既婚女性と不倫を続ける独身男性。遊びのはずが、気がつけば本気で好きなっていた。そのとき、男性が感じるのはプライドと恋心に挟まれる苦痛です。男性に限らず、既婚者を好きになれば独身側のほうが不自由になります。それは愛情に縛られるから。ですが、先はありません。そんな関係から抜け出すヒントは、現実を見ることにあります。
不倫相手の愛情を試しても、幸せな結果にはならない
不倫相手の愛情がわからなくて、つい試すような行動を取ってしまう独身女性もいるかもしれません。ですが、既婚男性からすれば、不倫だからこそ安定した関係の築けない女性はいずれ別れを考えることになり、結局関係の終わりを迎えるきっかけになることも。愛情を試しても、結局不倫の関係が良い方向に向かうことはないというお話です。
■不倫だからいつも不安になる
29歳のある女性は、当時ダイエットのために通っていたトレーニングジムでその男性と出会いました。
男性はジムのインストラクター、彼女のトレーナーとして運動や食事の指導を担当していましたが、親身になってメニューを組んでくれる姿に彼女は惹かれたそうです。
ほかにも担当している会員は大勢いる中、彼女は男性の周りに寄っていく女性に嫉妬を覚えます。もっと仲良くなりたい、と思う彼女でしたが、勇気を出して話しかけてみると、結婚していることがわかり、大きく落胆しました。
ですが、定期的に顔を合わせるので、彼に対する関心をなかなか消すことができず、なんとかして仲良くなりたいという気持ちのまま、彼女は彼にアプローチを続けます。
彼のほうも彼女の話に付き合ってくれて、しばらくしてLINEのIDを交換することに。「ほかの会員には教えてないんですよ」という彼の言葉を鵜呑みにした彼女は、有頂天で連絡を取ります。
個人的な時間を持ったのはそれから3カ月、彼女の新しいシューズを買うのが口実で買い物に出たときでした。
インストラクターと会員がジムの外で会うことは禁止されていましたが、男性のほうが「県外のお店なら目立たない」と提案してくれて、彼女は喜んで彼の車に乗りました。
「結局、最初からカラダが目的だったと思う」
と彼女は話していましたが、その夜、彼女は男性に誘われるままホテルに行ってしまいます。
自分でもどこかでこんな関係になれたらいいなとは思っていたけど、いざそうなってみると「何だか慣れている感じがして」、それが彼女の中で不審感を呼びます。
それからは当たり前のようにホテルに誘う連絡が彼から来るようになりましたが、彼女は不安でした。
LINEのIDを交換したのは私だけって言っていたけど、嘘なんじゃないのか。
ほかの会員とも会っているんじゃないか。
ジムで女性が寄っていくのを見ているからこそ、彼にとっては「ある意味よりどりみどりだよね」、と女性は思います。
ジムに行っても、もちろん自分たちの付き合いは秘密なので、その場で仲良くすることはできません。
男性からもきつく口止めされていたし、彼女自身もバレたら困るので誰にも言えない関係。でも、彼のほうは彼女がいてもほかの会員の女性に笑顔を向けたり、マシンの使い方を教えながら近い距離で話していたりと、気が休まることがありませんでした。
不倫でなければ。
彼女は何度も思ったそうです。
彼がほかの女性と仲良くする姿を見るのはつらいから、ジムをやめることも考えました。でも、ジムから離れたところで自分たちの関係を公にできることはありません。どこにいても、いつまで経っても、隠れて会わないといけない関係。それなら、苦しくても側にいられるほうがまだマシ。
そう自分を納得させようとしましたが、自分のときと同じように熱心に会員のプログラムを組む彼の姿を見ていると、彼にとって自分は特別な存在ではないのでは、という疑問と不安ばかりが募ります。
■「好きなら応えてくれるはず」という焦り
「私のこと好き?」
と訊けば、必ず「好きだよ」と彼は答えてくれるけど、じゃあこの不倫という関係はどう説明するのか。
「嫁とはずっとレスだから」「もう嫁に愛情はないよ」と言っていたけど、それならなぜ離婚しないのか。
私との関係を奥さんに打ち明ける気はないのか。
いつまでこんなコソコソした付き合いを続けないといけないのか。
