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医師が教える、脳の老化を防ぐ食習慣

脳の老化を防ぐ生活習慣とは――。脳の老化について、医師の今野裕之さんが解説する全3回の短期連載。3回目では脳の老化を防いで、若々しく健康な脳を保つ食習慣について詳しくお伝えします。とくに大事なのは「血糖値を上げない」「脳をサビつかせない」のふたつです。

医師が教える、脳の老化を防ぐ食習慣

私たちの脳も内蔵の一部。栄養が足りていなければ、脳を構成する神経細胞のクオリティも劣化して、結果として老化も進んでしまいます。

脳の老化を防ぐために気をつけてほしい食習慣のポイントはたくさんありますが、特に大事なのは「血糖値を上げない」「脳をサビつかせない」のふたつ。

血糖値を上げない

糖質の摂りすぎは確実に老化を進めます。糖質とは、ご存知の通りブドウ糖や果糖などのこと。

似たような意味の言葉に「炭水化物」がありますが、これは一般的に糖質と食物繊維が組み合わさったものを指します。

芋などの根菜類に含まれる「でんぷん」は、ブドウ糖がたくさん集まったもの。でんぷんは甘くありませんが、体内で消化されるとブドウ糖になります。

このようなブドウ糖や炭水化物、デンプンは、消化吸収されると血液中に入り、血糖値を上昇させます。

糖質はエネルギーを効率よく生み出してくれますが、ジュースやお菓子をはじめ、パンや麺類、ケチャップやソースなど調味料に至るまで、糖質を含む食品があふれている現代の生活では、気をつけないとすぐ摂りすぎになってしまいます。

糖化が引き起こされる


糖質が脳の老化のために良くない理由のひとつめが、「糖化」という現象を引き起こすこと。糖化は糖質がタンパク質と結合する現象です。

体を構成する主要な成分であるタンパク質が糖と結合すると、本来タンパク質がもっている機能が失われてしまいます。

たとえば肌のシワやシミ。これも糖化が関連しています。糖化の影響は肌だけではなく血管、目、骨、神経と広範囲に渡ります。

そのため、糖化を防ぐことが老化予防の第一歩といっても過言ではありません。なお、血糖が高くなればなるほど、また血糖が高い時間が長いほど糖化が起こりやすくなります。

インスリンが過剰に分泌される

糖質の摂りすぎによるふたつめの問題が、高血糖によってインスリンというホルモンが出すぎるということです。

インスリンは血糖を下げるホルモンですが、実は加齢を進めてしまうという働きもあります。実際、インスリンが低い人の方が長生きであるということがわかっています。

また、インスリンが出すぎていると徐々に効きが悪くなり、血糖が下がりにくくなってしまう「インスリン抵抗性」という問題が現れます。

「糖は脳のエネルギーだからいいじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、血糖値が高い状態が続くと、神経細胞がまるで「もうこれ以上糖はいらないよ」と言うかのように、糖があっても使わなく(使えなく)なってしまうのです。

基本的に糖がなければエネルギーが作れず神経細胞は働けませんから、結果として脳の老化につながります。

脳のシミが増える

糖による3つめの理由は、脳のシミである「アミロイドβ」という物質も増やしてしまうということ。

分泌されたインスリンは、最終的に「インスリン分解酵素」によって分解されますが、じつはこのインスリン分解酵素にはアミロイドβを分解する働きもあります。

インスリンが出すぎていると、インスリン分解酵素が余らないので、アミロイドβが分解されずに溜まってしまうのです。

脳をサビつかせない

鉄が酸素とくっつくと、サビて脆くなってしまいます。これを「酸化」と言いますが、同じように、私たちの体の中でも酸化が起きています。

多くの生物は空気中の酸素を取り込んでエネルギーを作っています。一方、その過程において「活性酸素」というより強力な酸素の仲間が生まれています。

また、ストレスや大気汚染物質・タバコ・微生物・紫外線など活性酸素を増やしてしまう要因が私たちの身の回りには溢れています。

体内には活性酸素を無害化するメカニズムが備わっていますが、活性酸素の量があまりにも増えたり、栄養不足などでこのメカニズムがうまく働かなかったりすると、活性酸素による「酸化」が進んでしまうというわけです。

