脳の老化がわかる13のチェックリスト
脳の老化について、医師の今野裕之さんが解説する全3回の短期連載。1回目では脳の老化の症状や脳の老化が進行していくとどうなるのか、詳しくお伝えします。昔と比べて忘れっぽくなったり、新しいものを楽しめなくなったりするのに気づいたら、それは脳の老化かもしれません。
■脳の老化とは
脳の老化は40代頃から緩やかに進んでいきます。ある日突然脳の老化が起こるわけではないため、普段自覚することは少ないと思いますが、昔と比べて忘れっぽくなったとか、新しいものを楽しめなくなったといったことがあれば、それは脳の老化かもしれません。
このような現象は、必ずしも脳が縮んできているということを意味していませんが、脳の機能としては低下している可能性があります。例えていうなら、買った直後はサクサク動いていたパソコンが、長年使っているうちにだんだん動作が遅くなってくるようなイメージでしょうか。
脳が老化していくと、最終的には認知症に至ります。たとえばアルツハイマー型認知症は、脳の老化で起こる代表的な病気です。アルツハイマーがた認知症では、発病する15〜20年前から少しずつ脳に老廃物が溜まってきているということがわかっています。早い人では30代くらいから溜まり始める場合もあります。
■脳の老化には生活習慣病が関わっている
この老廃物がある一定以上溜まってくると、神経細胞が傷ついて死滅し、脳が萎縮していきます。脳の老化に関わる要因としては肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が大きいです。生活習慣病になると血管が徐々に硬くなる動脈硬化を起こします。
その結果、脳に十分な血液を送れなくなったり、脳の血管が破れたりといったことが起こりやすくなります。脳の血管が破れても小規模であれば症状はありませんが、脳のあちこちで起きると脳の老化につながります。
最近では20代でも生活習慣の乱れやスマホなどの使いすぎによって脳の老化現象を自覚する人もいます。
■子どもと高齢者を比較してわかること
脳の老化の症状は、子どもと高齢者を比較してみるとわかりやすいでしょう。子どもは動きが活発で、些細なことでも心から楽しみ、感情が豊かで好奇心が旺盛です。大人がびっくりするほど優れた記憶力を発揮することもあります。
一方、高齢者は子どもと比較して動作がゆっくりになります。これは視覚や聴覚など、五感の感覚が衰えて判断や反応に時間がかかるようになることがひとつの原因ですが、失敗を恐れて慎重になるなど、心理的な側面も影響しています。
感情面では一般的に落ち着いて感情が安定する人が多いですが、反対に理性をコントロールする脳の働きが衰えて感情を抑制できなくなる人もいます。性格の変化も脳の老化のひとつである場合があります。
意欲の面では新しいことに関する興味を持ち続けることが難しくなる傾向が見られ、長年の習慣を変えにくくなります。何かを始めようとする気持ちは少なくなり、しばしば諦めがちになる傾向が見られます。
見聞きしたことは頭に入るものの、記憶にとどめる能力が低下するので物忘れが多くなりますし、体内時計の乱れから不眠や日時の感覚の障害などの症状も見られるようになります。
■脳の老化、症状まとめ
□ 物忘れが気になる
□ 人や物の名前がすぐ出てこない
□ 動作がゆっくりになった
□ 物事を判断するのに時間がかかる
□ 今までのやり方を変えるのが億劫
□ 新しいことに挑戦しなくなった
□ うれしい・楽しいといった感情を持ちにくくなった
□ 自分と違う意見をなかなか受け入れられない
□ 性格が変わったと言われる
□ 新しい発想がわいてこない
□ 諦めることが増えた
□ 眠りにくくなった
□ 今日の日付がすぐ出てこない
脳が健康でないと、見た目にも気を使わなくなります。健康でありたいという意欲も失われます。
どんなことをしている人が認知症になりにくいのか、近年かなり明らかになってきました。例えば食事の仕方。食物線維や発酵食品を毎日摂る地中海食という食事、あるいは伝統的な和食を続けている人は認知症になりにくいことがわかっています。
定期的な運動習慣、十分な睡眠時間やストレスの解消法を持つことなども、認知症予防に役立ちます。このような毎日の生活の中でできるちょっとしたことの積み重ねが脳の老化を予防し、10年後、20年後の大きな差になって現れてきます。
今からできることを始めて、脳をいつまでも若く元気に保ちましょう! 次回は「脳の老化を防ぐ生活」について詳しくお伝えします。
ブレインケアクリニック院長。精神医学とアンチエイジングに関する知識と豊富な臨床経験を背景に、体に優しい心の治療を実践。