【今からできる相続対策#5】「相続開始前3年以内の贈与財産」は相続財産に加算される!
相続税対策のひとつに生前贈与という手段があります。とはいえ、相続開始から3年前では遅すぎるのです。今回は、そのポイントを解説してもらいました。
有効な相続対策のひとつが、生前贈与です。
将来の相続税負担を軽減しようと、配偶者や子、孫などに現金をはじめとした財産を贈与するケースは多く見受けられます。では、相続が始まるまでに、できるだけ多くの財産を贈与して移転しておけばいいのかというと、そうはいきません。
■「相続開始前3年以内の贈与財産」は相続財産に加算されるので注意
相続また遺贈により財産を取得した人が、被相続人の相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)に贈与を受けた財産があれば、その人の相続税の課税価額に、贈与を受けた財産の贈与時の価額が加算されます。
つまり、相続開始前3年以内の贈与財産については、相続税を計算する際の相続財産にあらためて組み込まれてしまいます。これを、相続税の生前贈与加算と言います。
その理由は、駆け込み的な生前贈与によって、被相続人の財産が減少し、相続税の課税を回避されるのを防ぐためです。
したがって、法定相続人でなく、しかも相続時に財産を遺贈されない方や、法定相続人でも財産を相続されない方への生前贈与は、この加算の対象ではありません。
加算される財産の評価額は、贈与時の評価額になります。現金や預貯金ならば特に間題はありませんが、もし、不動産や有価証券などを贈与したとしたら、相続時ではなく贈与時の評価額を適用し、加算することになります。
そして、加算される財産は、贈与税の基礎控除額110万円以下の財産も含みます。ですので、贈与税がかからない年間110万円以下の贈与を行っていたとしても、贈与から3年以内に亡くなれば、その財産も相続財産にみなされてしまうのです。
なお、贈与を受けたときに贈与税を支払っていた場合は、相続税がかかったときの相続税額から、贈与税額が控除されます(贈与税額控除)。ですので、贈与税と相続税が二重にかかることはありません。
■生前贈与加算の規定を受けないケース
次の贈与財産は、相続税の生前贈与加算の規定は受けません。相続税の課税対象からは除外されます。
・婚姻期間20年以上の贈与税の配偶者控除の財産
・直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金
・直系尊属から贈与を受けた教育資金
・直系尊属から贈与を受けた結婚・子育て資金
相続税負担を減らそうと、生前に財産を贈与しても、場合によっては「相続時に相続税を払ったほうが、税金が安く済んだ」なんてこともあるでしょう。
「相続開始前3年以内」と言っても、相続開始時期のコントロールはできません。
贈与を行う際には、現状の相続税額をシミュレーションした上で、綿密に検討し、計画的に実施しましょう。