り取ってもいいし、旅をする目線はみんな同じじゃなくていい」私は少なくとも、ニューヨークで見たトイレの便器の写真は、撮らなかったなぁ…(笑)

――同じ街を訪れても、まるで違う景色を見ている、ということですかね。おふたりのニューヨーク渡航歴を教えていただいてもよろしいでしょうか。

丸山:ああ。えっと、僕は30代になってからですね。アメリカに憧れた少年時代を過ごしながらも大学生になって。いざ海外に旅に出るってなったときに、アジアを選んだんです。安かったのと、当時タイブームもあって。

いしだ壱成だったかな。「タイは、若いうちに行け。」みたいなCM(※1)があった。それで、アジアとアフリカばっかりに旅していたのが20代です。

けどあるとき、ふと、ふたつの道があったことに気が付くんです。自分はアジア側に行って、アメリカを置いてきちゃったなって。「あのとき行けなかったあの道(アメリカへの道)って、行ったらどうなのかな」って思うようになってきて、それでアメリカに行き始めた。

※1:いしだ壱成を起用したタイ国際航空のキャンペーンCM


――それまで訪れていた他の国と比べてアメリカはどうでしたか?

丸山:アメリカの中でもとくに、楽しいだけじゃなくて、いろんな気分が味わえるのがニューヨークでしたね。 いろんな気分っていうのは、ひとつは上京気分っていうか、東京から「よし、行くぞ!」って気張って準備して、襟を正して行く街って少ないと思うんですね。

第三世界ってもはや、僕にとってはふらっと行くところだから、お金とかもざっくりとしか持っていかない。でもニューヨークって東京よりも物価が高いし、東京よりもカルチャーの中心だし、いろんな人がいるし、いろんな準備が必要で。僕は仙台出身なんだけど、東京に上京してきたときの感覚に、どこか似てるなって。

――旅に熟練した丸山さんでも、ニューヨークは襟を正す街なんですね。伊佐さんのほうはどうですか。

伊佐:実はわたし、ニューヨークって一度しか行ったことがないんです。

――えっ、それは意外です。

伊佐:初めての海外一人旅がニューヨークでした。ずっと憧れていて、一生に一度でもいいから、なるべく早いうちに行きたいって思っていて。

わたしの人生でだいぶ聞いてる『Suddenly I See』って曲があるんです。『プラダを着た悪魔』の主題歌なんですが、ニューヨークって、ハイヒールを履いた女性が颯爽と歩いてくみたいなイメージがあって。その当時はずっと、満員電車の中で、その曲をよく聞いていました。それで、最初に就職した会社は金融系の企業だったんですけど、やっぱり出版に行きたいって思って。それで、出版社に勤め始めた後、初めて休みをとったときに、ニューヨークに行ったんです。24、5歳のときですね。

丸山:「いま、わたしは満員電車に揺られて出社してるけれども、この音楽を聴いている間は憧れのニューヨークに心が飛んでいる」っていう心地ですよね。

伊佐:そうなんです。

■同じ街に行っても、楽しみ方は違う

――おふたりともニューヨークにはなにかしら特別な思いを抱いていたんですね。そうして訪れた憧れのニューヨークで、まず何をしましたか。

伊佐:まずわたしが行ったのは、タイムズスクエア。自分の姿が画面に映し出される巨大なモニターがあるんですけど、そこに映り込むっていうのをやりました。

丸山:僕も行きましたね。タイムズスクエアをバックにセルフィーは、一応しないといけないかなって。

伊佐:それで、ソーホー(ニューヨーク市ダウンタウンにある地域)に行って買い物をしました。それから「自由の女神を見ないといけない」ってことで、ブルックリン橋にいって、エンパイヤステートビルをのぼって夜景を見て。あとは、カッツ・デリカテッセンっていう有名なレトランにいって、パストラミサンドを食べました。

――丸山さんの本でも、「カッツ・デリカテッセン」は紹介されていましたね。

丸山:そうですね。僕はパストラミサンドとピクルス一本食いをやりました。

伊佐:わたしは、ピクルス一本食いはしませんでしたけど……。

丸山:ピクルス、美味しいですよ。自由の女神は、スタテン島行きの無料フェリーの上で見ました。スタテン島は、スティーブン・セガールが一時期住んでたところだよなって思いながら、近くの売店でコーラを買ったら5ドルして、「マジかよ!」って思いました(笑)。スタイニーボトルだったんですけど、「ニューヨークはオシャレフィーがかかるのかよ」ってくらい高かった。

あと、エンパイヤステートビルは心が折れて、下から眺めて終わりました。

伊佐:なんで心が折れたんですか?