脳は大量に酸素を必要とするにも関わらず、じつは酸化に弱い臓器です。活性酸素が多くなると酸化が進み、脳のシミも増えていくことが知られています。

脳をサビつかせないことも脳の老化を防ぐために非常に重要な要素なのです。

脳の老化を防ぐ食事

糖質入りのものを口にしない

まずは血糖を急激に上げないように気をつけましょう。何はともあれ、砂糖やブドウ糖、ブドウ糖果糖液糖など、糖質が入っている食品や飲み物を口にしないようにすること。

これらは生命維持に必要のない、あくまで「おやつ」です。おやつは食べなくても死にませんので大丈夫。

炭水化物を減らす

次に、ご飯やパン、麺類などの炭水化物を減らすこと。これらは「主食」とされていますが、これからは炭水化物を「デザート」、おかずが「主食」と考えを切り替えてください。

炭水化物だけで食事を済ませるのはやめましょう。また、同じ炭水化物でも生成された白米や小麦よりは発芽玄米や雑穀、全粒粉などが◎。栄養価が高く、血糖値も上がりにくいのでおすすめです。

毎食タンパク質を摂取する

1日に必要なカロリーは、タンパク質と脂質で補いましょう。タンパク質を多く含む食品である卵・魚・豆・肉などは、できるだけ毎食食べて。

目標は体重1kgあたり1gです。体重50kgの人が1日に必要なタンパク質を卵だけで摂取する場合は8〜9個ほどが目安です。

実際にはいろいろな食品にタンパク質が含まれているので、こんなに卵を食べる必要はありませんが、案外足りていない栄養がタンパク質です。

太ることを気にする人がいますが、一番体重を増やすのは糖質です。余った糖質が中性脂肪に変わり、体に蓄積されてしまうのです。

一方、タンパク質は糖質に比べるとほとんど血糖を上げません。安心して食べてください。

油はエキストラヴァージンオリーブオイルを

脂質に関しては、オリーブオイル、特にエキストラヴァージンオリーブオイルを脳の老化を防ぐ観点からおすすめしたいです。

脂質の多いアボカド、ナッツ類も栄養豊富で認知症予防に良いので日々の食生活に取り入れましょう。

食物繊維をたっぷり摂る

葉物野菜や海藻、きのこなど、食物繊維を豊富に含む食品を食事の最初に摂るように心がけてください。

食物繊維を先にお腹に入れておくことで、血糖が上がりにくくなります。食物繊維をとる目安は1日あたり約20gとされています。

一見少なそうですが、国民健康・栄養調査の結果、多くの日本人はこの基準も達成できていないことがわかりました。実はごぼう1本食べたとしても、食物繊維としては約10g。意外と多くありません。

抗酸化物質をたくさん摂る


脳をサビつかせないためには、なんといってもビタミンCやビタミンEなどの抗酸化作用のある必須栄養素、野菜の皮の部分に多いポリフェノール、魚やアマニ油などに多いオメガ3脂肪酸など、酸化を抑える「抗酸化物質」を含む食品をたくさんとること。

抗酸化物質は加熱すると減ってしまうので、加熱する時は煮る、炊く、蒸すなどの料理にするようにして、揚げ物は避けるようにしましょう。

油を加熱して使いたいときは、酸化しにくいオリーブオイル、ココナッツオイル、バター、ラードなどを使用します。食事のスタイルでいうと、イタリア料理のような「地中海食」、または「和食」がおすすめです。

脳の老化を防ぐ食事のコツをできるところから取り入れ、いつまでも若々しい脳と一生続く健康を手に入れましょう。

今野 裕之

ブレインケアクリニック院長。精神医学とアンチエイジングに関する知識と豊富な臨床経験を背景に、体に優しい心の治療を実践。

博士(医学)、精神保健指定医、精神科専門医、日本抗加齢医学会認定医、美咲クリニック顧問、瞳美容研究所顧問、日本ブレインケア・認知症予防研究所所長。 著書に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術」など。

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