自分から望んでいたとはいえ、実際に経験する既婚者とのお付き合いは、彼女にとって苦しいものでした。
ジムで会員の女性と親しげに話す彼を見てはイライラし、勤務は終わっているはずなのにLINEの返信がないとイライラし、ホテルでセックスが終われば「明日早いから」とすぐ帰ろうとする彼にイライラ……。
「最近入ったあの人のメニューだもんね」とつい嫌味を口にしてしまい、彼が不機嫌になると慌てて謝る。「お前が一番だよ」と言われても、スマホを決して触らせようとしない彼の態度に引っかかって、また文句を言っては喧嘩になる。
そんな時間を繰り返すうちに、彼女はどんどん追い詰められていきました。
「あのトレーニングジムやめようかなぁ」
何度目かのセリフを彼女から聞いたとき、「でも、やめたらあの人がほかの女にちょっかい出すかもって気になるんでしょ?」と返すと
「うん。でも、私だけ不安になるって不公平じゃない? だからほかのジムに入ろうかと思って」
と言う彼女は、暗い表情をしていました。
彼女の中では、自分もほかのインストラクターと仲良くすることによって、彼に嫉妬させよう、という意図がありました。
でも本当は、やめるのを止めてほしいのが彼女の本心です。
「好きなら一緒にいる時間が減ることを嫌がるはず」
「好きならほかの男と仲良くするなと言ってくれるはず」
こんな焦りを抱えているのが伝わりました。
私は、「そんなことをしても彼は変わらないよ」と言いました。
だって、既婚者である彼が、独身の彼女の行動を制限する理由はないからです。彼女の望み通りの行動は、彼にとって彼女を自分に縛り付けるのと同じ。その「責任」を、彼が取るつもりでないのは何となく感じていました。
彼女のことを本当に大切にするなら、そもそも不倫なんて関係は選びません。
好意を持たれても、既婚だからと断るのが筋。気持ちに流されて関係を持ったとしても、彼女に愛情を持っているなら離婚することも真剣に考えるはずです。
ホテルで会っても毎回慌ただしく帰ろうとする。スマホに触ることを嫌がり、ジムでは親しく接することを禁止する。結局、彼の行動はすべて自分の満足のためであることに、彼女は気がつきません。
彼女は「捨てられるのが怖いから」と、離婚してほしい気持ちなどは伝えたことがないそう。ジムでも平気なフリを続けて、会っているときもセックスを拒んだことはないそうですが、そんな彼女だからこそ、彼は不倫相手として「最適」と思っていたのでは、というのが私の感想です。
結局、ふたりの関係はこれがきっかけで破たんしました。
■既婚者がほしいのは「安定した関係を持てる女性」
彼女が
「今のジムをやめてほかに行く。別のトレーナーさんに見てもらうから」
と言ったとき、彼は
「それならもう俺とも終わりだな」
とあっさり、関係の終了を告げたそうです。
彼女は大きなショックを受け、「ほかのトレーナーと仲良くしても平気なの!?」と詰め寄ったそうですが、彼の答えは
「そうしたいんだろ? 好きにすれば」
でした。
彼にとっては、自分との関係に満足できずに不安定な様子を見せる彼女は、心配の元だったと思います。
こんな「暴走」が続けば、いつ不倫を自分の奥さんやジムにバラされるかわからない。
それこそ、既婚男性がもっとも恐れることです。
ジムをやめるという極端な選択が、自分の愛情を試す目的だとわかるからこそ、逃げるしかないのですね。
彼が求めていたのは、安定した関係を築ける女性。それが不倫の条件。
やっと彼の真意がわかった彼女は、そのまま本当にジムをやめ、男性とも縁を切りました。
「一度も連絡ないし、ほかの会員にも同じような人いるよね、きっと」
と彼女は寂しそうに笑いますが、私は、早めに終わって良かったと思います。
既婚者にのぼせ上がっても、相手が応えてくれなければ彼女はいつか目が覚めます。公にできないことでいろいろな不安を引き起こすような恋愛が、彼女を幸せにしてくれることはないのです。
彼がそんな男だったから、むしろ不倫の汚さを彼女は知ることができたとも感じます。
不倫が良い方向に向かうことは、本当に稀です。
自ら苦しむような関係を選ばない勇気を、彼女に持ってほしいと願っています。