丸山:行列に並ぶのが嫌で(笑)。

伊佐:わたしは並んでのぼりました(笑)。でも、同じ場所に行ってるのに、こうも街の楽しみ方が違うんですね。

■映画やドラマに出てきた憧れの家に泊まるのも醍醐味

――いまだったら、ニューヨークでどういうふうに過ごしたいですか?

伊佐:『ピンヒールははかない』という本の著者・佐久間由美子さんが住んでらっしゃったり、あと『milieu(ミリュー)』というオピニオンメディアの編集長をやられている塩谷舞さんがニューヨークに行かれたりしているので、そういう人がどんな場所に行くのか、何を見ているのか興味があります。

それから、いまは宿泊場所を探すのに「Airbnb(※2)」を使うことが多いので、自分と同じ世代の女の子がホストをやっているところに泊まって、いろいろ教えてもらいながら、少し長めに滞在したいですね。

※2:ホームシェアリングサービス

丸山:Airbnbでもニューヨークだと10000円前後くらいはしますよね。

伊佐:えっ、Airbnbでそれって、世界で一番高いかもしれないですよね。

丸山:なんの統計か忘れたんですけど、一説には「ニューヨークのホテルの平均予算は300ドル」って言われてますからね。

伊佐:ドミトリーはいくらくらいなんですか?

丸山:4、5千円くらいですかね。これ、本には書いてないんですが、実はニューヨークには、いろんなパターンの泊まり方があるんです。不確定すぎてオススメしてないんだけど、「出張で家を3カ月あけるから、その間どうぞ使ってください」という借り主を募集する日本語限定の掲示板があったりする。

その間、日割りで貸しに出ていたりもするし、日本人同士のコミュニティでの貸し借りもある。

あと、それこそ友達の家は一番いいですね。僕は長くいるときはだいたい友達の家を渡り歩いています。

伊佐:なるほど。

丸山:どうしてもタウンハウスに泊まってみたくて、Airbnbで泊まったこともありますけど。

伊佐:タウンハウスって?

丸山:正式にはタウンハウスアパートメントだったかな。古いタイプのアメリカの家です。階段をあがって玄関があって、中にホールがあるような家なんですけど、過ごしやすかったです。一階に共有の台所とリビングがあるんだけど、コーヒーはフリーだったから、そこで泊まってる人たちと交流もできた。メシを作ってる人とか、リビングでくつろいでいる人とかがいて、狙い通りだったなって。

タウンハウス(画像提供/丸山ゴンザレス)

伊佐: (タウンハウスの画像を見て)あ! あっ! これ、めっちゃ泊まりたいやつです! 『マイ・インターン』っていう映画の主人公が住んでる場所って、こういう感じの家でしたよね!

丸山:昔はニューヨークの真ん中にもたくさんあったんだけど、いまはマンハッタン島の端っことか、ブルックリンとか、クイーンズの住宅地とかいかないと、もうないんですよね。

伊佐:このタウンハウスって、泊まってみたいニューヨークを舞台にした映画にいっぱい出てくるから、中はどういう感じなんだろうって気になってます。

――そういう、憧れの宿に泊まるっていうのが、旅の目的でもいいですよね。

丸山:そうですね。ニューヨークのホテルって面白みがないんですよ。古い高級ホテルに泊まるとか、そういうことをしないとよっぽどのことじゃない限り。グラマンシ―パークホテルみたいにアートで満たされているようなホテルとかに行けば面白さはあるんでしょうけど。そういう意味でタウンハウスはオススメです。

(後編へつづく)

取材・Text/大泉りか
編集・Photo/小林航平

丸山ゴンザレスプロフィール

1977年、宮城県生まれ。考古学者崩れのジャーナリスト・編集者。國學院大学学術資料センター共同研究員。國學院大学大学院修了。無職、日雇い労働などから出版社勤務を経て独立。現在は国内外の裏社会や危険地帯の取材を続けるかたわら、TBS系『クレイジージャーニー』に出演するなど、多方面で活動している。

Twitter:@marugon

伊佐知美プロフィール

ライター、エディター、フォトグラファー。数々の媒体に旅にまつわる記事を寄稿。著書に『移住女子』(新潮社)がある。オンラインSlackコミュニティ「#旅と写真と文章と」立ち上げ人。主にTwitterとnoteで情報発信中。

Twitter:@/tomomi_isa

大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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